D.gray-man
1
マリは任務から帰還した。
アクマとの闘いも苛烈を極めたが、無事イノセンスを回収できた。疲労もかなり溜まっていたが、長らく闘いと緊張状態にいたせいか神経が高ぶって、収まりがきかない。
自室へと歩きながら、恋人であるミランダを想った。
(・・ひと月ぶりか)
無性にミランダが欲しい・・・ しかしこの神経の高ぶりは危険だ。今、ミランダが眼の前にいたら抑え切れ無い気がする。
(危ないな)
ミランダに会わないうちに酒でも呑んで寝てしまわねば・・・そう考えながらマリは歩みを速めた。
リナリーから無線ゴーレムでマリの帰還を知ったミランダは、図書室から慌てて飛び出した。喜びで胸が奮える。
(よかった・・!帰ってきた・・!)
何度もつまづき、転びながら、ただ会いたくて、声が聞きたくて、ミランダは走った。
修練場や医務室にもマリはいなかった。
やはり自室かと階段を上がろうとした時、階段の上段にマリらしき影が日の光に反射されるように、映しだされた。ミランダはハッとして、振り返る。
マリがちょうど今、階段を上ってくるところだった。
「お・・おか、お帰りなさい・・」
嬉しいのに、涙が出てしまって、上手く声が出なかった。
マリはミランダが自分を捜している事を知っていた。
彼女が何度も転びそうになるのを、耳で聞いてはやはり心配で、とくに階段はいつ踏み外さないかとハラハラしていたのだ。
(バレてしまったか)
ひと月ぶりに聞く、恋人の声はあいかわらず甘く、胸を締め付ける。
「ただいま、ミランダ」
平静を装ってはいるが、あまりミランダに近付き過ぎないよう、距離を保つ。自分が狼にならないように。
ミランダはそんなこと露とも考えていないから、階段を降りて、近づいてくる。
恥じらうように迷ってから、そっと、マリの手を握る。
「無事で、よかった・・」
あふれる涙を拭うこともなく、ミランダはマリの手を両手で握っていた。
そのまま、抱きしめてキスしたい
しかし、ぐっと堪える。今日の自分は、危険だ。何度も言うが、危険だ。
というか、押し倒したい。ミランダの優しい香が鼻孔をくすぐる。
マリはブンブンと首を振った。
(いかん、いかん・・!)
「マリさん?」
「!・・あ、いやなんでもない・・」
何気ないように、ミランダの手をそっと外す。
「さ、ミランダ。部屋まで送ろう」
「え・・?」
「行こうか」
歩きだす。
歩きながら、任務の事や日常の些細な出来事を話してはいたがマリは上の空のようで、ミランダは気になった。
久しぶりの再会、もう少しロマンチックになるかと期待していただけに少しだけ、落胆していた。
(わたし、何かしたのかしら)
マリとは、ゆっくりとではあるが愛を育んできた、と思う。数えるほどだが、体も重ねた。
(今日は、朝までいっしょに・・て思っていたのだけど・・・)
はしたない事を思って、ミランダの頬が染まった。
「あの、マリさん・・」
「なんだ?」
「その・・今日はこの後、どうするんです・・か?」
一瞬の沈黙のあと、
「今日は、疲れているから・・もう寝るよ」
いつもと違う、そっけない物言いにミランダの不安は募る。ふたりはそのまま、何も言わず、廊下を歩く。
ミランダの部屋はマリの部屋より上の階にあるため、いつも自室を素通りさせてしまう事を、ミランダは申し訳なく思っていた。
「あ、あの・・今日は、大丈夫ですよ、その、お部屋でゆっくりして下さい」
「・・・いや、送るよ」
「いいえ、その、大丈夫です・・」
マリは躊躇してるようで、その姿にもミランダは少し傷ついた。
(もう、好きじゃないの?)
マリは今までどんなに固辞しようと、ミランダを送ってくれた。そんな、戸惑いの顔を見せられるのは初めてだった。
(だめよ、ミランダ。今までが幸せすぎたのよ)
マリの優しさにいつも甘えすぎていた。
ミランダは自分の気持ちを掃うように、明るい声を出した。
「じゃあ、私、部屋に戻りますね。マリさんゆっくり休んでくださいね」
そのまま階段を駆け上がる。
「ミランダ!あぶない!」
え?と思う間もなく、ミランダの体は、マリの体に支えられていた。どうやら、また足を滑らせていたらしい。
(わ、わたしったらっ・・!また、迷惑かけちゃった・・!)
顔が熱い。情けなくて泣きそうだ。
「ごめんなさい、すいません・・」
起き上がろうとしたが、なぜか体が動かない。マリが一分の隙もないくらい、ミランダを抱きしめていたのだ。
ミランダの柔らかな髪が頬にかかる。細い腰に腕が回る。甘い吐息が吐かれるのを首で感じた。
限界だった。
抑え切れ無い衝動に耐え兼ねて、ミランダを両手で抱え上げると、マリは自室へ歩き出した。
バタン、と勢いよくドアが閉まり、そのままミランダは下ろされた。
「あの・・?マリさん?」
どうしたんですか、と口に出す前にマリの唇に封じられていた。
「んっ・・・」
壁に押さえ付けられ、身動きできない。マリの唇は性急で、荒々しい。歯列をなぞるように舌を割入れて、そのまま口腔を貪る。
「はっ・・や・・あん」
糸が引くような、濃密な口づけを一度離すとマリは切なげにミランダを見つめた。
「もう・・我慢できない・・」
燃えるような瞳に見つめられて、ミランダはくらくらして、立っていられない。
マリは、一時も離れてられないという風にまたミランダの唇を貪欲に求めた。そのまま、転がるように、二人はベッドに落ちた。
ワンピースの胸元をやや強引に開く。ボタンは弾かれるように、数個ベッドの下へ落ちていった。
十分に実った乳房を、シンプルなブラジャーが覆っていた。外すのも面倒で、そのままぐいっと持ち上げると、柔らかな乳房がまろびでて、マリはそのまま尖端に吸い付いた。
いつもは優しく、こわれれ物を扱うように自分を抱くマリなのに今は性急で荒々しく、少し乱暴だ。
「あっ・・っ!・・ふぅ・・」
噛まれるように強く吸われて、甘い痛みが広がる。
少しだけ、こわい。
けれど、胸の内から湧き出る喜びが抑え切れずに、嬌声となってあふれる。
ミランダの服を脱がすのも、もどかしそうにスカートをめくる。白く細い足が昼の光にさらされて、まぶしいほどだ。
まるで熱に浮かされているようにマリの理性が飛んでいく。
ショーツを強引に下ろすと指で花唇をなぞり、ゆっくりと指を挿し入れた。
クチュ
「かはぁ・・・・っ」
そこは十分なほど濡れている。もう、限界だった。
「ミランダ・・・」
赦しを乞うように優しく口づけた。その口づけが、あんまりにも優しいのでミランダは泣きそうになる。
こんなキスをするたびにこの人に会えてよかったと思う。
「・・・好き・・」
ミランダは受けとめるように、マリの太い首を掻き抱き、耳元で囁いた。
マリは返事をするように、優しく口づけをすると、そのまま襞を押し広げるように自身を割入れてきた。
「!・・っはっ・・」
十分な潤いのそこはマリをしっかり飲み込む。
もうこれ以上ない、というふうに根元まで挿し入れると、ドクンドクン、と血脈が伝わってきた。
あいかわらず、きつく締め付ける。快楽に鳥肌が立ちながら貪るように、腰を動かした。
ミランダの片足を肩にかけて、より深く、襞に絡ませる。
「や・・あぁ!・・んんっ!」
いつもよりも乱暴に快楽をあたえられる事に、ミランダの体はいつもより強く反応していた。
汗が滲んだマリの額がたまらなく、胸がときめく。快楽にくぐもった声がたまらない。
こんな彼を知っているのは自分だけだと思うと、優越感のような不思議な気持ちになった。
そっと、マリの手をとり、太い指に舌をはわす。
とくに意識してやった訳ではなかったが、それがマリの琴線に触れたのか
マリの動きが激しさを増した。ガクガクと体が揺さぶられて、体の奥底から沸き上がるうづきが止められない。
「マリさん・・マリ、さん・・・も、もうっ・・・!」
そのまま飛び立つような絶頂を迎えると、ミランダは瞼の裏に火花が見えたように感じた。
ぼんやりと上下する視界のなか、マリのものがさらに大きくなった気がする。
「うっ・・・くっ・・・いくぞっ・・!」
打ち付けるように腰を動かし、そのまま破裂するようにミランダの中へ熱を吐き出した。
マリは、ハァハァと、荒い呼吸をしながらミランダの髪をくしゃ、と優しく握りしめる。そのまま、唇にちゅ、とキスをして
「ずっと・・・・欲しかったんだ・・・」
呟いたあと、ガクン、とミランダの上へ倒れ込んだ。
寝息がする。
「え・・?マリ、さん?」
驚いて確認すると、ぐっすり眠ったマリの顔があった。ミランダにかぶさるように、肘をついて眠っている。
(まぁ・・・)
愛しさに笑みがこぼれる。ミランダはマリを優しく抱きしめて
「おつかれさまでした」
囁くと、マリを無理のない姿勢にして布団をかける。
こんなふうに、寝顔を見ることは今までなかった気がする。いつも先に自分が寝ていたから。
このまま、彼が目覚めるまでここにいたいような
でも、彼のことだから気がついて目が覚めるかも
でもでも、もう少しだけ独り占めさせて
寝顔も、あなたも、この幸せも。
end
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