D.gray-man


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風呂上がりに冷たい物でも飲もうと、マリが食堂へ足をのばすと偶然ミランダがいた。

「あ、マリさん」

こちらの姿を見て、嬉しそうに微笑む様子を感じてマリも頬を緩める。
彼女も風呂上がりらしくて、傍へ行くと石鹸の香りがして。マリはひそかに胸がときめいた。

「マリさんもお風呂上がりですか?」
「ああ、冷たい物でも飲もうと思ってな」

頷いて、水を飲む為のコップを取りに行こうとカウンターへ足を向けて。

「ミランダもいるか?」
「あ・・私は・・」

ミランダは戸惑うようにマリを見て、ほのかに頬を染めながら。

「実は、ジェリーさんのアイスキャンディーをお味見する約束で・・」
「アイスキャンディー?」

マリが不思議そうに僅かに目を見開く。この教団でアイスキャンディーを食べた事はなかった。

「その・・夏に向けて、アイスキャンディーを色々と試作してるらしいんです」

ミランダは、ふふと少しだけ恥ずかしそうに笑う。

「あら、マリもいたの?」

ふいに声がして、マリが注文カウンターへ顔を向けると、ジェリーが籠に、綺麗に包装された色とりどりのアイスキャンディーを持って立っていた。

「ちょうど良かったわぁ、食べてみてくれない?感想聞かせてほしいのよね」

ミランダは赤や黄色など宝石のようなアイスキャンディーに、うっとりとため息をつきながら。

「まあ、綺麗・・」
「うふふ、でしょう?これがチョコで、苺にレモン・・葡萄とオレンジもあるわよ」
「素敵・・どうしましょう、すごく美味しそう」

目移りして仕方ないという風に、アイスキャンディーを見比べて何度もため息をついた。

「マリは何がいい?いっぱいあるわよ」
「わたしは・・そうだな」

正直言えば、甘い物よりも冷たい水を飲みたい気分だったが、ミランダと二人でアイスキャンディーを食べるのも楽しそうだと思い。

「では、レモン味はあるかな」
「あるわよ、はいどうぞっ」

袋に入ったキャンディーを渡される。

「ありがとう」
「ミランダは?決まったの?」
「ええと・・あの、迷っちゃって、あら?ジェリーさんこの白いのは?」

手に取って、不思議そうに見る。

「それはミルク味よ、アタシの自信作だから間違いないわ」
「まあミルク味?」

ニッコリ笑うジェリーにつられてミランダも微笑み、

「・・じゃあ、私はこれにします」

白いアイスキャンディーを手に取り、マリに向けて微笑んだ。


アイスキャンディーを持って二人は談話室まで移動した。

そのまま食堂で食べても良かったのだが、ゆっくり過ごしたくて。
腰を落ち着ける談話室へ行くと、ビリ、と袋を破ってキャンディーを取り出し食べる。

ミランダは棒を持ってまじまじとアイスキャンディーを見ながら、

「わあ・・大きいですね、口に入るかしら」
「確かに、普通よりも大きめに作ってあるな」

マリが一口食べると爽やかなレモンに、蜂蜜が入っているのか懐かしいような味がした。

「うん、うまいな」

一口、かじる。
こういったアイスキャンディーは、歯でかじりながら食べるタイプと、舌で舐めるタイプに分かれるが、マリは、シャリシャリとかじりながら食べる方だ。

「ん・・・っ、美味しいですねぇ」

ミランダは舌でぺろりと舐めて、先を口に含みながら溶かしたミルクをチュウ、と啜る。

「ん・・甘い、です」
「・・・・・」

下から上へキャンディーを舐め上げるのを、マリは何となく気まずい気持ちで聞いた。
こんな事を考える方がおかしいのだが、ピチャピチャと舌を動かす音がなぜかいやらしくて。

「ミ、ミランダ・・その、今日はいい天気だったな」
「そうですね・・んっ」

チュウ、と吸うような音がミランダの唇から立てられた。

「か、風もあまりなかったし・・」
「空気が暖かくて・・んっ、気持ち、良かった・・でふ」

キャンディーを口に含んだのだろう、こもるような音がして、溶けたアイスをジュルと吸う音がマリの耳をとらえる。

(・・・・)

思わずゴクリと唾を飲んだ。
ミランダは大きなアイスキャンディーと格闘しているようで、舌と唇を駆使しながら食べている。

「ミランダ・・その、食べづらいなら噛んでみてはどうかな?」

何かをごまかすように咳ばらいをして言うと。

「・・んっ、大丈夫です」

ミランダは、チュパと口からキャンディーを抜いて、

「私・・こうやって舐める方が好きなんです」

ゆっくり食べれるから、と言ってウフフと微笑む。

「そ・・そうか」

溶け始めたレモン味のキャンディーを、シャリと噛んだが正直もう味も分からない。

隣に座るミランダの口から発する音に、耳が釘付けで。それをごまかすようにただ口を動かしているに過ぎない。

ミランダの舌はキャンディーを包むように動いて、その音を聞いているだけでマリの下半身は熱くなり始める。

(な、何を・・考えているんだ、わたしは)

自戒するように額を拳で叩いて、眉間に皺を寄せた。

「マリさん?」
「あ・・いや、アイスが冷たくて頭が痛くなった」

不思議そうにマリを見るミランダをなんとかごまかして、ゴホンと咳ばらいした。

ミランダは心配そうにマリを見ながら、ふたたびキャンディーを舐め始める。さっきより小さくなったそれは、ミランダの唇にやすやすと入るようになって。

(・・!?)

人差し指と親指で棒を持って、律動するようにゆっくり出し入れし始めた。
ミランダの口腔でキャンディーが摩擦する音がして、チュプ、チュ、と水音が聞こえると、マリは耳まで顔が熱くなるのを感じた。
下半身の一部が硬くなり窮屈さを感じると、それを隠すように体を前傾させる。

(・・ま、まずいな)

音を拾わないように意識を集中させるが、逆にその音に集中してしまい、マリは焦った。
ミランダは口に含んだキャンディーを抜いて、マリを見ると、


「・・マリさんのも、美味しそうですね」

ふふふ、と笑う。

「・・!」

それがレモン味の事だと分かっていながら、一瞬自分の下半身を言われた気がして。
さらなる自己嫌悪に襲われながら、マリは手に持っているアイスキャンディーを口に入れた。

レモンの酸味がさっきよりも口の中に広がって、マリは溜まる唾液をゴクリと飲み干すのだった。








End



ちなみに私は噛む派です。

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