D.gray-man


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「アレンくん、だ、駄目よ。こんな・・こんな所で」
「大丈夫ですよ、鍵ならかけました。誰も来ません、誰も・・・僕らだけ。僕らだけです」

首筋に唇が触れる、あわててアレンの胸を押して首を振った。

「ど、どうしたの?いけないわアレンくんっ・・」
「いけないのはミランダさんの方だ・・そうやって離れていくから、あなただけなのに、僕には・・っ!」
「・・・!?」

抱きしめられたまま背中が壁にあたる、視線と視線がぶつかりミランダの顔は強張った。
そこにはいつもの紳士的な少年の顔はなかった。暗くて冷たい海の底のような瞳が自分を見ている、初めてだ、こんなアレンは。

ぞくっ、と冷えた何かが背中を走る。戦慄といってもいい、握られた手首が痛みも忘れてしまうほど、その瞳は深く、恐ろしかった。
痕がつくほど強く握られた手首を壁に押さえつけられ、柔らかい少女のような唇がミランダのそれと重なる。すぐに捩じ込まれる舌は丹念に口腔を舐めつくし、絡ませる。
とろりとしたアレンの唾液が口内から溢れてきて端から溢れるのを、彼は口付けをやめぬまま「飲んで」と咎めるように囁く。ゴクン、とミランダの喉が動いたのを確認すると嬉しそうに目を細めた。

訪れる恐怖から膝頭が微かに震えて、ロングスカートを捲り上げるアレンの手にびくんと反応した。硬く冷たい彼の左手の感触に身がすくむ。

「どうし・・て?どうして、こんなこと・・?」

自分が知るアレンではない、あの仲間思いの優しい彼ではない。さっきまでの寂しそうな少年でもない、これはまた別の彼だ。
立ったままショーツが引き下ろされる、ミランダは抵抗から太腿を寄せた。けれど強い力で片足を持ち上げられたので、がくんと尻餅をつくように床へ落ちる。

「ねぇミランダさん、前世って知ってます?」
「ぜんせ・・?なんのこと?」
「以前インドにいたときに知ったんですけど、人は死んでも別の何かに生まれ変わるらしいんです。輪廻転生っていって・・」

目の前で白い髪が揺れる。カチャカチャとズボンのベルトを外している音がして、ミランダは気持ちが焦りアレンの話の殆どを理解できなかった。
こんな場所で淫らな行為に及ぼうとすることが信じられなくて。鍵をかけたと言っていたが誰がいつ開けるか分からないというのに、お茶の時間になったら皆休憩のために談話室へ訪れるのに。

「ア、アレンくん、お願いやめて。こんなとこで・・駄目よ、お願い」

体を捻り、なんとか抜け出そうともがくも上から圧し掛かられ手首を押さえられているからビクともしない。震えた声で訴えるもアレンは唇をゆるく上げて。

「ミランダさんは僕のお母さんだった気がするんです」
「・・・え・・?」
「前世では、僕のお母さんだったんですよ」

夢見るような口調で呟くと、自身の下半身をミランダの秘所へと宛がい、唐突に侵入を始めた。

「っ・・!!」
「痛い、ですか?」

まったく潤いのないそこを拡げるようにグッグッと突き立てる。摩擦から逃れるように腰を引こうとしたが、ガッチリと押さえられ背中は壁にあたり逃げ場がなかった。

「い、痛いわ、アレンくん・・痛いっ・・」
「僕もです、僕も痛い、一緒です。でもいいんだ、これでいいんだ・・ほら、こうしていると分かる。あなたが僕を受け入れてくれるのが、わかるんだ」
「っ・・お願いっ・・そんな、動かないでっ・・痛いからっ・・んっ!」

容赦なく打ち付ける腰の動きから逃げたくても逃げられず、ミランダは痛みを耐えるようにアレンのシャツを握りしめる。
襞を巻き込んで摩擦する秘所は痛みが退いて行く気配は無い、けれどじわじわと熱が生まれていくのを感じていた。快感とは程遠いけれど奥からじわじわと起きる熱さは、痛みを和らげてくれる。

「ほら、もう・・受け入れてくれる」

嬉しそうに耳元で囁く声を聞きながら、ミランダは痛みに紛れて違う感覚が芽生えてきたのに気づく。それはさっきよりも滑るように動くアレンの腰の動きが物語っていた。

「ああ、ミランダさん、ミランダさん・・・僕、こうしてるのが本当に落ち着くんだ、ああ、ほんとうに・・ああ」
「っ・・は、んっ・・ア、レンくんっ・・」
「気持ちいい?気持ちいいですか?ミランダさん・・・ミランダさんっ・・ああ、ミランダさんっ」

息を乱しながらうわごとのように自分の名前を呼ぶ、彼の背中に腕をまわす。痛みは既に無い、擦られるたびに微弱な電流のような快楽が起きて甘いため息が漏れる。

「あっ・・ん、はぁあっ・・あんっ」
「一つになると、僕は還っていくような気持ちになるんです・・あなたの中に、だからこんなに落ち着くんだ・・落ち着いて、懐かしくて・・」

熱い塊が優しい口調とは裏腹に激しく律動を繰り返す、水音と共に冷たい自分の淫らな液体が尻をつたっていくのを感じた。
いつのまに、こんなにもいやらしく反応する体になっていたのだろう。15歳の少年の手によって、快楽にこうも翻弄されてしまう。いけないと思う気持ちは確かにあるのに、体は言うことを聞いてくれない。
壁にあたった背中がずるずると落ち、掴まれていた手首は自由になっている。がくがくと揺さぶられ、深い真紅の絨毯に背中を擦り付けられながら甘い声でよがり、さらなる快楽を望んでしまう。

「ああっ・・や、あああんっ・・!」

縋りつくようにミランダは彼の背中にしがみつく。その瞳に確かに隷属の光を見ると、アレンはうっとりと目を細めた。

「あなたの中は温かくて、柔らかくて・・すごく心地がいい」

ゆるやかな焦らすような律動を繰り返し、まるで絶頂を引き伸ばすような動きにミランダは切なげにアレンを見上げる。あともう少し、もう少しで求めているものが手にはいるのに。
午後のあたたかな日差しが白い髪を照らし、灰色がかった薄い色素の瞳をきらめかせる。ガラスのように澄んだ瞳にはミランダが映されていた。けれど光の弱いその瞳はどこか人形のようにも見えて。

「・・・・ミランダさん、僕を産んでください」
「・・・え・・?」
「僕、こんなだから長くは生きられないと思うんですよ・・・だから次はミランダさんに僕を産んでもらいたいんです」

快楽にぼやけた頭ではうまく理解できない、ミランダは何の話か分からなくて微かに怪訝な顔でアレンを見るだけだった。

「でも余所の男の子供になんてなりたくない、だから僕とミランダさんで『僕』をつくるんです・・・ね?素敵でしょう?」

そう言ってアレンは笑う。楽しい未来を夢見るように。
ミランダはどういう意味か聞こうと口を開いたが、激しい律動に揺さぶられて頭の中が白く霞んだ。突き立てられ、自身の奥底の蓋が開き何かが駆け抜けていく感覚に大きく息を吸う。

上り詰めて白く染まっていく、その瞬間に胎内に感じるドクンドクンと注がれた熱に不思議と愛おしさを覚えた。


揺れる白い彼を見ながら、ミランダもまた白く染まる。溺れていく、そう実感しながら。






END

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