D.gray-man
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◆◇◆◇◆
室内に明かりが点され、カーテンが閉められる。外はずいぶん暗くなり、もう7時を回ったろうか。
「はい、お土産だよ」
体中についたワインの匂いをシャワーで流し、濡れ髪を纏めていると首にネックレスをされたのでミランダは驚いた。
「ま、まあ・・元帥」
「イタリアと言えばカメオだろ?作ってみたんだけど、どうかな」
カメオ、とても高価な物だと聞いた事がある。
ミランダは恐る恐る手に取り見ると、素晴らしく見事な彫りのカメオのネックレスだった。
(あら?)
男性と女性が向かい合うように彫られて、それはどこか既視感がありミランダは首を傾げる。よく見ると男性の方に眼鏡があるのに気づき、あっ、と声を出しそうになった。
(これ、もしかして元帥・・と私?)
ネックレスの中の見つめ合う二人に頬が染まり、とても素敵な贈り物にうっとりとため息が漏れる。
「ありがとうございます・・とても、嬉しいです」
「喜んでくれて良かった。僕だと思って、いつも身につけているんだよ?」
「はい、もちろん・・もちろんですっ」
キュッとカメオを握り頷くと、ティエドールは嬉しそうに目を細めてミランダの額にキスをする。ふと、何かを思い出したように「そうだ」とニッコリ笑うと、
「このネックレスには特殊な装置を内蔵して貰ってるから」
「え?」
「コムイが昔開発していたのをつけて貰ったのさ。大した装置じゃないよ異性が近づくと電気が走るだけ」
「でっ、電気?」
「もちろん僕以外のね、僕は大丈夫。ほら」
ギュッと抱きしめられるが、確かに何にも起きていない。
「で、でも電気って」
「ねぇミランダ、君はうっかりやさんだし、昨夜みたいな間違いがまた起きないとは限らないだろう?」
「それは・・」
確かに無いとは限らない。
「大丈夫だよ。電気といってもチクッとする程度の軽いものだし、お守りだよ」
そう言われると、ミランダは何となく納得して頷く。確かに昨夜のように身も心も縮む思いはもうしたくない。何よりティエドール自ら作ってくれたという、このカメオのネックレスは本当に素敵だし、嬉しかった。
「ね?」
「そ・・そうですね、ありがとうございます」
男性に近づく事さえ気をつければ、何てこともないではないか。
ミランダはそう思い、ネックレスを触りながらもう一度深く頷いた。
「さて、じゃあ久しぶりに一緒に夕食を摂ろうか。お腹空いただろう?」
「あ・・はい」
言われると途端にグゥと鳴り、ミランダは恥ずかしくて顔が赤くなる。手を引かれ扉を開ける時、ティエドールは何かを思い出したのか足を止めた。
「そういえば・・」
「どうしました?」
「火山灰ってなんだろう」
「えっ?」
「今日クラウドから『火山灰が降っても知らないぞ』って言われたんだけど・・意味分かる?」
不思議そうに首を傾げるティエドールを見ながら、ミランダは昨夜のクラウドとの会話を思い出した。
火山灰・・・お仕置き。
(どう考えても、降ったのは・・私の方よね)
「すみません・・わ、わかりません」
ミランダは首を振り曖昧に笑うと、開けられた扉を逃げるように通り抜けたのだった。
End
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