Grope


ルール確認




 通路の角に身を潜めたまま、敵なのか味方なのかの判別がつかない気配を探る。しかし向こうも気配を隠すことには慣れているようで、たやすくシッポを掴ませてくれはしなかった。

 壁に背中を押しつけ、自分が取るべき行動に思いをめぐらせる。迂闊な行動は起こせない現状においては悪いことから先に考えた方がいいだろう。

 たとえば、相手が敵対する立場にあってそれに忠実な意思を持つ人間という可能性。

 そうすると現時点で考えられるパターンは三つだ。

 一つは悪趣味なゲームの“主催者”本人か、それに近い人間である場合。

 だが彼らが姿を見せるにはあまりにも早すぎるタイミングのような気がしてならなかった。PDAが表示する情報によれば、ゲームがはじまってまだ1時間も経っていないのだ。京の前に現れる機会など何度もあったのに実行してない以上、その“主催者”に与えられたPDAの教える情報が信用できるものだと断定できなくとも、今ここで彼らが表に出る理由も必要もない。

 次に、ゲームの参加者である残り12人のうちの誰かという場合。

 すなわち、ルールの共通部分は少なくとも知ったうえで、他人と敵対することを早々に選んだ人間ということになる。

 その結論へ至る過程を京が知る術はなかったが、実在するとなれば厄介な存在には違いない。

 と、京は違和感を覚えた。

 ルールに違反する行動さえしなければ首輪は爆発せず、ただ制限をもたらす足枷にしかすぎない。しかし、この首輪が持つ役割は本当にそれだけなのだろうか。

 ……いや。

 一度沸いた疑念が思考を最悪の場所に導くまでさほど時間はかからなかった。

 裏を返せば、他人の首輪はルール違反を起こすよう仕向けることで爆破させられる。だから攻撃的な性格、あるいは何らかの理由から同志討ちを発生させるであろう人間は、参加者13人のうち何人かは必ずいるのだ。

 “主催者”の真の悪意が初めて見えたようだった。

 殺される前に殺してしまえばいい、と。

 気配は複数感じられた。

 一人、二人……三人。

 ……どうする?

 悟られないように注意深く息を吐き出して自問する。

 最後の“主催者”側でも参加者でもない全くの第三者という可能性はありえないだろう。

 問題なのは、この先にいる人物たちは果たして何を目的にしているのかだ。

 PDAを見れば互いが相手の出方を窺いはじめてから15分が経過しようとしている。

 睨み合いを続けたところで何も解決しない。

 京は意を決し、通路の向こうへと声をかけた。






 

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