B akuman


1




好意を抱いていた相手と、トントン拍子でラブホテル。誰かにお膳立てされてんじゃないかっていうくらい、非現実な展開。
シャワーを浴びて互いの気持ちを確かめ合ってキスをして。


――さあこれから、である。




◆◇◆





ついついと長くなってしまう口づけをようやく諦めて、福田は唇を離した。

自制しようと思ってもなかなか難しいもので、いざとなるとやりすぎてしまう。柔らかな唇と舌の感触もあるが、想いが通じ合ったばかりで舞い上がってしまって。
そんな自分に気恥ずかしさをおぼえるものの、蒼樹の濡れた唇と瞳を見ればそれもどうでもよくなってしまう。

「・・・っ、は・・」

ずっと塞いでいた口から、苦しげな吐息が漏れる。それもまた、どこか艶を含んで聞こえる自分はどうかしているかもしれない。
なにか甘い言葉の一つでも囁くべきかもしれないが、そんな余裕はなくて。声を出す前に、首筋から鎖骨そして肩口、キスしたい触りたい、正直に口は動く。

福田の視線が当然のように蒼樹の胸元へ向かう。その豊かな乳房は、まだバスタオルに包まれたまま。上乳が窮屈そうに盛り上がり、解放してほしそうに見えた。ひそかに唾をのんで、福田は指を近づける。

「あの、待ってください・・」
「?」
「・・・・電気を・・」

恥ずかしそうに胸元を押さえ、蒼樹は枕元の照明を見る。消してほしいと言うように。

「いや・・今でもそんな明るくないと思うが」
「でも、これでは見えちゃうじゃないですか・・それは、ちょっと」
「見えちゃだめなのか?」
「は、恥ずかしいから・・だめですっ」

そう言って蒼樹は困った顔で福田から顔を逸らす。
明かりは間接照明だけで、室内は全体的に薄暗い。正直もっと明るくしたいくらいだ。ただでさえ手探り状態なのに、これ以上暗くされては困る。どうやって彼女を説得するか頭の中でぐるぐると考えたが、うまい言葉が見つからない。

「ぜ・・全然大丈夫だって」
「大丈夫じゃないですっ・・だから電気を消してください」
「や、だからな、つまり、消すと見えないだろうが」
「いいじゃないですか」
「よくねえよっ・・・それじゃ、誰としてんだか分かんねえだろ」

その言葉に蒼樹の目が『なるほど』というように見開く。「で、でも」とまだなにか言いたげな彼女の隙をついて、福田はバスタオルを解いた。

「きゃっ」
「いいから!隠すなって」

胸をを覆おうとする腕を避けて、咄嗟に零れ出た乳房をつかむ。

(!・・おお)

たっぷりとした揉み応えのあるそれは、見事な弾力を手のひらに感じさせた。『ふに』とか『むにゅ』といった形容があてはまる好ましい感触に、福田の手が思わず動いてしまう。
指と指の間からはみ出る乳房に感動を覚えて、ついつい力がこもってしまった。

「・・・っ!」
「あ、ス、スマン・・ちょっと力入れすぎ、だよな」
「い、いえ・・」

首をふるふると横に振って、蒼樹は恥ずかしそうに目を伏せる。生贄にされる子羊のように身を硬くして、抵抗するのを諦めたのかシーツをそっと握り締めていた。
その姿がなんとなくいじらしくて、見ているだけで胸がうずく。自分もほとんど経験がないのに「優しくしてやらねば」と思った。

「あのさ・・痛かったら、ちゃんと言えよ・・?」

蒼樹はそっと福田を見たが、目が合うとまた恥らうように逸らす。そして小さな声で「はい」と言った。

手の中の乳房をやわやわと揉みながら、誘うような桜色の先端に吸いつく。ほのかな甘みとともに、ゆるやかな硬さを口内に感じる。
舌を撫でるように使い、片方の乳首は親指で転がすと、蒼樹の体がぴくんと反応し息づかいが乱れてきた。

「っ・・はぁ」

眉間のシワが僅かに深まり声をこらえようとする姿は、色々と込み上げるものがある。今さらだがやっぱり自分は彼女が好きなんだな、と実感した。
いつも見せない表情を、もっと見ていたいと思う。こうして触れているだけでも興奮する。もちろんそれ以上の欲望はあるが。

福田は乳房への愛撫をしながら、下半身へ移行するタイミングを窺う。あまり性急すぎては不慣れなのがバレそうで、ひとまず片手をそろそろと臍下へ動かした。

(?パンツ、はいてんのか)

怪訝な顔でちらと蒼樹を見る。脱がなきゃならない物をなんで履いているんだ、と言いたくなるが福田は言葉を飲み込む。口に出せば彼女が怒るような気がして。
いきなりパンツに手を入れていいのか、ためらいつつピンクの布へ指を滑らせる。柔らかな恥毛に触れると、福田の口内にあった乳首が硬さを増す。それを了承の意味と取り、さらに秘裂へと指をのばした。

「や、あっ・・」

抵抗とも嬌声ともとれる声に、気持ちがさらに昂る。
滲むように温い液体が福田の指を濡らして、小さな入口を探った。やわい襞をそろそろとかき分けながらたどり着くと、指先だけ埋める。

「!いたっ」
「え、指先だけだぞ・・?」
「い・・痛いというか、びっくりして・・その、続けて・・大丈夫です」

蒼樹は恥ずかしそうに小声で言って、赤い顔を両手で覆った。
考えたら、いきなり指での愛撫はハードルが高かったかもしれない。触ったらちょっと濡れていたからイケるかもと思ったが、痛くさせてしまっては前戯の意味がない。

(とりあえず、落ち着け・・オレ)

優しくしようと思ってはいるが、どうしても気持ちは逸ってしまう。経験値の低さを自分でも痛いほど実感する。ここはもっと繊細なタッチで行うべきだった。たとえば、舌・・とか。

(よし)

福田は体を起こし、いきごんでパンツを引き下した。「きゃっ」と驚いた声が聞こえたが、気にせず両足の間に顔を埋めようと屈む。

「ふふふ福田さんっ・・!?な、なにをっ・・ダメです!き、きたないからっ」
「いてっ!おい、足閉じるなって!おもいっきり顎、膝蹴りされたぞ」
「だって、だって・・」
「別にきたなくねーよ、シャワー行ったんだろ?」
「ですけど、そ・・そこは、やっぱり・・あの・・は、排泄の場所ですし」
「生殖の場所でもあるだろ」
「・・・そうです、けど」

蒼樹の声が小さくなっていく。その隙に、福田はやや強引に足を開き顔を埋めた。

「!?あっ・・やぁっ・・」

探るように舌が秘裂をたどり、小さな突起を見つける。舌先で突くと彼女の両脚がびくんと震えた。撫でるように舐めて、ちゅうと軽く吸う。
顔の横にある太股から徐々に力が抜けて、かわりにシーツを強く握っているのが見えた。

「っ、ふ・・ぅっ」

甘い吐息が聞こえて、福田の舌戯に熱が入る。自分の拙い愛撫に彼女が反応していると思うと嬉しかった。
いさむ気持ちを抑えながら舌と唇を動かし、溢れる液をすする。ほぐれを確認しようと中指を入口に宛て、ゆっくりと沈めた。

「あぁ・・!」

浅く出し入れしながら、舌は突起への刺激を繰り返す。蒼樹の甘い声に胸が疼き、福田の下半身はそろそろ限界だと硬く訴えている。
もう指を入れてもさっきのような抵抗はない、そろそろいいのではないか。というかもう挿れたい、視覚的にもこれ以上我慢するのは無理だ。

悩ましげに乱れる蒼樹を前に、鼻息が荒くなるのを堪えつつ福田は起き上がる。
熱っぽく潤んだ瞳の彼女が恥らうように目を伏せた時、吸い寄せられるように再び口づけをした。舌と舌を遠慮がちに絡ませ、顔の角度を変えて味わう。頭の芯が痺れてきて、性急さが顔を覗かせる。

(もう、いいよな?)

これが自分の精一杯、ぎりぎりだ。
唇を離し、うっとりした表情の蒼樹が無性に愛しくて、思わずためいきがもれる。先ほど隠しておいた避妊具を枕の下から取り出して、彼女を見た。

「する・・ぞ?」
「な、なんで疑問系なんですか」
「う、うるせえ・・確認だ、確認」

気恥ずかしさから軽く睨んだ福田に、蒼樹は思わず微笑む。いつも見せない彼の表情に愛おしさを覚えながら。





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BAKUMAN


(bakuman....)





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