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※丸井がゲスい。丸井ゲス太。
「なあ、俺何度も言ったよな?」
ぎり、わたしの手首を痛いほどに掴むブンちゃん。だんだんと恐ろしいほどに力が込められていき、みしみしと骨が悲鳴をあげる。
「…ごめ、なさ」
「許さない」
ぐぐぐ、さらに手首に力が込められる。あまりの痛さに顔を歪めると、頬をひっぱたかれた。
「目つむんじゃねーよ。いつ目閉じていいなんて言ったよ」
「ブンちゃ、いたい、」
「うっせ」
どん、と後ろに向かって押され、支えをなくしたわたしは尻餅をつく。そこにすかさずブンちゃんが覆いかぶさり、わたしの頬を殴った。
「なんで何度言ってもわかんねーんだよ、クソ女!」
「っ、ごめ、なさい…っ」
「仁王とあんな楽しそうに話しやがって!俺と話すときはあんな顔しねえじゃんか!」
「、」
「っくそ、く、そ…!」
ぽろ、わたしの真上にいるブンちゃんの瞳から、涙がこぼれる。ぼろぼろとわたしの頬に雫が落ちる。
…ああ、このひとは。素直に物事を言えないから、暴力という形で伝えようとしているだけ。今回の件は、仁王くんに対する嫉妬。
あんまりにも切なく寂しそうな瞳でわたしを見下ろすあなたが、どうしようもなく愛しい。
「…ブンちゃん、泣かないで」
「あ?泣いてなんかねえ、」
「嘘。ほら、自分の頬を触ってみて」
「っ、おまえの言うことなんか聞けるかよ」
そう言いながらもおとなしく片手を自分の頬にもっていくブンちゃん。涙で濡れている頬を触ると、彼は目を伏せた。
「…ごめ、」
「…、」
「ごめ、ごめ、なさ…ごめん、名前…っ」
―ああ、泣かないで。さらに涙を流し始めたブンちゃんを、ぎゅうっと抱きしめる。そんな彼には見られないよう、口元を吊り上げる。
ああ、わたしはとんだマゾヒストなのかもしれない。