D.gray-man


1


「きゃっ!」

ミランダはニョロリと現れた蛇を見て、飛び上がった。

咄嗟に近くにいたラビが蛇を掴み、石に叩き付け退治したが、ミランダはガクガクと震え、へたりと座り込んだ。

「だ、大丈夫さ?」




◇◆◇◆◇



二人は今、フランス国境山麓を抜け、途中二手に分かれた、ブックマンとチャオジーがいるであろう、麓町へと向かっていた。

「し、死んだの・・?」

恐る恐る動かなくなった蛇を覗き込み、ミランダは生唾を飲む。ラビは蛇を遠くへと投げ、「いんや、のびてるだけさ」と笑った。

「さ、ミランダ急ごうぜ夜になっちまう」

さすがに夜は物騒だからな、と歩いていると、後ろからついて来るはずのミランダが来ない。
振り返り訝しげに見ると、ミランダは腰を抜かしているのか、真っ青な顔で地面にへたりこんだままだった。

「・・どした?まだビックリしてんさ?」
「ラ、ラ、ラビくん・・」

震えながら、ラビを見上げると。

「わ、私・・かっ噛まれたみたいっ・・」
「へ?」

ミランダは太股の内側に指をやり、血のついた指先を見せる。

「どっ、どうしっ・・毒蛇かしら、私っ・・し、し、死んじゃ・・」
「お、落ち着くさミランダ!」

パニックになるミランダを宥めつつ、ラビはさっきの蛇を思い出すが、毒蛇と言われる類いのものではなかった筈だ。

(たしか、軽い痺れくらいで・・)

「ホントに噛まれたんか確認するから、足開いて見せて」

噛まれたなら、化膿止めの薬を塗っておかなければならない。ラビの真剣な眼差しに、ミランダも頷き青い顔で足を開いた。
見ると、太股の内側に小さく穴が空いている。
確かに蛇が噛んだと思われるが、あの蛇自体小さかったからそれ程の跡ではない。

「あ・・う、うん・・確かに噛まれているな」

言いながら、ラビは顔が若干赤らむ。
それはこの目の前に広げられた魅惑的な光景に、かなりドキドキしていたからだ。

あの慎ましく控えめなミランダが、自分の目の前で大胆に足を広げており、
涙目で自分を見上げる姿は、嗜虐心をそそるものがある。

(まてよ・・)

ふと、沸き上がるよからぬ思いつきに生唾を飲む。
誰も来ない山の中、蛇に噛まれたというこの状況、そして何より二人きりで、ミランダが自分を助けを求めているという事。

(こっ、これは・・)

いや、だめだ・・そんな事をすれば本部に帰った後にどんな目に遭わされるか。
そうだ、ミランダはマリの恋人なのだ。そんな不埒な事を考えるなんて・・バカバカ、俺のバカッ。

(・・でも本当は)

俺だってミランダをいいなと思ってた。どっちかと言えば先に目をつけたのは俺だ。
考えれば、横から手を出してミランダを掻っ攫ったのはマリじゃねぇか?だったら俺だって、ちょっといい思いしたいと・・・・い、いやダメだダメだ!

「・・・・・」
「・・ラ、ラビくん?」
「あ、いや。なんでもないさ」

心の中の天使と悪魔の葛藤はまだ続いているものの、とりあえず噛まれた治療が先決だ。ラビはミランダから目を逸らし、やや赤らんだ顔で咳ばらいをすると、

「とりあえず・・傷口見ないと。ミ、ミランダ・・・下、脱ぐさ」
「えっ?」
「ほっ、ほら早くしないとっ・・毒がまわると大変さっ」
「ど、毒!?」

青ざめ、急いでズボンのベルトに手をかけるミランダに、ラビは罪悪感を感じる。
たいしたことないのを分かっているのに、つい欲望にまけて脅すような真似をしてしまった。
化膿止めだけを塗って、安心させてあげようと心に決めたが、

(!!)

次の瞬間、ミランダの白いショーツが目に飛び込むと、ラビの罪悪感は脆く崩れてマグマのような欲望が沸き上がる。
美しく括れた腰に、丸い柔らかそうな尻が黒いズボンから覗く。
余程毒蛇が恐ろしいのか、躊躇いつつも脱ぎ捨てたミランダは、羞恥から肌を染めた。

明るい日の光の中、下半身ショーツだけの彼女はとても扇情的で、非現実的ないかがわしさを感じる。

膝頭を恥ずかしそうに寄せて、赤い顔でうつむくミランダに、十代の溢れる性欲が収まる筈がない。ラビはさっきまでの迷いや罪悪感は既ににどこかへ行き、その柔らかそうな肌に触れる事だけが頭を支配していた。

「ミランダ、それじゃあ傷口が見えないさ」
「あ、ご、ごめんなさい・・」

どうすれば?と上目遣いで見られ、ラビは生唾を飲む。

「・・四つん這いになって?」
「えっ、よ、四つん・・?」
「ほら、ミランダ早くするさ」
「わ・・分かったわっ」

ラビの真剣さに圧されるように、ミランダはラビの方に尻を向け四つん這いになった。
手を地面につき、心配そうな瞳で振り返りラビを見ると、

「ど、どうかしら?」
「・・う、うん」

ひそかに想いを寄せていた相手の、あられもない姿にラビは眩暈がしそうになる。
そっとしゃがみ込み、先ずは傷口を確認すると、

「腫れてる・・」
「だ、大丈夫かしら・・」
「とにかく、毒を・・す、吸い出すさ」

上擦った声でそう言い、ミランダが僅かに頷いたのを確認すると、ラビは指先で傷口を摩る。小さな蛇の歯型に、赤く血が滲み皮膚が腫れ始めていた。

(やわ・・)

滑らかな肌はずっと歩いていたせいか、やや汗ばんでいる。

「・・・・・」

傷口に唇を寄せて、甘く吸い上げると鼻先にミランダの秘部を隠すショーツがあたる。
同時に汗と混じった、もどかしい程の甘いような切ない匂いが鼻孔をくすぐると、ラビの下半身は窮屈さに悲鳴を上げた。

ミランダの両足をさらに広げ、腰を高く掲げた状態にさせると、より深くラビの顔を埋める。
チュウと傷口を吸うと、口腔に微かな血の味がしてペろりと唇を舐めた。

(・・ちょっとなら、いいよな?)

目の前の無防備な光景に、我慢できるほどラビは大人ではない。
指先で、舌で。できれば全身で味わってみたい・・そう思うのは当然だろう。

ラビはショーツに手をかけるとそろりと下ろしたが、ミランダが驚いて声を上げた。

「ラ、ラビくんっ?あの、そこはっ・・?」

「いや、ほら、こっちも・・噛まれてるかもしれんし・・一応」
「でも・・そ、そこは痛くないわよ」
「いやいや、自分じゃ分かってなくても噛まれてたりするんさ、現にさっき血が出てから気づいたろ?」

そう真面目な声音で言われると、ミランダも思い当たる所があったのか黙りこむ。
その様子に、ラビは今のうちにとショーツをスルリと下ろし、おそらく恋人以外には見せた事のないであろう、秘密の花園をこの目で確かめた。

「あっ・・・」

ミランダの頼りなげな声が漏れ聞こえたが、ラビは何を問う事なくその閉じられた花園に舌をはわす。

「ラビく、ん?え?あの・・ちょっと・・」
「いや・・ほら、早く毒を吸わんと」
「え、あの・・じゃあやっぱり、蛇が?」
「・・・・・」

その質問には答えず、ラビは両親指で花唇を開くと舌先で突起を探る。やがてぷつとした小さな感触の物を確かめると、突くように舌を動かした。

「!?・・っ、えっ?」

びくん、と反応して驚いたような声を上げる。
ラビはがっちりと動かないように、ミランダの太股を抱えてさらに舌を動かしていく。

「ラ、ラ・・ラビっ、くんっ・・?」

戸惑うような、けれどどこか艶めいた声に、ラビは背中がぞくりと興奮していて。
もっとその声が聞きたくて、さらに舌を丹念に動かしていった。

「っ・・ラビくんっ・・あの、こ、これって・・っ」
「これは、傷口を探しているんさ」
「ほ、本当・・に?」

ミランダはここまでされても気づいていないのか、それとも気づかないフリをしているのか、もしかしたら気づきたくないのかもしれない・・。
ラビに、仲間の一人と信じる青年に、こんなふうに弄ばれる事を。

(やっぱ俺は、眼中にねぇんかな・・)

たった七歳しか違わないのに、弟みたいにしか思ってもらえないのか。
分かっていたが、改めて実感するとやはり寂しかった。

(きっと・・これがマリなら)

ミランダはここまで無防備ではない気がする。
やはり自分だから、男として見ていないラビだからこうされているのか?

(・・・・・)

それを思うと、ラビの心は少しだけ意地悪な気持ちになっていく。

舌先で突起を優しく転がしながら、中指をゆっくり花唇へと沈めていくと、ミランダの体が弓なりに跳ねた。

「っ・・あっ、んっ!?」
「あ、これは・・一応コッチも無事か確認の為に、触診というか」
「っ、くっ、はぁんっ・・」
「・・ミランダ随分と・・色っぽい声だしてっけど」

言いながらラビの息も荒くなる。中指の出し入れでトロリとした蜜が絡み付いた。
クチュ、と音が立ち、溢れ出す蜜の芳香がまるで媚薬のように、ラビを惑わせて。花唇に口を這わせると、ねっとりとした舌使いで蜜を啜っていた。

「あっ、あぁぁんっ・・」

それは、とても甘い鳴き声だった。

(やべ・・)

もう限界と、下半身が痛いくらいに張り詰める。すぐにでも解放して、目の前のミランダと一つになりたい。

(・・・・うう)

けれど、最後の理性がそれをどうしても阻む。
脳裏にちらつくマリの顔と、最後の一線を越えた後に一番傷つくのはミランダだろう事。
このままミランダと一つになっても、もう彼女が自分を好きになる事はない。分かっているから、ラビはその山を越えられないのだ。

(ミランダ・・)

けれど薄桃色に肌を染めながら、物欲しそうに蜜を垂らす秘所はかなり魅惑的で。
こんな状況で何もせず、腫れ上がった股間を鎮める事は、若いラビには土台無理な話である。

(そうだ・・)

むくむくと、調子のいい考えが沸き上がった。
挿入は無理ならばせめてミランダの口・・は、無理でも手で最後の発射を導いてくれないだろうか。
ここまでの行為で、さすがにミランダだってラビが何をやろうとしていたか悟っている筈だ。
分かっていて拒絶していないなら、ミランダだって嫌がってはいないのでは?

「・・・・」
「ラビ・・くん?」

息を乱したまま、ラビを見るミランダはそれは色っぽくて。
本当に本当に、このまま彼女の中にラビ自身を沈める事ができたなら・・。

でもやっぱりそれは出来ないから、また狡い言い方で彼女に『お願い』するのだ。

「ミランダ・・あのさ、実は・・俺もさっきから痛いとこが」

そう言って、カチャとベルトを外しズボンをずり下ろす。
今までの窮屈さに怒っているように、ラビ自身が固く張り詰めた状態で姿を現した。

「ミランダ・・」

腕を引き、ミランダを自らの正面へと向かせると、その手を自らの隠茎へと持って行く。ドキドキと鼓動が早まり、何となく恥ずかしくてミランダの顔は見れない。

きっと、赤い顔で困惑しているだろう・・もしかしたら涙目になっているかも。そうなったら、やっぱり可哀相な気がするから、そこはやっぱり我慢しよう。

無理強いは・・良くないよな。

そんな事を思いつつ、ラビはそっとミランダを窺い見る。

(・・・・・・へ?)

彼女は、羞恥と困惑で頬を染めながらも、いくばくかの好奇心をその瞳に宿している・・筈である。

そう、ラビの想像の中では。


・・・目の前のミランダは、どうも違うようである。


「あ、あの・・ミランダ?えと、どしたんさ?」
「え?ほら、蛇の歯型どこかしらって」

ミランダは、それはもう真剣な眼差しでラビのそそり立つ隠茎を凝視していた。さっきまでのなまめいた雰囲気はどこへやら、眉間にギュッと皺を寄せながら唇は尖らせている。
どうやら本気でラビの言っている事を信じていたらしい。

「あ・・いや、えと」
「ラビくんどの辺が痛い?ここかしら、それともここ?」

指で摘むように持たれるが、それもまるで腕や手を掴むように色気がない。

「ご、ごめんミランダ・・あ、うん大丈夫かも、ほら腫れも引いてきたし」

さっきまでの不埒な思いは、ラビの現在の股間のようにゆっくりと沈んでいく。

気まずい、なんだかとても気まずい。
一人ちょっとその気になってしまった自分が恥ずかしく、いたたまれない。

元気がなくなっていく自身を隠すように、ラビは前屈みになると、ミランダがなぜか不思議そうにラビの隠茎を見つめていた。

「あの、ラビくん」
「な、なに・・?」
「・・ラビくん、やっぱり成長期なのねぇ」
「は?」

何を言うのかと、怪訝な顔でミランダを見る。
急いでズボンに自身をしまったので、ファスナーに挟みそうになった。

ミランダは、まるで昔からの親戚のような、微笑ましいという表情で。

「だって、そこも・・これからなんでしょう?」
「・・・・そこ?」

何を言っているのか分からず、ぽかんとした顔でミランダを見る。彼女は邪気のない顔でフフ、と笑うと、

「あの、なんだかとっても可愛いから・・あ、可愛いなんて男の子には言っちゃだめよね」
「・・・・・・」
「でも、マリさんのがちょっと怖いくらいだから・・・ラビくん?どうかした?」
「・・・・・いや」

何の話か、聞かなくても分かる。
ラビは男としての尊厳を傷つけられて、ただ俯くしかなかった。

もう、『ここ』は十分に成長しきってますと、心の中で呟く。


(つか、規格外のマリと比べんでくれ・・)


僕のはいたって平均的・・なはずですから、多分。



◇◆◇◆◇




ちなみに。


その後無事ブックマンとチャオジーに合流したラビ達は、何事も無かったように任務を遂行した。

しかし、やはりショックだったのか、毒蛇の件をミランダに口止めするのを忘れてしまったラビは、後日、それを激しく後悔する時がくるのだったが・・・



それは別の話。





End




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