D.gray-man


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◆◇◆◇◆




『男性にのみ働く催淫剤です。効果は適量で30分から1時間。
男性側の性欲の差によりますので、元が旺盛な方に使用される際は微量をお勧めいたします。』


注意書きを読みながら、ミランダの顔はサーッと青くなった。しかしすぐ催淫剤という単語に今度は顔が赤くなる。
目の前のマリの様子が本当に辛そうで、申し訳なさから涙が出て思わず駆け寄ろうとした。

「マリさんっ・・!ごめんなさいっ、私のせいですぅぅっ!」
「!?いっ、いかん!ミランダ離れてくれっ・・」
「あっ・・ご、ごめんなさい、でもあの、私がコロンをつけたせいで・・」

マリは四つん這いのまま、体内の熱を冷ますようにひたすら何かの呼吸法、を繰り返している。

「・・・そのコロン、まさか科学班の?」
「はい、でも違うんです。私が使い方を間違えて・・あの、マリさん大丈夫ですか?」
「・・・・・すまない、正直、今は何も・・考えられん」

いつもの低く落ち着いた声は、今は掠れて少し上擦っていた。必死で理性を保とうとしているのが分かる。
ミランダは時計を見る、式まであと1時間だ。手の中の注意書きをもう一度見て、

「あ、あの!この注意書きによると30分くらいで効果が切れるそうです」
「それは・・・本当か?」
「ええと、『効果は適量で30分から1時間』とあるので、私・・ほんのちょっとしかつけなかったので・・・多分」

マリは「そうか」と呟いたがどこか上の空で、ミランダから体を背け距離を取ろうとしている。
それが理性を保つ術だと、頭では分かるのだが、後ろめたい気持ちがあるせいかマリが怒っているのではとミランダは不安になった。

立ち上がり自分に背を向け、壁に額をつける彼が気になって、躊躇いながらも傍へと近づく。

「ミランダ、駄目だ、離れてくれ・・・」
「で、でも」
「頼むから・・・傍へ来ないでくれ」
「・・・・・・」

どんな時でも自分を受け入れてくれた彼から、『傍へ来るな』と言われた事にショックを受ける。仕方ないと分かっているが、当人の口から聞くと思いの外ダメージが大きかった。
ウルウルと瞳が潤んで、このまま棄てられるんじゃないかと悪い方へと思考が流れてしまう。
人生の晴れの日に幸運が逃げていく、なんて自分らしい展開だろうか。それも自分が仕出かした事が原因で・・・。

「マ、マリさんっ・・!」

マリの背中が涙で滲み、我慢出来ずにミランダは縋り付いた。

「!?だ、駄目だ!放れるんだ」
「い、嫌です、そんなこと・・言わないでぇっ」
「だからっ・・っ、た、頼むっ・・・・!」

マリの背中が丸まり、苦しげに額を壁に擦りつける。それでもミランダは放れず、広い背中に顔を埋めて抱き着いたままでいた。

「ほ、本当に・・・駄目なんだ、この、このままでは・・・・っ、くっ・・」

ぐっと声が弱気になる。壁にゴンゴンと頭を叩きつけ、理性が飛ばないようにと涙ぐましい努力をしているが、崖っぷちであった。
下唇を噛み締め、沸き上がる熱情にマリが耐えていると、背中にあった体温が胸元に移動してきたのが分かる。

「!?」

それが潜り込んできたミランダだと覚った時、もう事態は既に遅しだった。
気づいた時にはミランダを抱きしめ、柔らかな唇を貪っていた。

「・・ミランダッ」
「んっ・・ぁ、ん」

こじ開けるように舌を割り込み、小さな彼女の舌に絡ませて唾液を吸う。やや乱暴にドレスをパニエごと捲り、ミランダの太股に触れた。

「マ、マリさん、ちょっと待っ・・あ!」

性急にショーツが引き下ろされて、太く長い指が敏感な花唇に触れられると、ミランダはそれから逃れるように体を捻った。
けれど二本の指が花びらを開き、まだ潤いのないそこに一本沈められてしまうと、びくんと体が震えた。

「だ、駄目で・・マ、マリさ・・んっ!」

再び口づけされ、マリの舌が入ってくる。同じように花唇には彼の指がゆっくりと律動を始めて、微かな痛みと共に甘い疼きが芽生えていく。
肩をしっかりと抱かれ、膝を抱えるように持たれているから足先は殆ど床に付かず、白いパンプスがコトンと床に落ちた。

秘部の熱がじわじわと体中に広がり、ミランダは快楽の波に呑まれそうになる。
しかしその寸前、突然マリはミランダから離れた。

「すっ・・・すまない、わ、わたしは何てことを」
「え?」

いきなり体を放され、壁に背中が軽く当たった。見上げたマリはさらに体を離し、再び距離を取ろうと部屋の角へと逃げていく。
その姿にミランダは、咄嗟に彼の腕を掴んだ。

「ま、待ってマリさんっ」
「だから・・今のわたしは危険なんだ、何をするか分からない・・」
「でもっ・・わ、私のせいですし」
「頼むミランダ、あなたに大変なことを仕出かす前に・・」

辛そうなマリの声が、聞いていて堪らなくて。思わず掴んでいる力を強める。

「わ、私がしますからっ!」

言ってすぐ、顔が熱くなる。
マリはその意味が分からないようで、一瞬怪訝な表情を見せただけですぐに顔を背けた。

「だ、だから待ってくださいっ・・」

ミランダは勇気を出して彼の膝にしがみ付く。突然の行動に戸惑うマリの隙をついて、手は彼のズボンの釦へと伸びていた。

「!?ち、ちょっと待てミランダ?」
「が、頑張りますからっ・・そもそも私のせいですし、こんな苦しそうなマリさん見てられませんっ」
「いやっ、そうじゃなくて、しかし、いや、やはりっ・・」

葛藤しているのだろう、マリはミランダの手を振り切ることも出来ず、かといって積極的にお願いも出来ない、複雑な男心をその顔に滲ませている。
その間、ミランダは普段の不器用さが嘘のようにスルスルと釦を外し、今のうちにと言わんばかりに勢いよくズボンを下ろした。

(!)

目の前に現れた、怒張したマリ自身にミランダは思わず目を見開く。
何度か見たことはあったが、今までは暗い中だったし間近ではなかったから、これは少々衝撃的な光景だ。
そっと先端に触れると、ピクンと反応し、マリの腰が引けたので咄嗟に軽く握ってしまった。

「!・・ミ、ミランダ」
「あっ、痛いですか?」
「い、いや・・そういうわけでは・・」

上擦ったマリの声を聞きながら、脈打つそれを上下に摩る。ちらと上目遣いで彼を見ると、困惑しつつも拒否する雰囲気ではない。
躊躇う気持ちを振り切りミランダは生唾を飲むと、えい、とばかりに口に含んだ。

「・・っ!」

ビクン、マリの体が反応したのを口腔に感じる。
先端しか含んでいないのに、さっきよりずっと大きくなっていて、元々規格外のそれはミランダの口には過ぎる物だった。
なんとか顔を動かし、唾液の助けもあり滑らせる。じわと唾液とは違う味わいに気づき口を放すと、先端に透明な液体が滲んでいた。

(?・・なにかしら)

指先で触れる。糸が引くように伸びて、ミランダは目をパチクリとしながらそれに唇を寄せ、ちゅうと吸った。
味があるような無いような何とも言えない感想を持ち、思わずマリを見上げると。何か堪えるような苦悶の表情を浮かべていたので驚き慌て、

「やっぱり痛かったですか?ごめんなさい・・」
「違う・・痛いんじゃないんだ、なんというか・・・・もう・・・・・・・限界で」
「えっ!ど、どうしたんですか?大丈夫ですか?」

マリが天を仰ぎ、ハーッと大きく息を吐き出したのが聞こえる。
それが最後に残っていた理性との訣別だと分かるのは、その直後だった。

跪いていたミランダを抱き上げると、傍にあった長椅子に下ろし性急にドレスの裾を捲り上げる。

「え、えええっ?マリさん?」

そのままドレスに頭を入れて、股の間へと進んでいく。
急展開に戸惑い、思わずドレスの上からマリの頭を押さえたが、ミランダごときの力では全く歯が立たない。
先程ゆるく下ろされたショーツが膝を曲げられ引き抜かれる。抵抗する間もなく、すぐに花唇に生暖かい感触がしてミランダの体はのけ反った。

「っ!・・ぁあんっ!」

いつもみたいな優しい舌使いではない、荒々しくて痛いくらい強引な感覚に、眉根を寄せながらも体は反応していく。
蜜が溢れるのを待てずに、マリの舌は捩込むように突き入れる。その刺激にミランダの体は急速に熱を帯びてきた。

ジュル、と何かを啜る音に顔が熱くなる。
頭がぼうっとして、ここが何処なのか忘れてしまいそうだ。神様のいる場所、教会なのに。

けれどそれを意識しようとしても、打ち寄せる波のような快楽が脳内を痺れさせ、考えられなくさせる。

「はぁっ・・あ、あんっ、んっ・・!」

足先が熱くなり、膝頭が微かに震える。はぁっ、と息を吐き絶頂の予感にドレス越しにマリの頭を抱き締める。

「!!・・・っああぁんっ・・マリ、さ・・!」

クリトリスを舌先で捏回される、頭の中が真っ白に弾けて。ドクン、ドクン、と自分の血脈が耳の奥から聞こえると、顎先が震えた。

がくん、と体から力が抜けると同時にマリがドレスから顔を出し、ミランダの上半身を捻らせる。
長椅子の肘かけに胸を合わせるよう俯せにし、ドレスを捲り上げ腰を掲げさせた。

「・・え・・?」
「すまん・・ミランダ」

背後から覆いかぶされ、耳元でマリの掠れた声が聞こえたと同じく、硬く熱い塊に膣(なか)を突き立てられる。
グッ、グッ、と拡げるような動きを感じ、その圧迫感にミランダは目眩がした。

「あんっ!・・は、ああんっ!」

達したばかりの胎内は微かな刺激にも敏感で、痛いくらいの激しい動きに意識が遠のきそうだ。
ただでさえ大きい彼の性器は、いつも以上に熱く猛って、凶暴にミランダを攻めてくる。

長椅子がマリの律動のたびにギシギシと音を立て揺れる、肘かけに頬を預けながら背後から聞こえる彼の切なげな呼吸を聞いた。
いつもは自分ばかりが乱されているから、こんなふうな荒い息のマリを感じるのは初めてで。
ミランダは、不思議と嬉しかった。

「あ、んっ・・はぁんっ!マリさんっ・・!」

口づけを求めるように振り返ると、すぐにマリの唇が下りて舌と舌が絡み合う。
腰の動きを止めぬまま、乱れた吐息も絡ませながらする口づけは官能的で、ミランダはうっとりと味わった。

「は・・ぁんっ・・んっ!」
「っ・・ああ・・ミラ、ンダッ・・!」

背後から強く抱きしめられる。さらなる熱さを秘部に感じ、マリが絶頂へと向かっているのを覚る。
肌と肌が擦れ合う音に紛れる卑猥な水音と、ギシギシという椅子が軋む音が速くなり、口腔に感じるマリの呼吸に切なさが増した。

「っ・・ダメだっ、も・・うっ!」

眉間のシワを深め、縋り付くみたいにミランダを抱きしめる腕の力が強まる。
その指先がかすかに震えているのに気づいた瞬間、何かが破裂するようにドクン、ドクン、と胎内を刺激して。
それに呼応し、ミランダの体に白い絶頂が駆け抜け、ぴくぴくと軽い痙攣が全身へと伝わった。


「ああぁっ・・・!!」


力が抜け、意識が濁る。ぱさりと何かが落ちたのを視界のすみで感じたが、気にせず瞼を閉じた。




それが髪飾りの小さなバラの花だと、もうすぐ式が始まるのだと、気づくのはもう少ししてから・・・。

ティモシーが、うっかり鳴らした鐘の音を聞くまで、二人は夢うつつで抱き合っていたのだった。









End




ドレスに頭をつっこむマリさんが見たくて書きました。

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