◯◯系男子シリーズ | ナノ

離れたくない系男子
黒子テツヤ×黒子なまえ


非常にやりにくい。職場で終わらせることのできなかった仕事をパソコンでしているのだが、真っ正直からテツがわたしに抱きついているこの状態。テツのほうが身長も座高も高いので、顔を少し下に下げているとはいえ、水色の髪の毛が視界をちらつく。

何度もやりにくいから離れて、とは言うのだけれど、嫌です。の一点張り。まぁテツの甘えんぼは今に始まったことではないけれど。テツと付き合い始めてから、まず最初に出てきた本性が甘えんぼの面だった。ところ構わず抱きついてきたがるし、離れようとしてくれない。強引に離れさせるとむくれてしまう。それを治すのも、また骨が折れるのだ。テツは変なところで頑固だから。


「テツ、じゃま」
「嫌です」
「仕事が終わらない」
「…嫌です」
「怒られるのはわたしなんだよ」
「…嫌だ」
「もう…」


あ、敬語がない。敬語を外す時の彼は、本当に嫌な時の証拠である。むぎゅう、とさらに抱きついてきたテツに、わたしは負けた。なんだかんだいっても、わたしはテツに相当甘い。こんなふうにわたしに抱きついてくるテツは、まるで子どものようで頬が緩む。マウスから手を離して、わたしも両手をテツの広い背中に回す。待ってましたと言わんばかりに、テツはわたしをぎゅうっと抱き寄せる。


「…一分一秒たりとも離れたくないんです。ずっとこうしていたい。いっそのこと、ひとつになりたいくらいだ」


どうやら、今日は甘えたモードが炸裂しているようだ。低くて甘ったるい声が、わたしの耳に届く。こうなってしまうと、どこへ行くにも離れようとしてくれないので大変なのだ。けれど、テツだから許せる。こんなに可愛くて格好いい旦那様と一緒に暮らせているわたしは幸せ者だ。


「…いいよ。じゃあテツ、今日はずっとこうしていてあげる」
「本当、ですか?」
「うん。大好きなテツのためだもん」
「ありがとう、ございます…」


こてん。わたしの首筋に顔をうずめたテツ。なんだかテツがすごく可愛く見えて、わたしは一人でニヤニヤしてしまった。仕方ない、明日は上司に怒られること前提で、テツの甘えんぼに付き合ってあげよう。

わたしの顔を見ながら幸せそうに微笑んでくれたテツに、わたしも自然と笑顔になる。口では仕事が終わらないから離れて、と言ってしまっていたものの、本音はわたしもテツに離れて欲しくなかった。いつまでもずっとテツに抱きしめられていたい。あたたかいテツのぬくもりが、わたしに安心感をもたらしてくれる。今ではわたしの一番の安らぎ場は、テツの腕の中だったりもするくらいだ。

視界の端で揺れる、終わらない書類たち。まあいいか、と勝手に自己解釈をし、同じ洗剤の匂いがするテツの胸に寄りかかる。このまま、まどろみに身を任せて寝てしまおう。テツにぎゅうっと抱きついて、わたしはゆっくりと重いまぶたを下ろした。その時に聞こえた言葉は、これ以上ないような甘い甘い言葉。


「世界でいちばん、愛してます。僕にとって貴女は、無くてはならない存在なんですよ」