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すこぶるおもろない。全っ然、楽しくない。今日家に来ないかとメール送って来たん、自分やないんか。なのに目の前にいるバカ女は、バラエティー番組を見ながら俺をほったらかしてゲラゲラ笑っとる。こいつ蹴飛ばしてもええかな。


「このバカ女がっ!」
「った!なにすんのよバカ氏!」
「自分が呼んだくせして、ほったらかしにするてなんなん?俺居らんくてもええんちゃうか。帰ってもええ?」


本当に蹴飛ばしてみると、意外にも痛そうな顔で言い返してきた。ほんま、ほんまにちょっとやけど罪悪感が襲ってきたなんちゅうことは言わへんからな。


「ええ〜…帰るの?」
「や、自分がほったらかしにしとったんやろ」
「違うよー、久々にユウジと一緒に居れるなーって思うと、緊張して」
「…は」
「だからバラエティー番組見て、緊張を紛らわしてたんだけど」


な…な、わかりづらっ!そんなん一言も言ってなかったやん!わかるわけないやろ!と彼女をもう一度蹴飛ばすと、まさかの反撃をくらってもうた。地味に痛い。


「痛いわボケ!もうちっとおしとやかになれへんのか!」
「アンタといると蹴飛ばしたくなるのよ!なぜか知らないけど!」
「なんちゅー理由やねんそれ!あー頭痛なってきた」


もう意味わからへん。一緒にいればあーだこーだ喧嘩になるわ、会わないとさみしいだのなんだの言うわ…ツンデレか、ツンデレなのか!はあ、とため息をつく俺。…なんやねん。ちゅーか、記念日ってこと覚えてんの俺だけなんか!今日家に来いってメールくれたんは、偶然だったんかい!あー、と唸りそうになるのを必死に止め、なんとか気づいてもらえるような態度を取ることにした。


「なあ、名前」
「なに?」
「今日、なんの日か覚えとるか」
「?なんか特別な日だったっけ?」


駄目だこれェエ。全く覚えとらん。いつもは俺以上に気にすることを、どうして覚えとらんのや!もどかしさでむずむずする。


「…自分なあ。いつもは俺以上に気にすることくらい覚えとけやボケェ!」
「ちょ、蹴らないでよ!あー、えっと…二年記念日、でしょ?」
「…!正解や。今思い出したんか」
「ド忘れしてた」
「ドっ…。やっぱアホやんかおまええ!」
「暴力的なユウジは好かん!」
「ぐっ…わ、悪かったわ」


緊急事態だけに関西弁もどき使うのやめや自分!名前の関西弁に弱いんや俺は!…まあようやく気づいたようやし、怒る理由もない。気づくのにちょお遠回りしてまったけど、これが俺ららしいっちゃあ俺ららしいんかな。慌ただしい二年記念日やけど、これが俺らスタイル。