B akuman
3
「っ!・・ひっ、平丸さんっ?」
頭が肘掛にあたりクッションが床に転がり落ちた。押さえつけるように強く抱きしめられて、くんと髪の匂いを嗅がれる。うっとりとした深いため息は耳を擽り、さっき灯された熱が再び覚醒していく。
平丸は性急な動きでカーディガンを捲くり上げ、ブラウスの釦を外す。小さな釦がもどかしいのか、下から3つ外しただけで冷たい右手が滑るように肌に触れた。
「ちょっと待って、せめてシャワーを・・お願いだからっ・・あっ」
「大丈夫です・・ぜんぜんキレイだから」
「えっ、でもっ」
強引に唇を重ねられ舌が割り入れられる。荒い息が唾液とともに蒼樹の口内に侵入して、目眩がした。
細身のブラウスは平丸の手を腹部で止める。少々力任せにブラウスを捲り上げると、背中で引っかかったのか引き攣れる音ととに釦が一つ弾けた。白いブラに包まれた豊かな乳房の存在を手に感じると、平丸は口づけを中断し移動する。
夢見るようにブラの上から頬擦りして、はあとため息をつく。背中に手を回しブラを外そうと試みるが、焦れったいのかホックを一つだけ外し、ワイヤー部分を持ち上げて乳房をさらした。
「あっ・・」
隠したくても、平丸がしがみつくように乳房に顔を埋め先端に吸い付く。痛みが走るほどの強い吸い付きに一瞬眉を寄せた蒼樹だったが、同時にじわと下着が濡れてくるのも感じていた。
強引な愛撫に反応している自分に戸惑う。興奮している平丸に刺激されているのかもしれない。抵抗しようと彼の頭に手をおくが、じんじんと広がる熱に力が吸い取られる。
「やっ、あぁっ」
「声が・・変わってきましたね」
「っ・・はぁん」
スカートを捲くられてストッキングとショーツを一気に引き下す。このまま最後までする気なのだと、蒼樹は複雑な気持ちになるが、目の前の昂った彼は嫌ではなかった。子供のように、ただ一途に自分に触れてくる平丸が不思議と愛おしかった。
覆いかぶさられ、口づけが降りてくる。今度は自分からも舌を受け入れ、拙い動きで絡ませた。恥じらいや躊躇いに目をつぶり、早鐘のような鼓動を耳にしながら蒼樹はワイシャツの釦に指をかける。一つ二つと外した後、驚いた彼の視線を感じながら、全ての釦を外した。
硬く平らかな胸に手をやると、平丸の体がぴくと反応し「あっ・・」と声をもらす。やや掠れたその声に、蒼樹の胸は痺れて。おそるそる下半身へと手を伸ばす。
ベルトに触れ、それより下の硬い存在に指先が触れた時。耐え切れなくなったのか、平丸はシャツを床に脱ぎ捨てズボンのボタンを外そうと前屈みになる。互いの乱れた呼吸が触れ合ったその時、平丸の体が僅かに震えてその動きが止まった。
「っ・・くっ」
何があったのか分からず蒼樹は微かに眉を寄せる。平丸は気まずそうに目を逸らし、うつむいていて。
どうしたのかと聞こうとした瞬間、ある答えが脳裏に閃いた。もしかして、まさか、そう戸惑う蒼樹の耳にひどく沈んだ平丸の声が聞こえた。
「すみません・・・なんというか、その・・我慢できませんでした」
達してしまったと、消えそうな声で呟く。
表情はよく見えないが落ち込んでいるのは分かる。重苦しい空気になんと声をかけていいか困り、声が出なかった。そのまま平丸は体を背け、立ち上がろうと片足を床に下す。それを見て、蒼樹は咄嗟に彼の腕を掴んでいた。
「あ・・」
決まり悪そうな平丸と目が合うと、いても立ってもいられなくなる。どうしたらいいのか、どうにかしないと、でもどうしたらいいのか・・。
蒼樹の逸る気持ちは、衝動という形になって己を動かした。彼のズボンのボタンを外し、ファスナーを開く。トランクスに手を入れようとした時、平丸が抵抗するように蒼樹の手を遮ったが、それに応じず滑り込ませた。
(平丸さんの・・)
まだ硬さを残したそれは、触れるとびくと反応する。今からしようとする行為を、自分がするなんて考えてもいなかった。知識はあったが、ありえない行為だと思っていた。
どろりと生温かい液が指先につく。おそるおそるトランクスに手をかけて下へずらすと、初めて目にする男性器があった。
恥ずかしいとかふしだらだとか迷いはあったが、蒼樹は体を屈め先端に唇を寄せた。
陰茎は濡れていて、先ほど発した精液が付着しているのだと分かる。苦いような、なんともいえない不思議な味に眉を寄せた。
含んだ瞬間、口内でそれが大きく膨らむ。それに少しホッとした蒼樹は、顔をゆっくりと上下する。初めてのことで加減が分からないから、これで元に戻るのか心配だった。
「・・は、くっ・・」
もれ出た平丸の声が嬉しくて、ひそかに胸が高鳴る。けれど息継ぎのため口を離した時、彼はそれ以上の行為を拒絶するように蒼樹の肩を掴んだ。
「もういいです」と告げて、うつむいたまま黙り込む。どうしてか機嫌が悪くなった彼に戸惑った。平丸は不審そうに蒼樹を見る。
「こういうの、初めてじゃないんですか?」
「え?」
「なんか・・・慣れてるっていうか」
「そんなこと・・」
やりすぎてしまったのだろうか。確かにいきなり口でするなんて、未経験だとは思われないだろう。けれど蒼樹も咄嗟のことで、どうしてしたのか自分でも上手く説明できないのだ。
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BAKUMAN
(bakuman....)
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