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「ユウジ」



バンダナ、そして以外に整っている顔。
相方の金色小春にべったりだからホモップルなんて呼ばれているけれど、以外と謙也や財前に負けないくらいの人気を誇るユウジ。


そんなこいつは、わたしの幼なじみ。
放課後はいつも一緒に帰るのが、もう習慣のようになっている。


でも今日はわたしが日直だったために、いつものように何も言わず出て行こうとしたユウジを引き留めた。



「なん?」

「ごめん、わたし日直やから、ちょお待っててくれへん?」

「日直?…わかったから早よ終わらせるんやで」

「おん」



にこ、と笑ってわたしの前の席に腰掛け、くるりと後ろを向くユウジ。
何やこれ、彼氏彼女みたいやない?


ユウジが近くにいることで、わたしの心臓は激しい動悸に襲われる。
わたしの気持ちはもう“幼なじみ”としてじゃなくて、“異性”としてユウジを意識するようになった。


わたしはユウジが、好きなんや。



「自分書くの遅ない?やっぱりのろまやな」

「バカ氏、そないな言葉女の子に使っちゃいけへんのやで」

「え、自分女やったん?」

「…いっぺん逝ってみたいん?」

「…すまん」



これがわたしたちの普段の会話。
今更素直になることもできなくて、告白する機会がない。
告白する勇気も、ない。
でも今日は、何故か告白したい、その気持ちが強くて、勢いに任せてわたしは口を開いた。



「ねえユウジ」

「ん?」

「わたし、好きな人できたんよ」



目の前にいるユウジの目が、見開かれる。
あんたのことなのに、そう思ったけれど、まだ口には出せなくて。



「…ほー。で、どんな奴なん?」

「…バカで、アホで、鈍感で、どうしようもない奴」

「…自分、俺の他にそんな仲良い奴いたんか」

「…。…それでも、わたしが体調悪い時とか1番に心配してくれたりするんや。家まで来てくれたり、送ってくれたり…。ここまで言って何で気付かないん、バカ氏!」



わたしの家を知ってるんはあんただけやのに。
男で心配してくれるんもあんただけやのに。
ユウジは間抜けな声を発し、「…え、俺…?」と遠慮がちに聞いてきた。



「そう、あんたや!一氏ユウジ、あんたしかいないやろ!」



場の流れに合わせ、わたしは一気に告白した。
恥ずかしいも何もなくて、ただフラれるのが恐かった。



「…アホ。自分も何もわかってへんやんか」

「え…?」

「俺やって名前のことがずっと好きやったん、気付いてなかったんやな」

「…は」

「一回しか言わんからよう聞いとき」



ユウジもわたしが好き?
その言葉があまりにも嬉しすぎて、わたしの視界が涙で潤む。



「俺な、名前んことが好きやで」



そして我慢できなくなった涙が机の上に落ちて、わたしはぼろぼろと泣き始める。



「あー、泣くな泣くな。まあ、これからは幼なじみっちゅー関係やなくなるけど、よろしくな」

「っ、おん」



そう言ってぎこちなく笑ったユウジに、わたしも涙でぼろぼろになりながらも笑い返した。
20111210