D.gray-man T





「一応・・味見したので、大丈夫だと思います・・」
「これは、ミランダが?」
「は・・はいっ」

コクン、と頷いた。

「では、いただこう」

マリは、チョコレートを取ろうと軽く屈む。

その時。
首に何かが触れて、それがミランダの右手だと感じた瞬間。

ぐい、と首を押されるようにしてマリがさらに屈まされる。
そうして、何か温かいものがマリの唇に重ねられるのを感じた。

(!)

すぐにミランダからの口づけだと悟るが、味わう間もなくそれは離されて。

「・・・・・・」

何か夢を見ているような心持ちのまま、ミランダに顔を向けた。

「え・・ええと、あの」

チョコレートを一つ取り、マリの唇にあてる。

「ど、どうぞ」
「・・・・・」

若干の混乱もあり、そのまま彼女の指ごと、チョコレートを口に入れた。

「お・・美味しいですか?」

口に広がる甘いチョコレートと共に、波のように押し寄せる先程の感触。それが混ざり合い、痺れるような何かを胸に覚えると。
自分でも意識せぬまま、まるで吸い寄せられるように、再び彼女の唇を求めていた。

「!・・・」

カタン、と箱が手から落ちる音がしたが止まらず。
甘い匂いにせき立てられるように、ミランダの唇を味わって。

(もう・・・止まらないな)

頭の中の冷静な部分が、そんな事を思いながら。
耳の奥で、チャオジーの叫び声を聞きながら。



初めて、師匠の余計なお世話に感謝したい気持ちになりながら。







時間は少し進む。



「アレン、何読んでんさ?」

ラビが焼きそばを食べながら近づいて行く。

「・・ああ、ラビですか」

アレンは読んでいた本を、パタと閉じて。読んでいた本の表紙を、ラビに見せた。

「別に、単なる官能小説ですよ」
「はい?」
「たぶんティエドール元帥の忘れ物ですよ、僕が来た時読んでましたから」

肩を竦めて笑う。

「いや、違うだろ。お前一応15才なんだから読んじゃまずいだろ」

ラビが顔を引き攣らせると。

「言っておきますけど、僕はコレで文字を覚えたようなもんですよ」
「そ・・そうなんか」
「まあ、久しぶりに読みましたけど相変わらず古典的ですよね、こういうの」

ぺらぺらと頁をめくった。

ラビは焼きそばを啜りながら

「お前って、ほんと荒んでんな・・つか、古典的ってなにさ」
「いえね、男の妄想なんてパターンが決まってんですよ。これなんか・・」

パラ、と頁を開く。

「バレンタインに自分にリボンかけて『私を食べて』ですよ、裸エプロン並の発想ですよね」
「いや、オレは悪くねぇと思うけど・・で、続きは?」
「えーと続きは、リボンつけた女が男にチョコレートを口移しした後、事になだれ込むと」
「なに!その男のロマン!」
「やだなぁ、童貞まる出しの発想ですよ」

アハハと笑う。

「それはいいとして、後で元帥に返しておかないと」
「あ!そういや」

ラビの箸が止まる。

「なんかチャオジーがえらい重傷らしいさ、ユウにやられたっつー話だけど」
「ええっ、どういう事ですか?」
「さあ・・オレもそこまでは」

アレンはうーん、と考えて。

「神田だから・・チョコ貰えなくて八つ当たりしたとか?」
「いや、さすがにそりゃねぇだろ」

ラビは皿に残った紅生姜を摘みながら、

「アレン・・チョコ貰った?」
「・・・まあ、いくつかは」

勝ち誇るように、にっこり笑った。

「オ、オレだって・・何個か貰ったけど!」

グイッと水を飲み干した。

「・・なあ、その本元帥に返す前にちょい読ましてくんね?」
「・・・そう言うと思いました」

どうぞ、とラビに手渡そうとした時。



「なあに?その本」



リナリーがチョコレート片手に立っていた。










ダークブーツ発動まで、あと1分。










End

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