B akuman


2


◆◇◆



ストッキングの穴から指を入れて、エイジはショーツごしに秘裂に触れる。じわりと湿りを帯びたその場所が妙に愛おしかった、

外したブラジャーを上げて乳首を甘く噛むと、愛子の体がぴくんと反応する。声と吐息を耐えて、きっと苦しそうにしているのだろう。暗闇なので見えないのが残念だった。
ぴちゃりと音を出して吸いつくと、少しだけ息が荒くなる。口内に感じる乳首がさらに硬さが増していき、彼女が少なからず快楽に呑まれているのが分かった。

華奢な体を抱きしめていると、エイジの胸は締め付けられて痛くなる。すん、と愛子の匂いを嗅いでひそかにため息をもらした。
こんな真似をしておいて今更だが、本当はこれだけで良かった。こうして彼女を抱きしめて自分の気持ちを確認したかった、それだけだった。突然訪れたチャンスに飛びついてしまった自分は、狡いのかもしれない。

離せばまた逃げられると思った。そして次に会った時にはまたいつもの彼女に戻ってしまう。
一年前、まるで断ち切るように自分から遠ざかった愛子を、エイジは少し恨めしく思っていた。だからこちらからも動かなかった。大人げないとは思うが、自分もまた行動するには想いが幼すぎた。

湧きあがる衝動は、暗闇が後押しする。
ショーツを指先でめくり、直接秘裂へと触れた。とろりとした液がエイジの指を濡らすと、思わず唾を飲んだ。
腕の中の愛子は微かに震えて、小さく首を振る。それは拒絶というよりは未知のものに対する怯えのようだった。

「ここ、濡れてますね」
「・・さ、さわらないでっ・・」
「気持ちよくないですか?僕は、こうしてるとすごく気持ちいいです。秋名さんが女の子だってスゴク分かるので」
「どういう意味・・あっ、やっ・・!」

中指を浅く挿し入れゆっくりと律動させると、反応するようにエイジの指を締め付ける。頑なな彼女が自分を求めてくれているようで、嬉しい。
そのまま被さり愛子を床に押し倒し、さらにストッキングの穴を拡げる。指を動かすたびに、くちゅくちゅと卑猥な水音が狭い空間に響いて、自然とエイジの息は荒くなった。

「っ、やっ・・ダメっ、これ以上はやめて下さいっ・・誰か来たらどうするんですかっ!」

最後の力を振り絞るように、愛子はエイジの胸を叩く。その手を掴んで、エイジはなるほどと肯いた。

「誰か来たら、ですか・・それは困りますね」
「そうですっ・・困ります!だからもう・・こ、こんなことっ・・」
「でも大丈夫ですよ、すぐ終わりますから。僕たぶん挿れてすぐイッちゃうと思います。だってもう限界ですし、それに」

言葉を止めて、小さく息をつく。

「今しないと、ずっと出来ないような気がするんです」

暗闇の奥をぼんやりと見つめる。その先にいる愛子がどんな表情をしているか見えない、それを惜しく思いながら一方では良かったとも思う。きっと自分は情けない顔をしているだろうから、それを見られないで済む。

「すみません、ちょっとだけ我慢してください」

ストッキングをまた少し破き、濡れたショーツを横へとずらした。
ズボンを下げて陰茎を取り出すと、先端を秘裂へと宛がう。柔らかな彼女の内へ侵入を始めた時、ふと愛子の抵抗がなくなったことに気付いてエイジは動きを止めた。
咄嗟に「秋名さん」と声をかけると「なんですか」と小声で返される。その声は微かに震えていて。一瞬泣いているのかと思ったが、そうではなかった。
愛子はエイジの胸元をきゅっと握り、これから起こる事に耐えようとしているみたいで。それはとてもいじらしい仕草だった。

「・・しますよ」

いいんですか、と聞こうとしてやめた。
どうせ逃げられるならぎりぎりまで捕まえておきたい。あのころ、確かに自分たちの心は触れ合ったはずだった。ほのかな淡いときめきを、覚えたのはエイジだけではなかったはずだ。
断ち切られたこちらの気持ちは、ずっと行き場を失っている。消化できずに溜まって、心の奥で渦巻いたまま。その答えが欲しかった。

秘裂へゆっくりと押し入って、先端を沈める。まだ硬い蕾のようなそこは、何度か浅い律動を繰り返していくと、じわじわとエイジの侵入を許していった。

「い、痛いっ・・!くっ、んっ!あぁっ・・!」
「すみません、僕も初めてなんで・・あまり上手にはできない・・ですっ・・痛いでしょうけど、我慢して下さい」
「えっ・・あっ!やぁっ・・!」

愛子の手首を握り一気に貫くと、体の奥からビリリと電気のような感覚が走った。繋がったという事実がただ嬉しくて、エイジはなぜか大きく息をつく。そうしてゆっくりと腰を動かしはじめた。

「大丈夫ですか?まだ痛い・・です、よね?」
「いっ、痛いにきまって・・ますっ!・・はっ・・早く抜いて下さいっ!」
「僕はすごく気持ちいいです。ああでも、あんまり動かすと揺れちゃいますね・・どうしようかな」

腰を動かすたびにグラグラとエレベーターが揺れるので、エイジは愛子を抱きしめてさらに密着させる。お互いの吐息が顔にかかると、どちらともなく唇を重ねた。
胸の奥が熱く痺れていくのを感じながら、エイジは愛子をさらに強く抱きしめる。簡単に口には出来ない、強い気持ちが溢れて止まらなくなった。
ふいに愛子の目尻に唇を寄せると、涙で濡れている。エイジはそれに気づくと、静かな声で聞いた。

「・・どうして泣いてるんですか」
「それは・・」
「嫌ですか、僕のこと」

咎めるのではなく純粋な問いだった。
愛子は黙ったまま、ぐすっと鼻を啜る。少し間をおいて、トンとエイジの胸を押すように叩いた。

「嫌です・・あなたみたいな勝手な人。何を考えているか分からないし、あなたみたいな人・・理解できません」
「そうですか。僕は好きなんですケド・・残念です」
「・・そうやって臆面もなく口にするところも嫌です。信じられません」

それはまるで愛子自身に言い聞かせているようだった。言葉はこちらを拒絶しながらも彼女の身体は徐々に受け入れはじめていて、そのさまにエイジは少し安堵をおぼえる。
頑なさは臆病でもあり、臆病は不器用でもある。そんな少女のような彼女が好ましかった。

「好きです、秋名さん」

そう告げて、返事を待たずに腰の動きを再開した。肌と肌の摩擦音と水音に交じり、愛子の吐息が聞こえるとエイジの動きはさらに速まった。
両脚を曲げてさらに奥へと突き入れる。まだ痛いのか辛そうな声を漏らしていたが、こちらも既に余裕はない。エレベーターがぐらぐらと揺れていたが、エイジは一気に絶頂へと駆け抜けた。

「く・・っ、イキます・・っ」
「っ!?・・あっ!ちょっ・・きゃっ!」

中での誘惑を振り切って、急いで引き抜く。しかし手を待てずに愛子の太ももに白濁の液をぶちまけてしまった。

「あ、すみません。秋名さんにかけちゃいました」
「え・・あの、今の感覚って・・」
「はい。僕のセーエキです」
「セー・・え・・えええっ!?」

叫び声がエレベーター内に響き、愛子は慌てて身を起こす。太ももに付着した液体をどう扱っていいのか分からないようで、暗がりの中おろおろした様子が伝わってくる。

「そうだわ、ハンカチで拭けば・・たしかさっきここに・・」

バッグを探そうとする愛子の手を、エイジは咄嗟に掴んだ。
その時突然電気が回復して、室内がパチンという音とともに明るくなる。どうやらエレベーターが動き出したらしい。二人はホッとするよりも、急に点いた明かりの眩しさに顔を一瞬しかめた。
そして、次にお互いの姿を見止めて大きく目を見開く。

「ひっ・・!!な、なんて格好してるんですか新妻さんっ!」
「秋名さんこそ、なんというきわどさ・・ありがとうです。ファンタスティックです」
「い、いいからあちらを向いてなさいっ!それにいつまで握ってるんですか、離して下さいっ!」

エイジが手を離さないので、露わになった乳房を隠せずに困っている。
愛子はコートを前にあててもう一度「離してください」と睨みつけたが、エイジはそんな彼女をじっと見つめたまま口を開いた。

「離しませんよ」
「・・は?なに言って・・嘘でしょ?」
「嘘です」
「なっ・・あなたという人はっ・・全く、もう!」

ようやく離されてブラウスのボタンを留める愛子をよそに、エイジはゆっくりと立ち上がり階数ボタンの前へ向かった。あたりまえのように七階のボタンを押したあと、先に押していた一階のボタンを取り消す。
ウイイイン、とエレベーターの動作音を聞きながら、鼻の頭を軽く掻いた。太ももについた白い液体に彼女の顔が真っ赤に染まっているのを見て、口の端をそっと上げる。

「嘘の、嘘です」
「え?なんですか?」
「いえ、こちらのはなしです」

嘘の嘘は、本当。


きっと次に彼女が怒るのは一分ほど後。一階ではなく七階のエイジの部屋まで戻っているのに気がついてから。




END



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BAKUMAN


(bakuman....)





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