B akuman


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◆◇◆



「あの・・ユリタン、怒ってます?」

布団に包まったままの恋人に平丸は、おそるおそる声をかける。

外はすでにオレンジ色の空になり、もうすぐ陽が昇る頃合いだ。
あれから彼は十二分にバレンタインデーを満喫したのだが、少々やりすぎてしまったらしい。おかげで先ほどから蒼樹は布団から出てくれない。
サイドテーブルのチョコレートシロップはほぼ空になり、こぼしたチョコレートで布団が所々汚れている。もちろん平丸の体も残ったシロップでベタついており、爽快とは言い難かった。
もちろん蒼樹も同じだろう。いや平丸以上に不快に思っているかもしれない。

「ユリタン、シャワー浴びませんか?あ、それとも一緒にお風呂入ります?」
「・・・・・」
「朝風呂、気持ちいいですよ」
「・・・・」
「ど、どうですか?・・・い、一緒じゃなくてもいいんですけど・・・あの、ユリタン?」

シーンと無反応が返ってくると、なんとも居た堪れない。いや確かに原因はこちらにあるわけで、ついついとエスカレートしていく自分を止められなかった。
ベッドの彼女と普段の彼女のギャップが非常にツボで。毎度自重しなければと思いながらも出来ない平丸であった。

「すみません、つい調子にのってしまって・・。次は、次こそは本当に気をつけますから」

こう言い訳して謝るのも何度目だろうか。

「本当にすみません・・もう嫌だって言われることはしませんから。本当にしませんから・・あの、だから許してもらえませんか?」

人差し指で背中と思われる部分をつつく。けれどやはり無反応で、平丸はがっくりと落ち込んだ。
しかし、その時微かな衣擦れの音と一緒に「平丸さん」と呼ばれ、見ると布団から目だけ出した蒼樹がこちらを見ていた。

「ユリタン!あの・・本当に、僕」
「一つだけ、先に言わせてもらっていいですか?」
「は、はい!どうぞなんでも言ってくださいっ」

乱れた髪と赤らんだ顔の彼女は、情事の後という風情で大変なまめかしい。しかし今言うと間違いなく怒られるので平丸は口を閉じる。
蒼樹はちらと平丸を見てすぐに目を逸らす。拗ねたように唇を尖らして眉をひそめた。

「ホワイトデーは、いりませんからね」
「えっ」

「ですから、ホワイトデーは・・・しませんから!」

そう言うと再び布団の海へと包まってしまったので、平丸は何も言うことが出来なかった。

一ヵ月後、それを後悔するとは思わずに。





END

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BAKUMAN


(bakuman....)





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