glory(栄光) | ナノ

「あ、そういえば」
「どうしたの、リコちゃん?」
「まだ一年生には宣誓してもらってないなぁと思ってね。日向くん、今年もしていいわよね!」
「もはや拒否権ねーじゃん!まぁ、カントクに任せるわ。俺らも去年やったし」
「宣誓…?ってなんだよ、です」


ささやかなお昼休み。わたしはリコちゃんに呼ばれ、屋上でバスケ部のみんなとごはんを共にしていた。わたしは伊月先輩とテツヤくんの隣という場所を陣取り、斜め前にリコちゃんという、なんとも良いポジションを獲得。相変わらず大我くんがもさもさとパンを頬張るなか、リコちゃんが意味深なことを言い出した。


「ふふ、よく聞いてくれたわ火神くん!宣誓って言うのはね、バスケ部に入るにあたって、自分の掲げる目標を、全校生徒の目の前で屋上にて発表してもらうことなの。もしできなかったら、全裸で好きな子に告白してもらうっていう罰ゲーム付きで」
「えっ全裸!?」
「もちろん!さーて、今年はどうなるのかなー」


パンの最後の一切れを飲み込んで、リコちゃんはにやりと笑った。全校生徒の目の前…しかも屋上。うそでしょ。そういうのすごく苦手なんだけれども。しかもできなかったら全裸で好きな人に告白…テツヤくんにそんなことできない。やるしかない。

そして明くる日の朝。朝礼待ちの全校生徒が下にいる中、わたし達は屋上にいた。もちろん、宣誓ってやつをするために。バスケ部に入って数ヶ月が経つのに今更な感じがしなくもないけれど、やるしかないのである。


「え、俺から…っすか?」
「火神くんからでいいわよ。なんなら黒子くんからいく?」
「嫌です」
「だって。じゃあ火神くん、第一声をお願いね!」


わかった…です、と大我くんは言い、屋上の手すりに乗った。あんまりに危なっかしくて見ていられなくなり、わたしはぎゅっと目をつむる。


「1−B5番、火神大我!!“キセキの世代”を倒して日本一になる!」


うわぁ…すごいこと言った。ひょいっと手すりから降りてきた大我くんが、次はおまえだとわたしに合図を出す。さすがに手すりに乗るのは恐いから、出来る限り前へ出て、思い切り息を吸い込んだ。


「1−A、春宮凪紗!みんなと一緒に高校最強校を倒して、全国最強の誠凛と呼ばせてみせる!」


ほっと息を吐き、後ろを振り返って笑顔を見せた。リコちゃんと大我くんも口元に笑みを浮かべ、わずかに頷いてくれた。さて、次はテツヤくんだ。彼はなぜか拡声器を持っていて、申し訳なさそうに言った。


「すみません、僕は声を張るのが苦手なので…これ使ってもいいですか?」


リコちゃんは渋々それを了承し、テツヤくんはすうっと息を吸い込む。


「1ーB、黒子テツヤ。火神くんと凪紗ちゃん、そして先輩達と一緒に日本一になりたいです。…いえ、日本一に、します!」


やばい、今のすごくきゅんときた。“日本一にします”と言いきったところとか、凛とした横顔だとか、ぜんぶかっこよすぎる。テツヤくんが拡声器を下ろし、声をかけようとした時、先生方の大群が屋上の扉を開けてきて、すぐさま説教が始まってしまった。

でも、説教されているのに気分が清々しいのは、きっとさっきの宣誓のおかげ。わたしは静かに微笑みをもらした。


20130126