D.gray-man


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◆◇◆◇◆



気付かれないように義指をしまうマリを、ミランダは申し訳なくも心の中でホッとしていた。


分かっている、今更くよくよしたって仕方ないことだと。でも気持ちの部分ではまだ割り切れていなくて、彼の指を見るたびに胸がきゅんと切なくなってしまう。
刻盤があればマリは指を切り落とすことはなかったかもしれない。力があっても大事な時に使えない、どうしてこうも運が悪いのだろうと自分の不幸体質を呪った。

けれどそれを顔に出せばマリに気付かれてしまう、一番辛かったのは彼なのだ。当の本人が新しい指に慣れようと頑張っているのに、足を引張りたくない。
義指とはいえ新しい彼の一部だ、愛情を感じようと努力するが心の底のわだかまりは残ってしまう。いや以前よりは慣れてはきたが、触れるのは躊躇ってしまうのだ。
あたりまえのことだが感触があまりにも違っていて。実感してしまうのが怖いのかもしれない、もう戻らないのだと。



「き、今日は・・私から・・させてください」


指が足りない状態で自分を抱く彼に負担をかけたくなくて、実はずっと言いたかった。
けれど言おう言おうと思っていても、いざ事が始まると途端に言えなくなって。恥ずかしいのもあるが、女の方からそんなことを口にするのは、はしたないような気がしたから。
マリになんと思われるだろうと色々考えているうちに、結局いつも一人愛されて終わってしまう。終わってから反省するのだが毎度そのパターンなので、ミランダはいいかげん今日こそはと決めていた。

義指を着ければいいのだろうが、それはミランダの方に抵抗があった。気持ちが昂る行為の最中に、新しい指で触れられたら泣いてしまうかもしれない。そんな姿をマリに見せたくなかった。
もう少し時間が欲しい、この鈍い頭に整理がつくまで。慣れなければと思う反面、そうすると以前の指を忘れてしまいそうで怖かった。いつかは義指に慣れるだろう、でもその時間を少しだけ延ばしたい。


(不思議・・)

いつも自分がしてもらう立場なのに、逆だと色々と発見があって新鮮な気分だ。

熱をもった彼自身は摩るたびに大きくなり、勇気を出して舐めてみたところまた更に大きく硬くなった。
経験がマリ以外にないので分からないが、男性の下半身というのはみなこのような大きさなのだろうか。かなり大きくて口に含むのが苦しい。舌で舐めてみるが・・・これで気持ちいいのかと心配になる。

「あの、大丈夫ですか?・・このまましてても」
「あ、ああ・・うん、大丈夫だ」
「嫌だったら言ってくださいね、その・・私、たぶん上手には出来てないと思うので・・すみません」
「いや、十分・・気持ちいいよ」

やや上ずった声でそう告げたマリの言葉にホッとして、ミランダは再びそれに唇を寄せた。先端を口に含む、それだけで精一杯なほど大きくて、本当にいつもこれが自分のに収まっているのだろうかと信じられない。
なんとなく上下に動かしてみるが滑りが悪くて動かしづらい、唾液を滲ませると滑らかになったのでゆっくりと頭を動かした。

「・・んっ・・」

難しい、頑張って口に含むが大きいので竿の部分までは含めない。先端だけ上下にしても果たして気持ちいいのだろうか・・・不安だ。
動かすたびに唾液がジュルとたれて支える指を濡らす。ずっと口を開けているため顎が痛い、口腔が熱いのは摩擦のせいか。ちらと上目でマリを窺うが暗くてどんな表情をしているのか分からない。
大丈夫なんだろうか、本当にこのまましていても。そんな気持ちで頭を動かしていたところ、口の中のマリはさらに硬く大きくなったのを感じる。
ミランダが苦しさから眉を寄せた時、急にマリはミランダの頭を押さえ、腰を引いた。

「だ、駄目だっ・・ちっ・・ちょっと待ってくれ」
「!?ご、ごめんなさい・・痛かったですか?」

かすれたマリの声に驚きミランダは慌てて口を離す。やっぱり気持ちよくなかったのだと、泣きそうになりながら。
マリは、はーっ、と息を吐き、やや赤らんだ顔を手で押さえながら「違うんだ」と首を横に振った。

「いや痛いとかでは・・その、気持ちよかったものだから・・なんというか、危なかった・・」
「え?」
「と、とにかく気持ちよかったよ・・ありがとう」

微笑んで、そのままそっと抱きしめられる。どうやら喜んでくれたらしいと、ミランダはホッとしつつ嬉しくなってマリの胸に顔を埋めた。

「ミランダ・・」
「あ・・」

首筋を甘く吸われ、ドキンとする。静かにベッドへ押し倒されるのが分かりミランダの胸は高鳴ったが、本来の目的を思い出して咄嗟にマリの胸を押す。

「だ、駄目ですっ!」

突然拒絶されてマリは一瞬ポカンとした顔になったが、体当たりのようにミランダが強く押してくるのでよく分からないまま仰け反り、ベッドに肘がついた。
胸元にミランダが倒れこみ、そのままマリに手をついたまま起き上がる。

「・・・わ、私がしますから」

このまま彼のリードで行為が進んでしまっては意味がない、今日は私がそれをするのだ。ミランダは決意をこめて自分のショーツに手をかける。
するすると足を抜くとマリが動揺した様子でその手を押さえた。

「ち、ちょっと待て、今日はいったいどうしたんだ?何かあったのか?」
「え?いえ、そういうのじゃないんです・・あの、ですから私からマリさんにしてあげたいんです・・」
「それは嬉しいんだが・・ミランダ、もし心の中で解消しない事があるなら、ぜひ教えてくれないか」
「・・・・・」

言えない、だってあまりにも自分勝手な動機だから。それに負担をかけたくないと言えば、次から義指を着けるかもしれない。

「ミランダ?」
「そ・・そんなのないです」

ごまかすようにマリに口付けして、大きな体に覆いかぶさる。唇をずらしながら彼の口に舌を滑らせると、ミランダは己の拙い技術に少し落ち込んでしまう。
こうしていると、普段自分がどれだけマリに任せきりなのか実感する。キス一つにしてもどう動かせばいいのか分からない、マリがいつもしてくれる甘いキスとは程遠い舌使いだ。
あのウットリしてしまうキスはいったいどうしたら出来るのだろうか。ひたすら舌を動かしているだけのキスが、それに及ぶべくもない。ミランダはなんだか申し訳ない気持ちになり、唇を離した。

マリは気まずそうに目を逸らす。それはミランダからのキスに気持ちがさらに昂ってしまった気恥ずかしさからであったが、ミランダは違ったふうに受け取ってしまった。

(ああ・・これじゃかえってマリさんに気を使わせてしまったわ)

ずどんと気持ちが落ちていく、けれどそんな気持ちを奮い立たせるように唇を引き結ぶと、先ほどからずっと起立したままの彼自身に触れた。
「する」というのは最後までだ。いつもはしてもらう側だが、今日は自分から「する」のだ。

「・・・・・・・」

ごく、と唾を飲む。出来るだろうか、なにぶんまともに触れたのも今日が始めてなのだが・・とりあえず宛ててみれば何とかなるかもしれない。
ミランダはそろそろと硬く大きなマリの上に跨ると、秘所へ合わせようと腰を落とす。

「ち、ちょっと失礼しますっ・・」
「?・・ミランダ!?」

まさかそこまでするとは思っていなかったのだろう、マリは驚いて目を見開いたが時は既に遅く。
咄嗟に腰をひねるのが間に合わず、昂り起立した股間はやや勢いに任せた恋人の尻の下に敷かれてしまい、その衝撃にマリは眼球の奥から激しい火花が散ったのが見えた。


「っ・・!!!!!!!」





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