青い空に白い雲、そして暖かい日溜まり。絶好のお昼寝日和だというのにお昼寝しなくてどうするのだろう!と言うと犬飼君は呆れた顔をしていた。青空君も同様。そんなクラスメイトたちの顔を思い出しながら、軽い足取りで屋上庭園へ向かう。いくつかのお昼寝スポット(私が見つけたお昼寝に最適な場所)を持っているが、最近は屋上庭園で昼休みを過ごすことが多い。時々、喧嘩をしてるような音が聞こえてくるけど気にしない。みんな仲良くすればいいのに。


屋上庭園に足を踏み入れると、心地良い風が通り過ぎていく。どの辺りに座ろうか、と考えていると「おい」と不意に後ろから呼び止められた。喧嘩でも売られるのだろうか。今日はテロ組織を壊滅させた夢を見たから喧嘩でも勝てる気がするぞ、などと根拠の無い自信を持ちながら振り向くと、そこには一樹先輩が眉間に皺を寄せながら立っていた。その後ろには見慣れない、先輩らしき人が苦笑している。

「眉間の皺がとれなくなりますよ」
「余計なお世話だ!それより深晴!お前は何をしているんだ!」
「おひねへもひようはと」

お昼寝でもしようかと、と説明しているのに一樹先輩が頬を抓っているので上手く話せない。知り合ってからというものの、名前で呼べと言ってきたり、一人でうろうろするなと注意したり、いろいろと突っかかってくるのは何故なんだろう。そういえば青空君も一人で出歩くかないようにって言ってた。

「一樹、小鳥遊さんが困ってるよ」

後ろに立っていた先輩が一樹先輩から私を助け出してくれた。優しそうな見た目通りの人らしい。しかし、どうして私の名前を知っているのか。ヒリヒリと痛む頬を気にしつつ、お礼を言おうとすると今度は目の前に変なゴーグルが現れた。ひっ、と思わず声が漏れてしまう。

「あれ、眠れる森のお姫さまがいるじゃないの」

何かされる前にと優しそうな先輩の後ろに逃げ込む。一樹先輩が「俺じゃなくて誉かよ!」と言っているが気にしない。本能が一番安全な場所に逃げるように叫んだのだ。先輩の背中から様子を伺うと、赤い髪を三つ編みにして、更にゴーグルをかけた人物がこちらを見てニヤリと笑っていた。これが俗に言う変態か。

「小鳥遊さん、大丈夫だよ…多分」

先輩が微笑むので、恐る恐る前に出る。一樹先輩が二人を紹介してくれた。優しい先輩は金久保誉という名前だそうだ。「誉、でいいよ」と言われたので誉先輩と呼ぶことにした。よろしくお願いします、と握手を交わす。一樹先輩にこんなに素晴らしい友人がいたのか。

「初めまして、眠れる森のお姫さま」

三つ編みの先輩が物語の王子様みたいに跪いてみせる。「桜士郎は変態だから気をつけろよ」と一樹先輩が笑う。

「…よろしくお願いします。おーしろー先輩」
「なんで棒読みなの?」


三人はお昼を食べる予定だったらしく、私も参加することになった。お昼寝はできないけど、みんなでお昼も悪くない。お弁当を持ってきていなかった私は一樹先輩のパンと誉先輩のお弁当を分けて貰う。「どうして昼飯より睡眠が優先なんだ…」と一樹先輩は嘆いていた。相変わらずだ。誉先輩は弓道部の部長だそうで、今度遊びにおいでと言ってくれた。そういえば、月子ちゃんと犬飼君も弓道部だったな。おーしろー先輩は取材させて欲しいとか言ってきたが全力でお断りしておいた。この人には今後も気をつけよう。ところで、眠れる森の…ってなんだろう。



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