D.gray-man T
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誰かが泣いてる声がした
エクソシストの団服に身を包んだ彼女は、竹林で泣いていた。
話しを聞くと、ファインダーとはぐれてしまい迷子になったらしい。
任務でアジア支部に行かなければならないというので、自分たちティエドール部隊は彼女を送ることになった。
神田のあいかわらずの態度に、ひどく怯えていたがそれでも懲りずに神田に話し掛ける彼女に好感がもてた。
彼女のイノセンスは後方支援用ということもあり、彼女の体力は一般人と変わらない。
移動の時は、師匠の助言もあり自分の肩に乗ってもらうことが多かったが、彼女はそのたびに恐縮しながら、肩に乗った。しかし乗せていても彼女の緊張と自責の念が伝わってきて、ひそかに苦笑した。
アジア支部も彼女を捜していたようで、通信班から連絡が入りファインダーが迎えに来ると、これもひどく恐縮していた。
ここで別れる自分達にも何度も感謝と謝罪を繰り返し、こちらが見えなくなるまでしばらく見送っていた。
「あんなんで、やっていけんのか」
彼女と別れて少し経った頃、神田が呟いた。
神田が他人を心配するような言葉を言った事に師匠も自分も少し驚いたが、彼女の話題はそれきり出ず自分達は本来の任務に戻った。
これが彼女、ミランダ・ロットーとの出会いだ。
江戸
リナリーが結晶化から放たれ、伯爵もノアの連中もどこかへ消えてしまい、自分たちは、治療と休憩を取る為に橋の下に集まった。
重傷の仲間達のなか、ミランダが無事なのを確認して、ひそかに安堵していた。相変わらず、頼りなげではあったがミランダもわたし達を見つけると、同じように、安堵のため息をついていた。
「時間を、吸い出します」
久しぶりの彼女の声だった。
そういえばミランダのイノセンスは時間を操る力があるんだったな・・と考えている間に体中の痛みや疲労が嘘のように消えていく。
(これは凄い)
こんなイノセンスは初めてだ。
「すまない、ありがとう・・」
「いえ・・これは一時的なものなんです・・私が発動を解けば・・」
彼女が言わんとしてる事を察した。
「ああ、そうか。わかった、」
「ごめんなさい・・」
「?なぜ、あやまるんだ?」
彼女は声を詰まらせる。
「だって・・私は戦えないから・・」
「ミランダ・・」
「それなのに・・こうやって・・また、みんなを、みんなを・・戦わせる為に・・」
私は震える彼女の肩に手を添えて
「ちがう。ミランダのおかげで、自分たちはまだ戦えるんだ。」
「マリさん・・・」
「だから・・ありがとう」
ポン、と肩を叩くと、ミランダの両目から涙が溢れた。
「ミ、ミランダ?・・ど、どうした?」
ミランダは首を振る。グスングスンと鼻を啜り、涙を拭った。
「う・・嬉しくて・・・・」
その言い方があまりにも子供のようで、なんだか頬笑んでしまった。
ミランダを見ていると心配になる。
あまりにも、真っすぐで。
だから、つい、手を差し出したくなるんだ。
そう。ただそれだけだ。
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