D.gray-man U






ちょうどリナリーと膝をくつけるように、ラビもしゃがみ込んだ。

「泣かんで、リナリー」

「・・・泣いてなんかないわよ」
「だって今、鼻すする音してたさ」
「うるさい」

二人向かい合うようにしゃがんだまま、暫く黙ったままでいると、ラビがぽつんと「ゴメン」と言う。
それに返事をせずリナリーは膝とおでこをくっつけていると、もう一度、躊躇いがちな声が聞こえてきた。

「・・・・あのさ、ちょっとでいいから言い訳さして?ダメ?」

「・・・・・・」

そんな風に言われると頑なだった心が解れてきて、さっきまでのラビを責める気持ちは鎮まっていく。
感情的になった気恥ずかしさと、少し言い過ぎたような気もしていて、リナリーはゆっくり膝から顔を上げた。

綺麗な赤毛から覗く翡翠の瞳は、申し訳なさげにリナリーを見ているのだが、口元は若干緩んでいる。

「俺・・今日ずっと落ち着かなくって、ソワソワしちゃってたもんだから・・うわの空っていうか」

「どういう意味よ」
「それは、リナリーと二人になることばっか考えてたもんだから」

「なによ、それ」

文句を言いつつ、頬がじわりと熱を持ちはじめる。目の前のラビも同じらしい、照れくさそうに指で頭を掻きリナリーの頭にポンと手を置いた。

「だってさ、めちゃめちゃ楽しみだったんだぜ?おかげで興奮しすぎて・・・寝不足になっちまうし」

「寝不足って・・呆れた、それでお芝居の時にああだったの?」
「いやもう、ホント寝れねぇのなんのって。目ぇ冴えちゃって全然寝れねぇから、軽く運動してたらジジィに怒られるしさ」

ため息つきながら、リナリーの頭を撫でる。髪を撫でるみたいに優しく。

「・・・ばかね、ラビ」

「うん、わかってる」

目が合って、お互いに笑みがこぼれた。
さっきまでの刺々しい気持ちが消えていく、なんだったのかと自分でも思うほど。

こうやってラビと見つめ合うだけで、ただ嬉しいのに。

「・・・・・」

(ああ、そっか)


分かっていなかったのは、リナリー自身だったのだ。
自分はこういうラビが好きなのだ、ちょっと軽くてズルくて・・でも優しくて。

賢いくせに女心はあんまり分かってない、ちょっと鈍いとこが可愛いのに。

「ねぇ、ラビ」

「ん?」
「・・・まだソワソワしてる?」

ラビはリナリーの言わんとしてる事が分かったように、胸に手をあて大袈裟にため息をついて、

「うん、すごくしてる。だから早く仲直りしたくてたまんない」

「んもう!はい、じゃあ仲直り」

すっと握手を求めるように手を差し出す、ラビは嬉しそうに笑うとその手をきゅっと握る。
そうして、少し躊躇うように目線を地面に移すと、照れ臭そうに小声で呟いた。

「いまさらって思うかもしれんけどさ・・・リナリー、今日めちゃくちゃ可愛い」

「な、なによ急に」
「いや、ほら、さっきはマリ達がいたしさ。ちょっと言いづらかったっていうか」

「言うの遅いわ」

嬉しいのに、素直に喜べないリナリーはラビを軽く睨んだ。

ゴメン、と言いながら立ち上がるラビは、リナリーの手を放さない。

「んじゃ、行こうぜ。時間は短いんだから」
「行くってどこへ?」

「そうさね・・こうやって手を繋いでぶらぶら歩けるとこなら、俺はどこだっていいや」

「なによそれ」

リナリーはちょっと不服そうに言ったが、実のところ気持ちはラビと一緒だった。
繋いだ手の暖かさを、このまま感じていられるならどこでもいい。


特別なことをしなくても、これだけで十分しあわせだと分かったから。







End

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