Rule


ルール確認




 部屋を出ると、そこもコンクリートで塗り固めた通路がのびているだけだった。見える範囲内に窓らしきものはなく、やはり蛍光灯が無機質に続く通路をぼんやりと照らす。

 京が寝かされていた部屋とは別な部屋があるのか、通路にはいくつかのドアが点在していた。閉ざされて薄暗い光景はまるで、ゲームによくありがちな迷宮を思わせる。1つだけゲームと違う点は、目的を持った上でここに侵入したかどうかだ。

 自らの意思で迷宮に迷い込んだ冒険者ではない京は、今さらながらジーンズの後ろポケットに入れてある携帯の存在を思い出して取り出す。

 もっとも、期待はしていない。ここまで手のこんだことをしておいて、携帯1つでどうにかされてしまうのであれば、あまりにもお粗末で物好きがすぎる行動である。普通なら携帯を壊すなり、取り上げるなりするだろう。

 そして案の定、開かれた携帯の左上には“圏外”という赤い文字が表示されていた。

 予想通りな結果に落胆した様子もなく、静かに閉じた携帯をジーンズのポケットに再びしまいこむ。

 どうやら姿を見せぬ“主催者”は、イタズラでも何でもなく本気らしい。その真意は分からずとも意図的に、この状況を作り上げている。

 主催者の思うまま動かされるのは不快だが、しかし圧倒的に情報がなかった。京はどうするべきか逡巡した後、わずかでも手がかりを求めてPDAを開く。とりあえず「RULE」のタブをクリックすると画面いっぱいを使っての、何行にも渡る文章が表示された。


ルール1
参加者には特別製の首輪が付けられている。それぞれのPDAに書かれた状態で首輪のコネクタにPDAを読み込ませれば外す事ができる。条件を満たさない状況でPDAを読み込ませると首輪が作動し、15秒間警告を発した後に爆発する。一度作動した首輪を止める方法は存在しない。

ルール2
参加者には1〜9のルールが4つずつ教えられる。与えられる情報はルール1と2と、残りの3〜9から2つずつ。およそ5,6人でルールを持ち寄れば全てのルールが判明する。

ルール3
PDAは全部で13台存在する。13台にはそれぞれ異なる解除条件が書き込まれており、ゲーム開始時に参加者に1台ずつ配られている。この時のPDAに書かれているものが、ルール1で言う条件にあたる。他人のカードを奪っても良いが、そのカードに書かれた条件で首輪を外すのは不可能で、読み込ませると首輪が作動し着用者は死ぬ。あくまで初期に配布されたもので実行されなければならない。

ルール5
侵入禁止エリアが存在する。初期では屋外のみ。進入禁止エリアに侵入すると首輪が警告を発し、その警告を無視すると首輪が作動する。また、2日目になると侵入禁止エリアが1階から上のフロアに向かって広がり始め、最終的には館の全域が侵入禁止エリアとなる。


 軽く目を通した京は咄嗟に自分の首元に手をやった。

 あきらかに硬いものが指先にふれる。ハイネックの上、素肌に当たっていないから気がつかなかった。ほどよい緩さで存在する“もの”がおそらく、爆発物が仕込まれた首輪に違いない。

 爆破。

 その剣呑な言葉を嚥下するよう、唾をごくりと飲み込んで深く息を吐く。

 提示されたルールを前に、考えなければならないことは他にもいっぱいあった。






 

- 4 -



 KQ / NOVEL 



Top







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -