D.gray-man


2

らしくないにも程がある。年寄りの口車に乗せられそうになるとは。
俺も焼きが回ったな、と神田は近くにある竹刀を持ち雑念を払うように素振りを始める。

(・・・・にしても)

3分か。



◆◇◆◇◆


本気でそれを信じた訳ではない。
ただあの老人の話が、少なからず自分の考えに重なる部分があった。ただそれだけだ。

そう自分に言い聞かせながら、神田はミランダの手首を掴み歩きだした。

「えっ?あ、あの?神田くんっ・・?」

急いで食事を終わらされたミランダは、腕を引っ張られまるで引きずられるようについていく。廊下を俯きがちに早足で歩く神田の頭は、ただ一つ。今日こそは、という熱く猛る思いでいっぱいだ。
食事中のスープを飲む唇や、熱々のグラタンを食べた時の額に浮かぶ汗。デザートのアイスクリームを舐める舌使いなど、そんな些細な事にまで反応してしまう自分に、もう限界である。

「神田くん?ど、どこへ行くの?」
「・・・・・」
「あの、どうかしたの?」
「・・うるせぇ黙ってろ」
「か、神田くん、もしかして怒ってる?」
「いいから黙ってろ」

廊下で擦れ違う人々は、またミランダが何かやらかしたのかと、いつもの事と気に留めるふうもない。不機嫌そうな神田も、びくびくするミランダもよくある光景だからだ。
本当ならミランダを担いで駆け上がりたい階段を、なんとか理性を保ち自室まで上りきると、神田はあと数歩で自室というあたりでミランダを振り返る。

「・・・か、神田・・くん、いったいどうし・・」

はあはあと頬を染め息を乱すミランダに、またも妖しい気持ちになりながら、神田は周囲を見渡し時計を探す。
ちょうど20時になる3分前だ。

(・・・・あのジジィに言われたからじゃねぇぞ。偶然だ、偶然)

とは言え、やはり時間は気になる。

「おい」
「な、なあに?」
「その、あれだ・・お前俺と・・その、ナニする気は・・あんのか?」

ゴホンと咳ばらいをして、気まずそうに顔を背ける。

「え?・・何を?」
「なんつうかナニをアレする・・いや、だから心構えってのは・・あんのか?」
「心構え?」
「あ・・あんのかよ、どっちだよ」
「え?そ、そうね・・ええと」

ミランダはイマイチ意味が分からないが、とりあえず「何か」を神田がしようとしているらしい。心構えとは、多分それについての事ではないのだろうか。
でもいったい何の心構えなのだろう、目の前の神田はどこと無く切羽詰まったような、そんな様子で。もしかして、何か深刻な悩みでも抱えているのかもしれない。
そうなら、何としてでも力になりたい。いつも迷惑ばかりかけてしまうけれど、本当に神田を大好きだから。

「そ、そうね・・ええ、あるわ」
「・・・・・・」
「神田くん?」
「マジか」
「あの、それでねどういう事・・・・って、神田くんどうしたの?顔が真っ赤・・!」

体中から湯気でも立ちそうなくらい赤く染まった神田に、ミランダは驚き声を上げる。

「ちょうど3分だ」
「きゃっ!?」

言うなりミランダを問答無用で肩に担ぎ、神田は逸る気持ちを抑え切れないふうに、自室へと駆け込む。バタンとドアを勢いよく閉めると、なだれ込むようにベッドに倒れ、そのままミランダを組み敷いた。

「か、か、神田くん・・あ、あの?」

ポカンとした顔で見上げるミランダの唇に、躊躇うようなぎこちないキスをする。
唇と唇を合わせ、顔をゆっくり左右に動かしながら、その柔らかな感触にもはや頭の芯が痺れてきて。
今でこれなら、この後はいったいどうなるんだと自分自身が心配になる。
既に下半身の一部は十分な固さを持ち、今か今かと主張していた。

(・・・よし・・)

ゴクリと生唾を飲み、カーディガンの下に着ているカットソーに手を滑らせる。指が確かにミランダの生肌に触れたと思った瞬間、

「きゃっ・・えっ、ち、ちょっと待って・・あ、あのっ」

逃げるように体を捻らせて、ミランダは神田の手から逃げた。

「おい」
「あの、神田くん・・こ、これって・・・何?」
「何って、見りゃわかるだろうが」
「そ、そうじゃなくて・・・・」

ミランダはベッドから半身を起こし、じりじりと肘で後退りベッドヘッドへと移動していくが、神田もそれに合わせて移動するので、あまり意味がない。

「何やってんだ、おまえ」
「あ・・」

気づけば知らぬ間に枕元まで移動していて、ミランダはやや顔を強張らせながら神田を見上げた。
彼の瞳はミランダが今まで見たことのない、熱っぽい色を映し。どこか性急な焦りのような印象を受ける。

これはやっぱり・・そういう事なの?

(じゃあ・・もしかして)

さっきの「心構え」というのは、そういう意味の「心構え」?
深く考えずに「ある」なんて言ってしまったが、正直ミランダは、男女の仲になる心構えは出来ていない。
最近ようやく二人でいても緊張しなくなってきて、先日は初めて寝る前に触れるだけのキスをした。それだけで心臓が止まるほど緊張してしまったのに、それ以上なんて今の自分には無理だ。きっと失神してしまう。

「ね、ねぇ・・神田くん」
「なんだよ」
「もしかして、あの・・えっと、そ・・そういう事なの?」

恐る恐る聞くと、神田の眉がぴくりと反応するように動いたのが見えた。
組み敷いていた体勢のまま、ふいと顔を背けると少し拗ねたように口を引き結んで。

「・・・・嫌なのかよ」

うっすらと頬に赤みがさしている。

「い、嫌じゃないわ、でも・・ちょっと恥ずかしい」
「なんだそりゃ」
「だ、だって・・こんなに顔が近いだけでも、私すごく緊張しちゃってるのに・・」
「・・・・・・」

怒ったように眉間に皺を寄せると、神田はそのままミランダを抱きしめる。

「もう、遅ぇよ」

柔らかい羽毛みたいな髪に顔を埋める、どうしてこうも甘い匂いがするんだろうか。

「我慢・・できるわけねぇだろ」
「あ・・」

耳の後ろに鼻先をあて首筋を吸うと、ミランダの体がびくっと反応する。
感触は滑らかで、神田は初めて触れた女の肌に微かな感動のようなものを覚えた。
触れたい、もっと。ようやく抑えていた衝動を、解放できるのだ。

「ま、待って・・神田くんっ」
「嫌だ」
「でも私、まだ心の準備が・・あのっ」
「嫌だっ」

その言い方が駄々っ子のようで、ミランダは困りながらも少しだけ愛しくなる。
ミランダを捉える、深い夜のような黒い瞳は潤んだように艶っぽい。それだけで鼓動が速くなった。

「・・・あ、あの」

それに耐え兼ねミランダは口を開いたが、許さないように唇は塞がれる。

「!」

カチ、と歯が当たりながら少し強引に舌を入れられ、絡められて。互いの唾液がじわりと浸食し始める。顔を左右に動かしながら、すべてを確かめるように舌が口腔を刺激すると、息苦しさも手伝いくらくらと目眩がした。

「ん・・っ・・」

生暖かい舌の不器用な愛撫を終え、そっと離されるとミランダは荒い息のまま神田を見る。

「・・・んだ、く・・ん」

自分を見下ろす、彼の美しさにみとれる。
ああ、どうしてこんなに綺麗なひとが私なんかを好きでいてくれるの?澄んだ真っ直ぐな刃物のような瞳が、今は艶を含んで私を見ている。
それだけの事が、奇跡が起きたみたいに嬉しくて胸が震えて。気づけば、さっきまであった体を重ねる躊躇いはミランダの胸から消えていた。


ミランダのカットソーをめくり上げると、胸を覆う白い下着が目に入り思わず釘付けになる。

初めて見る、生の女の体だ。
柔らかそうな乳房に、神田は気づかれぬよう生唾を飲み込む。
そろりと指先で膨らみを突くと、フニと沈みその柔らかさに僅かに目を見開いた。

(おお)

下着のホックがぱちんと外れ、ちょうどフロント部分にあったのでもたつく事なく外す事ができた。
白く丸い乳房に胸がときめく。先端の桜色の突起は緊張しているのか、ツンと固くなっている。

「・・・・・」

ふにゃり、とした頼りない感触が手のひらに感じて。両手で寄せるように揉み親指で乳首を突いてみると、ミランダの体がピクンと反応した。

「・・っ」
「ここ、いいのか?」
「そ・・そんな・・」

切なそうに頬を染め、顔を背ける姿に神田はさらに興奮して。
吸い寄せられるように乳首を口に含む。舌で転がしていると、高ぶりから乳房を強めに掴み、かぶりつくみたいに全体を舐めた。

「っ!・・あっ、か、神田くん・・ちょっと痛いわ」
「?」
「あの、もう少し・・優しく触ってくれると・・」

おずおずと、言いづらそうに掴まれている乳房を見る。

「あ・・ああ」

興奮して強く握っていたらしい、イマイチ力加減が難しい。



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