頭に小さな痛みを感じながら目を覚ました。念のため、頭痛薬を飲んでから部屋を出る。ちらりと様子を伺ってみたけれど、隣りの部屋の住人は既に登校したようだった。いつものことながら早いな、とまだ見ぬ住人に感心する。彼女はとても出来た人物なのだと、訊かなくとも知っている。周りがいつも彼女のことを囁いているから。怠い身体を引きずりながら教室に入ると早速、クラスの男子生徒に「黒瀬さん、少し顔色が悪いよ」と言われた。手鏡で確認すると、確かに顔色が良くないようだ。どうしてだろう、人間、体調が悪いことを認識すると更に体調が悪くなるもので、目覚めたときよりも頭痛は酷くなってきていた。保健室に行くべきか、それとも様子を見るべきか。少し悩んでから保健室に行くことに決めた。一限から休むことは避けたいけれど仕方がない。近くにいた男子生徒にその旨を伝えると、彼は保健室まで送ろうかと申し出たが、それを丁重に断った。教室を出て廊下を見渡すと、保健室までの道のりが遠く感じる。「大丈夫」根拠も無く自分に言い聞かせてゆっくり歩き出すと、不意に後ろから声を掛けられた。


そこまでは覚えている。


「まあ、貧血だな」

次の記憶は真っ白なベッドと天井から始まっていて、つまるところ私は貧血で倒れて保健室に運ばれたらしいのだった。目が覚めると星月先生が詳しい症状を尋ねてきて、そして偏頭痛と貧血と診断された。星月先生のことはまだよく知らないけれど、腕は確かなのだと思う。
「偏頭痛を持っていたんだったな。薬は飲んだのか」
「一応、飲んだんですけど」
痛みは少し良くなったけど、頭痛はまだ続いている。先生に無理はするなと言われたので、二限の授業も休むことになった。こうなるのなら、ベッドで寝れば良かった。

「選択授業、楽しみにしてたんです」
「そう、か」

星詠み科に在籍していても、選択授業では天文科の専門科目が学べる。課題もしてきたのに。そう呟くと、先生は少し考えてから「体調が良くなったらご褒美をあげるから、今は休みなさい」そう言って頭を撫でた。先生の手は冷たくて気持ちがいい。先生の言うご褒美と、倒れた私を運んでくれた人が気になったけど、今は眠ることした。後で尋ねることにしよう。目を閉じる瞬間、先生は微笑んでいて、ああ、酷く綺麗に笑う人なんだと思った。目が覚めてもきっと微笑んでいるのだろう。そして「大丈夫か」とまた頭を撫でるのだ。そんな予感を抱きながら、意識は微睡んでいく。「おやすみ」この声は誰のもの?


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