D.gray-man T






(うう・・吐いちゃった)

トイレから、よろめきつつ出ると。もう、辺りは暗くなり始めていて。人の流れは食堂へと向かうようだった。

(まだ気持ち悪い)

ハンカチで口を押さえる。

「あれ?リナリー、どうしたんですか?」
「・・アレンくん」

アレンもまた食堂へ向かうのだろう。

「リナリー、一緒に食堂いきませんか?」
「あ・・ごめんなさい、今日はもう休むつもりなの」

アレンは、心配そうにリナリーを覗きこむと

「体の調子でも、悪いんですか?」
「大丈夫よ、ちょっと食欲がないだけ。疲れてるのかしら?」

ニコッと笑って見せた。

「あ、そういえば・・ミランダさんが捜してましたよ、リナリーが呼んでたって言ってたけど」
「あ・・・そうね」

(もうケーキ食べちゃった・・でも・・ミランダの事だから)

きっと心配して、ずっと捜してるんだろうな。それはそれで、申し訳ない・・。

「ミランダ、今どこにいるか分かる?」

(なんでもないって伝えて、お茶でも誘おう)

気分が悪いのは、少し休めば良くなるだろうし。アレンは、リナリーの後ろを指さして。

「ミランダさんなら・・あそこに、マリと一緒にいますよ」

振り返ると、マリとミランダは、二人並んで談笑しながら食堂へ向かっているようだ。

(・・・・・・・)

何だか訳の分からないムカムカが、リナリーの胸に広がる。

(・・なによ)

ミランダは、とても嬉しそうにマリを見つめて。マリも、穏やかな微笑でその視線に応えていた。

(なんだかスッゴク楽しそうじゃないっ・・)

『リナリーちゃんと仲良くなれて良かった』

(・・って言ってたくせにっ)

こんな気持ちになる方が間違っている・・・。 分かってはいるけど、なんだかイライラが収まらなくて。

「・・リナリー?」

不思議そうに、リナリーを見るアレンから、顔を反らす。

「もう休むって・・ミランダに伝えてくれる?」
「え?あ、はい・・」
「・・じゃあ、行くわ」

リナリーは、ミランダを背にして走りだした。




(リナリー、どうしたんだろう)

アレンはミランダ達を見る。 二人は、今日も仲睦まじい。

(なんか、いいなぁ)

師匠の爛れた女性遍歴を見てきたせいで、あまり恋愛に夢を持っていなかったが、この二人のほのぼのとした関係にはひそかに憧れていた。
邪魔したくないから、リナリーの伝言を伝えるのは食後にしよう。

(何、食べようかな)

それにしても・・ラビはどこに行ったのか。
いつも食事時には、たいてい顔を出すのに。

(急な任務とか?)

ま、いいか、と捨て置き、ルンルンと食堂へ向かった・・・。


その時。


「!?」

何か、首がチクリと痛み、

(・・なんだ?)

手で確認しようとすると・・・・

「!?」

痺れて動かない。

手、だけではない、これは全身だ。ジンジンと痺れて、声も出せなくて、助けも呼べない。

(くそ・・・意識がっ!・・)

歯ぎしりをするように、奥歯を噛んで。
ぼんやり薄れる意識の中、アレンは聞き覚えのある声を、聞いた気がした。


『三人目、確保しました』










次に、目覚めたのは、見覚えのある部屋。

(あれ・・・?)

アレンがうっすら眼を開けると、眼の前は

『銃口』だった。

「・・!?!?」

慌てて、後ずさりしようとするが、全く身動きが取れない。

「・・起きたかい?」

「コ、コムイさん?」

意識がハッキリし始めて自分を確認すると、
ゴムのような縄でぎっちり絞められている。
眼の前にはマシンガンを構えた、例のロボット。『コムリンなんとか』

「あ・・あの、何なんですか?」

顔を引き攣らせながら聞くと、これまた聞き覚えのある声が、隣から聞こえた。


「・・よぉ・・アレン」


同じように縛られて、銃口を突き付けられている。

(ラ・・ラビ・・・)


ラビの隣には、これまた同じ状態の神田が破裂しそうな程、こめかみの青筋を立たせていた。



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