D.gray-man


3


「い、いやぁぁ・・」

大股に開かれ、さすがに恥ずかしくて両手で顔を覆う。なんていう恰好をさせられるのだ。

「何言ってんだよ、さんざ抜き挿ししといて。別に珍しくもねぇよ」
「そっ、そういう問題ではないんですぅ・・」

タオルが内股を辿る。気のせいかもしれないがティキの視線が秘所に感じ、脚先に力が入ってしまう。
じわじわと中心に近づくタオルは脚の付け根まで行くと、すっと引き返しふくらはぎを拭った。思わず吐息が漏れる。ホッとしつつも少し落胆する自分に驚き、顔が熱くなる。

足首を持ち上げられ指先を一本一本拭われていると、ティキの含み笑いが聞こえた。

「お前、ちょっと期待してない?」
「・・・え?」
「触ってもらいたいんじゃねぇの?ソコ」

顎が指し示すのは開かれた秘所。ドキン、と心臓が跳ねた。

「そんなこと・・ないですっ」
「いいの?素直になるなら触ってやってもいいぜ?さっきからヒクヒクしてんだけど」
「そ、そんなっ・・ち、違いますっ」
「ん?・・あれ何で濡れてきてんの?俺何にもしてないんだけど」

意地悪く笑う声に、ミランダは耳まで赤くなる。図星だった。さっきからずっと奥が疼いていたのだ。
見られているだけで、なぜか体が熱くなって。ティキに視姦されていると思うと、ミランダは知らずに呼吸が乱れていた。

「んっ・・!」

突然、冷たくなったタオルが軽く花唇を撫でたので、思わず体が跳ねる。

「見られて興奮してんだ、この変態が。いや根っからの淫乱なのか、本当は欲しくて欲しくて仕方ねぇんだろ」
「やっ・・やめ、やめてっ・・あっ・・は、ぁんっ」

布腰にティキの長い指を感じる。クリトリスを甘く摩り蜜穴を擽るように撫でられると、まるで待っていたと言わんばかりに蜜が溢れた。

「ほら、ちょっと触ってこれだもの」
「い、いやっ・・ちがっ、あっああんっ」
「おいおいデッケェ声出してっと、また誰かに乗り込まれんじゃねぇの?・・さっきのハゲとか」

耳元で囁かれた言葉にハッとする。いきなり現実に引き戻されるように、ミランダは目を見開いた。
マリの姿が頭を過ぎる。そうだ、戻ってくるのだ彼は。こんなはしたない行為をしている場合ではない。
目の前のティキの胸に手を押し当て、逃れようと力を込めたが、敏感な場所に指を入れられて力が抜けてしまう。

「んっ・・テ、ティキさんっ、や、やめ・・」

慣れた手つきで花唇を開き、熱く滴る蜜を絡めて中指は浅い律動を繰り返す。
実に急所を心得た動きに、ミランダは逃れるつもりが逆に、ティキのシャツにしがみつく形になってしまった。

「あっ・・っ、ひゃあ、やめ・・やめてっ」
「本気で止めて欲しいと思ってねぇだろ、なあ?」
「・・・・っ、ぁあんっ!」

思っている。止めてほしい、本当にもう止めて。これ以上されたらもう抗う事もできなくなる。ティキのシャツを握る指が震え、喉の奥がキュウと締め付けられた。

「どうすんの?こんな濡らしてっけど。我慢できるの、お前」

指はくるりと掻き回すように動き、指腹で上部を微細に動かされる。膝が震えて爪先に力が入り、頭がぼうっと熱くなっていった。
泣きそうな、助けを求めるような瞳でティキを見る。ああ本当に自分はどうしてこうも駄目な人間なのだろう。

「あの『ご立派』な野郎は知らねぇんだろ?お前がこんなに・・すぐに男を欲しがる、どうしようもない馬鹿女だって」
「・・そ、そんな・・」
「違うの?それとももう乗っかってみた?あのデカイ体だもん、アレも相当だったろ?なぁ?」

耳元を擽るようなからかいを含んだ声に、ミランダは抗議するようにティキを睨む。
けれど涙目で弱々しいそれは、男の嗜虐心を誘うには十分であった。

くっ、と喉を鳴らして笑いながらミランダの唇にティキのそれを重ねる。
とろけるように優しい口づけは、頭の芯をすぐに痺れさせて気づいた時はミランダも舌を絡ませていた。

「ん、ふ・・んっ」

撫でられ吸われ、まるで愛を囁かれるような口づけに、ミランダはうっとりと酔い始める。錯覚しそうになる、ティキに愛されていると。
そして、それを自分も望んでいるのではないかと。

(ちがう・・ちがうわ、私は・・私が好きなのは・・・)

尊敬するエクソシストの先輩、皆に信頼されて誰もが認める、あの彼。優しくて穏やかで側にいると安心できて。
マリを想うと幸せな気持ちになる、それは間違いないのに・・・なのにどうしてだろう。


体が、こうもティキを求めてしまうのは。


うっとりと口づけを味わっている途中にはなされて、物足りなさを感じて見上げると。探るような瞳でティキがミランダを見下ろしている。

「・・?」
「どうしようもない、駄目な女だな・・お前は」

首筋を強く吸われ、痛みを感じてミランダは眉を寄せる。所有の証をつけられたのだ。

せっかく消えかかっていたのに、また新たにつけられてしまった。けれどそれに気づくのはティキが居なくなってからだろう。
脚を持ち上げられ、ティキの熱い塊が秘所に宛がわれる感触に、待ち遠しさから体が震えた。

「言えよ、欲しいって」
「!」
「欲しくて欲しくてたまりません、って言ってみろよ」
「そ、そんな・・そんな、ことっ」
「言えねぇの?ふーん」

言えない、それを言ったら本当におしまいだ。最後の理性がミランダの淫らな欲望を押し止める。
唇を引き結び頭を振って拒絶するものの、体は正直にティキに応えてしまう。先端を沈められて体がのけ反った。
浅く出し入れされて鳥肌が立ち、咄嗟に縋るようにティキを見上げると、口元に緩く弧を描きながらミランダを見ていて。

「そろそろ素直になろうぜ、体みたいに」
「っ!はぁぁんっ・・!」

一気に最奥まで貫かれると、衝撃に耐え兼ねティキの背中に手を回していた。
伝わる体温と耳に落ちる吐息が、どうしてか心地好くて。腰を打ち付けられる度に敵という感覚が薄れて何も考えられない。

昔の、あの狭く古いアパートで抱かれているみたいな、そんな懐かしい気持ちになる。


「やっぱり熱あんの?膣(なか)あっちいわ」


そんな何でもない事を言う彼は、ノアでもない昔からのティキ・ミックに思えて。
ミランダは少しだけ嬉しかった。





◆◇◆◇◆





「あれ?マリ何してんさ?」

「!」


突然声を掛けられて、マリは驚く。自分とした事が周囲の気配に気づかないとは。
声の主のラビは、2階から3階へと上がる階段の途中でずっと佇んだままのマリを不審に思ったのだろう。

「あ、いや・・ミランダに食事を、と思って・・な」
「へえ・・で、なんでさっきから動かんの?」
「そ、それは・・その、なんだ・・食堂に果物ナイフを忘れたから、取りに行くか迷っていたんだ」
「果物ナイフくらい、ミランダの部屋にあるんじゃねぇの?」

明らかに不審な目でマリを見る。トレーの上にはミランダの好きな洋梨と、中国粥。お粥はどうやら冷めてしまってるようで湯気は出ていなかった。

「ああ・・そうだな、うん・・」
「マリ?」
「な、なんだ?」
「ミランダの風邪、うつった?えらい顔が赤いさ」
「!?」

ドキッとして、動揺から慌てて咳込む。その原因を自分で知っているだけに気まずい。

「そ、そうか?うん、そうかもしれないな・・ではラビうつすと悪いから失礼するぞ」
「へ?マリ?どしたん・・」

ラビがまだ何か言っていたが、聞こえないフリをして急いで階段を上った。
追いかけて来る様子もなくラビの気配は階段を下りていき、マリはホッとしつつも次の難関にまた足は止まる。


(どういう・・・事なのだろうか)


再び聞こえた、見知らぬ男の声と心音。

そして・・ミランダの声。
甘い嬌声はマリが知る彼女の声ではない、知らない別の女のようで胸がざわめき、そして奇妙な昂りを覚えた。

(あれは、本当にミランダなのだろうか)

途中、何度か彼女の部屋に乗り込もうか迷ったのだが、やめた。
その前に乗り込んで間違ったのもあり、実際聞こえていても信じられなくて。また本当だったとしてもそんな場面を見られたらミランダはショックだろう。

聞くまいとヘッドフォンを外せばよかったのかもしれない。しかし聞いてしまった時は、そんな事を考える隙もなく。
ミランダの啼き声に頭が真っ白になり、口腔に溜まる唾が喉を通っていった。

「・・・・・・」

マリはトレーを持ちながら部屋の前でしばらく止まる。
信じられない、というか予想通りなのかもしれないが、男の存在は既にない。
先程と同じだ。扉が開く音もしなかったし窓も開いていなかった。まるで幽霊のようにスウッと遠退いただけ。

(まただ・・)

額に拳をあて、軽く頭を振る。どうかしている、疲れているのかもしれない。
やはりヘッドフォンの調子が悪いのだ、食事を届けたらすぐに科学班へ行こう。メンテナンスの時に何か手違いがあったのかもしれない。
言い聞かせるように心の中で呟くと、マリは小さく深呼吸をして扉をノックした。

「ミランダ、私だ。遅くなってすまない」

部屋の中はしんと静まり、物音一つしない。ゆっくりと鼓動するミランダの心臓の音だけが耳に入る。
規則的な呼吸が聞こえると、どうやら眠っているらしいとマリはホッとして表情が緩んだ。

「失礼するぞ」

静かに呟いて部屋に入ると、ミランダは布団に入って静かに眠っている。
食事のトレーを置く代わりに枕元の洗面器とタオルを持ち、簡易キッチンの排水溝にお湯を捨てるが、ぐっすり眠る彼女は身じろぎもしなかった。

(・・・・熱は、ひいたようだな)

そっと近づいて、額に手をあてる。また汗をかいたようで額髪がこごっている。
まだ体が本調子ではないのだ。このまま眠っていた方がいいと、マリはミランダの額から手を離した。


「・・んっ、ふ・・ん」

(!)

ドキリとする。ただ寝返りをうっただけなのに。ミランダのくぐもった声が、先程聞いた嬌声を思い出された。
マリは思わず後ずさり、自戒するように頭を振る。ミランダへ不埒な想いを抱いてしまいそうで恐かった。

(どうかしている、わたしは・・ミランダを仲間として・・)

耳の奥にこびりついて離れない、甘く切ない声が体の芯を熱くさせる。
マリは未知の恐怖に怯え狼狽え、後ずさったまま、逃げ出す事も出来ず立ち尽くしていたのだった。







end



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