ガナッシュと女主
ひとは完全にはわかりあえないというけれど。
アリュメットは腕に力を込めながら考える。
こうやってぎゅっとしたままでいれば、いつかひとつになれないだろうか。ぴたりとくっついて、彼のしんぞうの音を感じているというのに、彼、ガナッシュとアリュメットは違う人間で。アリュメットはガナッシュの全てをわかりたいし、自分の全てをわかってもらいたいのに、それは決して叶わないのだ。
「かなしいねえ」
ガナッシュは一瞬訳がわからないとでもいいたげな顔をしたが、何も言わずにアリュメットの頭を撫でた。
きっとまた彼女の中で何か考えがぐるぐるぷかぷかしているに違いない。
こうやって自分から抱き着いてくるときは、アリュメット自身は決まってどこか別のところで考え事をしているのだ。
何を考えてるかなんてガナッシュにはわからない。自分にできるのは遠くにいる彼女がこちら側にぽろりとよこす言葉を、受け入れてあげるだけだ。
どれだけ近くで抱きしめたって、ガナッシュはアリュメットのいるところへは行けやしない。
それは、とても
「かなしいなあ」
みえない、きこえない
ガナッシュが呟くのを聞いてアリュメットは微笑んだ。
「やっぱりかなしくない」
ガナッシュはそれを聞いて、いつだって自分はおいてけぼりなのだなあと思いながら、アリュメットにキスをした。
このびっくりした顔。早くこちらへ戻っておいで。