B akuman


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◆◇◆




結局、あの夜も拒絶できなかったのは、蒼樹にも後ろめたさがあったから。

被害者ではあるものの、この7年間、ある種加害者のような思いもあった。当時七峰はあきらかに子供で、幼い彼にあそこまでの行動をさせてしまった責任を、蒼樹はひそかに感じていた。
どこかで拒絶した罪滅ぼしをしたいと、思っていたのかもしれない。なのにまた関係をもっている事実には、本末転倒としか言えないが。

少年だった頃に抱いていた優しい気持ちの欠片が、まだ蒼樹の中に残っている。成長した七峰に、どこかでその面影を求めていた。



「そういえば、あの人と付き合ってるんでしょ?」

冷蔵庫を勝手に開けながら、七峰が思い出したように聞く。
蒼樹は机に向かい資料を読んでいたが、微かに眉を寄せただけで質問には答えなかった。

「ほら、平丸一也だっけ。ラッコ描いてた人」
「・・・七峰くん、冷蔵庫を勝手に開けないでくれる?ここはあなたの家ではありませんよ」
「はいはい、ごめんなさい。あ、水もらいまーす」

能天気な明るい声に、ため息がもれる。
帰れと言っても帰らないのを分かっているから、なにも言わない。資料のページを捲りながら、必要な項目を書き出していた。

「なにしてんの?さっきから」
「なにって・・次のネームで使えそうな背景を探しているだけよ」
「へえ、さすが。相変わらず真面目なんですね」
「あなたは連載終了したばかりでしょう?こんなところで遊んでいないで、次のことをしっかりやった方がいいのでは?」
「僕?僕はまあ・・いろいろ考えているから、ご心配なく」

含み笑いをしながら近づいてくるのが分かり、自然と身を硬くする。鼓動が速まるのを感じた。
蒼樹の髪をつまみ弄ぶように指にからませて、七峰はこちらの耳元に唇を近づける。身体を屈めてイタズラ少年みたいに息を吹きかける彼に、眉を寄せた。

「・・・いいかげんにして、私は今あなたと遊ぶ時間はないの」
「だって暇だし・・ふうん、男の匂いはしないね。てことは平丸とはしてきてないんだ」
「暇だというなら帰りなさい」
「冷たいなぁ、元教え子にそんなこと言うなんて」

資料をとじて七峰を睨む。彼は愉しそうに目を細め、人差指で蒼樹の唇をつうとなぞった。

勝手に合鍵を持ち、突然ふらりとやってきては気ままに振る舞い、済んだら帰っていく。
真意がわからない彼の行動に、苛立ちながらも受け入れている自分は愚かだと分かっている。突き放そうと思えば出来るのに、それをしないのは単に甘いのだろう。

寄せる唇に、合わせるよう口を開く。触れるそれは、既に大人の男性の唇で。鼻につく香水は、少し不快だった。舌が蒼樹の口腔に侵入して、ゆっくりと絡まる。ブラウスのボタンを外そうとする七峰の手を握り、止めた。

「・・やめなさい」
「またまた、ちょっと乗ってきたくせに」
「そんなこと・・だから、やめてって言ってるでしょう」
「なんで?今更でしょ」
「そういうことではなくて・・」
「そうやって一応ポーズだけでも拒否らないといけないって思ってる?心配しなくても彼氏には言ったりしませんよ」

平丸のことを言われると胸が痛む。正式に付き合っているわけではないが、彼が自分を本当に想ってくれているのを知っているから。
首筋を舐めながら、七峰はボタンを外していく。白いブラジャーに手を入れて先端を指先で擦ると、意地悪く笑いながら「硬くなってる」と囁いた。
蒼樹は目の前の彼を睨み、微かに熱を含んだため息をつく。

「・・・だから、ちょっと話をしましょう」
「いいけど。ここで話す?それともベッドに行く?」

あらわになった乳房を両手で揉みながら、片方の乳首を口に含む。七峰の濡れた舌が、硬くなったそれを転がすのが堪らなくて、口内の唾を飲み込んだ。
椅子に座った蒼樹の足の間に入り、抱きつくような格好はどこか子供のようで。奇妙な懐かしさを覚えてくる。
こうして七峰を受け入れることは間違っているのだろう。本当は突き放すべきだと分かっていた。もう彼は子供ではないのだから、蒼樹が負い目を感じることはなにもない。
頭ではそう分かっている。けれど心は、受け入れるたびに微かな安堵があったのも確かで。彼と身体を重ねるたびに、7年前の記憶が薄らぐような気がした。

「っ・・ふっ、ぁ」
「声、変わってきましたね。先生は・・・なんだかんだ言いながらも、こうやって僕を受け入れてくれる。昔から」
「・・・・・」

七峰はスカートに手を入れて、ショーツの上から敏感な箇所を擦る。じわりと滲むその場所を、中指で軽く押しながら。

「ほら、こんなふうに」

こちらに向けられる視線から顔を逸らし、蒼樹は荒くなる呼吸を堪えるように下唇をそっと噛んだ。
長い指がショーツをめくり、秘裂をじかに触れる。焦らすようにゆっくりと撫でる動きは、さらに官能を昂らせる。膝頭が微かに震えてきた。

「もう濡れてる。ちょっと触っただけで、こんなふうになるんだ。ほら、聞こえる?音するでしょ?」
「んっ・・はぁ、ん」
「そういえば、昔に僕がムリヤリしちゃった時も、すぐ濡れていたよね。子供相手でもあんなになるんだから、いやらしいなぁ・・青木先生は」

クスクスと嘲笑が聞こえ屈辱から七峰を睨んだが、唐突に指を一本挿し入れられて、眼差しは緩む。

「あぁっ・・」
「うわぁ、ぬるぬるだ。こんなんじゃ一人でいる時どうしてんの?すぐ欲求不満になっちゃいそうだね。ねぇ、僕と会う前は誰に慰めてもらってた?」
「なにを言って、はぁ・・ああんっ、やっ」

浅く律動しながら指先で上部を擦られると、全身に電流が走った。なにかを求めるように奥が熱くなっていく。けれどそれを悟られたくなくて、蒼樹はこぶしを口にあてて耐える。

「そういえば、亜城木先生とは寝たの?」
「・・えっ?」
「あれ、違った?タントに出ていたノア先生って、青木先生がモデルでしょう?」
「そ、んな・・わけないでしょ・・あぁっ」
「鈍いなぁ。あれは絶対先生がモデルだって。僕、もともとタント嫌いだったけど、あれが決定打かもしれない」
「?・・」
「いえ、なんでも」

口の端を上げて、挿れていた指を抜く。中指は蜜をからめたように濡れていて、それを見せつけるように舐め、吸う。七峰のややつり上がった瞳が蒼樹を捉える。すうっと細まるのを見て、猫のようだと思った。

「そろそろしたい?」
「・・・・・」
「まだ、その気にならない?」
「なにを・・言って・・」
「素直じゃないなぁ、ちょうだいって言ったらあげるのに」

やや不満そうに口を尖らせ、蒼樹の腕を掴む。ぐいと強い力で引っ張られたので、前のめりに倒れてしまう。咄嗟に机に手を置いた時、背後から七峰が覆いかぶさってきた。





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BAKUMAN


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