D.gray-man


2


もしかして、彼も自分と同じ気持ちなのだろうか。

ドキドキと鼓動が速くなるのを感じながら、ミランダは階段を上る。
マリの手はいつもより少しだけ熱くて、けれど自分の手も負けずに熱いのをミランダは分かっていた。

(でも・・)

ふと、心配になる。
マリの怪我した手の負担になるのではないか?
ミランダにはよく分からないが、ああいう行為は男性側の負担が大きい気がして。

(大丈夫・・かしら)

気になりつつも、求められたら拒否できない自分がいる。だって、ずっとそうしたかったのだ。ずっと愛されたかった。
想うだけで、体が火てるように熱をもってしまい、そんな自分にミランダは恥ずかしくて俯くのだった。



マリの部屋に入り扉がパタンと閉まる音に、胸が期待するように甘く疼く。
普段は使わないのだろうランプに、明かりを灯す時マリは片手だけでそれをするのが難しそうで。

「あ・・手伝います」

慌てて傍へ寄り、マッチを擦る。マリが微笑んで。持つランプに火を近づけると、ほわんとした柔らかな明かりが二人を包んだ。

ランプを机にそっと置き、マリは躊躇いがちに左手をミランダへ伸ばすと、さっきから赤いままの頬へ触れる。

「ミランダ・・その」

言いづらそうに、口ごもりながら右手を見せて。

「この有様だから、もたつくだろうが・・その」

言いながら、気まずそうに苦笑いをした。求めてくれているのだ、ミランダはドキドキしながらマリを見つめる。
頬に触れていた手は、ゆっくりとミランダの首へ回りやがて肩へとたどり着くと、そっと力を入れられて、マリの胸へと頬が当たるのを感じた。

(わ・・っ)

すぐに両腕に包まれるように抱きしめられると、ミランダは高鳴る胸が苦しくて、微かなため息をもらす。
マリの腕にグッと力が込められるのを感じた。

「急に・・強引すぎるか?」
「そ、そんなこと」
「すまない、自分でも分かっている」

抱きしめながら身を屈めて、ミランダの耳元で囁いた声は少し苦しそうに聞こえた。

「そんなこと、ないです」

ミランダは両手をマリの背中に回す。
ぎゅう、と指に力を込めてそっと目を閉じると。密着させるように、マリの腕がミランダを胸へと縫い付ける。

「・・本当は」

照れ臭そうに、笑う声がして。

「義指がつくまでは、と我慢していたんだが・・」
「マリさん・・」

マリは少し体を離し、ミランダの頬にキスをした。

「・・・・しばらく会えなくなるから」

淋しさを滲ませ、耳元で呟くように言われると、ミランダは胸が締め付けられるように、苦しくなる。

(マリさんも、同じ気持ちでいてくれた・・)

縋り付くように、マリの胸に額を宛てて抱き着くと。

「わ、わたしも・・マリさんに・・あの・・」

抱かれたかったとは、やはり恥ずかしくて言えなかったが、マリは気付いてくれたのか、もう一度ミランダは強く抱きしめられた。

両頬を優しく挟むように手をそえて、マリの唇が降りてくる。ゆっくりと、顔を動かしながら下唇を優しく吸われると、ミランダが吐息を漏らすのに合わせるよう、マリの舌が侵入してきた。

「・・・っ」

舌を絡まされて、撫でるように舐められる。
マリの舌は歯の裏の一つ一つをなぞり、ミランダはくらくらと眩暈しそうだった。

こんなキスは久しぶりで。
最近は、そっと触れるだけのお休みのキスだけだったから。口腔を愛撫するような、やや性急な舌使いにミランダの指が震えてくる。

「・・んっ・・」

息苦しいようなミランダの吐息に、マリはハッとしたように唇を離すと、

「す、すまない」

ミランダはそのとたん、ストンとマリの胸に落ちる。息を乱したまま、うっとりとした瞳でミランダはマリを見上げた。

「ご・・めんな、さい」
「大丈夫か?」

コクン、と頷いて再びマリの胸に頬をつけると、ミランダは自分の体がじわじわと熱くなっていくのを感じていた。
マリの腕がミランダの膝裏へと回り、そのまま軽く抱き上げられるとミランダは焦り、

「だ、駄目です・・怪我に良くないです」
「このくらい大丈夫だ・・」
「で、でも」

言い合いながらミランダをベットまで運ぶと、ふわりと降ろした。

ギシ、と軋む音と共に二人分の重さがベットにかかる。ミランダは肘で体を支えるような体勢をして、マリはその上にのしかかるように、体を覆った。

「・・あっ・・」

首筋に、温かい感触。マリの舌だ。同時に逞しい男性の匂いがして、ミランダは酒に酔うようにくらくらした。
マリがミランダのボタンを外そうと、手を首元へと持っていく。いつもはするすると簡単に外すのだが、やはり左手だと上手くいかないのか、ぎこちない指使いで。

「・・マリさん」

そっとマリの指に触れた。
口に出して言うのは恥ずかしくて、ミランダはそろそろと自分の指でボタンを外していく。

「わ、私が・・」

マリは少し驚いたように僅かに目を見開いたが、ミランダの気持ちを悟ったのか微笑んで。開かれた胸元に、そっと唇を寄せた。
そのままミランダを抱きしめるように持ち上げると、自身の膝の上に座らせる。

「この体勢でも、いいか?」

壁を背に座るマリの太股の上に、向かい合うように尻を下ろすこの姿勢を、恥ずかしく思いつつ頷いた。
ふと、靴を脱いでいない事に気付き急いで靴紐を解くと、よそ見をするのを咎めるように、マリの手がミランダの顎を持ち、口づけを始める。

「んっ・・」

密着させるように背中を抱かれ、唇に舌が割入れられながら、ミランダは膝立ちし片手で靴を脱ごうとするが、情熱的な口づけに翻弄されて上手くいかない。

「マ、リさ・・靴・・」
「いいんだ」

布団を汚してしまうと思い、それでもと左足だけは脱いだが、すぐにマリの唇がミランダの鎖骨に吸い付いて、意識がふらついてしまう。
胸下まで開かれたワンピースは、ビスチェに被われた白い乳房も覗かせていて。マリはそこに手を入れ、下から持ち上げるように揉む。
ビスチェから溢れる、白く柔らかな乳房を舌で撫でるように舐めるとミランダの足が震えてしまい、膝立ちが辛くなった。
マリはミランダの腰を、怪我した右手で押さえるように抱きしめ、左手でビスチェを引き下ろすと、こぼれ落ちた桜色の先端に吸い付く。

「っ・・!」

咄嗟に眉を八の字にして、吐息をもらした。
マリは前屈みでミランダの胸に顔を埋め、チュパ、と舌での愛撫を始める。
大きな左手で服からミランダの肩を出し、ワンピースをスルリと落とし、それは腰に落ちた。

暖房が入っているとはいえ、冷えた空気が肌を刺したが、いざなうマリの愛撫によって、内部から体は火てり出す。
乳首を甘く噛まれ、微弱な電流が体に流れるのを感じた。

「あっ・・はぁっ・・」

久しぶりだからだろうか、いつもより敏感になっている気がする。ずり下げられたビスチェの上に、乳房は盛り上がり、マリの舌での愛撫により頂は硬くなっていた。

ミランダの腰に引っ掛かった状態のワンピースをめくり、マリの手がそろりと太股を撫でる。柔らかな感触を楽しむように摩ったあと、指はショーツへと進んだ。
つつ、と中指が花唇を確かめるようになぞると、ミランダは衝撃に思わず腰が引けて、
マリの手を挟むように、太股を内側へと寄せてしまう。

「ミランダ」

少しだけ咎めるような、けれど少し掠れたその声は、彼もまた高ぶった状態なのだと感じた。
やや性急な様子で、ショーツに指を滑らせぬかるみ始めたそこに直接触れる。ミランダはビクッと反応して、咄嗟に胸元にあるマリの頭を抱きしめた。

「・・っ、ふっ・・」

吐息をもらし、固く瞼を閉じる。
乳房にあったマリの唇が再びミランダの唇を塞いだ。

秘部を探るマリの手つきがいつもよりぎこちなくて、なぜだか奇妙な高ぶりを覚えてしまう。
クチ、と音を立てごつごつした指が、襞をめくるように分け入る。

ぬるりとした感覚に、自分がかなり濡れている事を悟ると、恥ずかしさに顔が熱くなった。
逃げるように顔を俯こうとすると、絡まるようにマリの舌がミランダの舌を押さえて。溢れる唾液も啜るような深い口づけに、意識がぼうっとしてしまう。

「・・・っ!」

唐突に、指が一本挿し入れられて。体がビクンとのけ反り、思わず唇を離す。
中指を深く強めにストロークされて、ミランダは膝が震えマリの太股にぺたんと尻を落とした。

「はっ・・ぁぁん」

額をマリの肩にもたれて、与えられる甘い感覚に身を任せる。
奥深く掻き交ぜるように動き、上部を微細に擦り上げられると、ザワザワとした熱い何かが沸き上がった。
溢れ出る蜜がマリの手を濡らすのを感じる。クチュ、クチュ、と水音を立てながら中指をゆっくり出し入れされ、親指の爪で敏感な秘芯を軽く引っ掛く。

「あっ・・はぁんっ!」

強い刺激に、思わず腰が浮いてしまった。
ヒクヒクと軽く痙攣した花唇は、マリの指をきゅうと締め付けて誘うようにうごめいている。
更なる快楽を求めるそれに耐え兼ねるように、マリは生唾を飲んだ。

「・・このまま、いいか?」
「・・・?」

よく働かない頭と乱れた息で、ミランダはぼんやりと考える。

(このまま・・?)

マリはさっきから張り詰めて苦しいズボンのベルトをカチャと外し、ミランダを片手で軽く持ち上げ、ズボンをやや乱暴に足で脱ぐ。
ブーツは踵を使い、引っ掛けるようにベットの下へと落とした。

それからミランダの腰にたぐまるようにあったワンピースを、ショーツと共にスルリと脱がせて。
片足だけ残っていた靴を脱がせると、ミランダは靴下だけの姿にされてしまう。

「マ、マリさん・・」

恥じらうように身を固くするミランダを、マリは自身の硬くなった隠茎の上に膝立ちさせる。

「ゆっくり・・降りて」

耳元で、マリの掠れた声。

「・・・えっ」

鼓動が早まり戸惑いながらも、ミランダは別のところで何か不思議な興奮を覚えていた。誘われるまま、ゆっくりと腰を下ろす。頭がくらくらして倒れそうだ。

そろそろと腰を下ろすと、濡れた花唇と熱い隠茎がキスするように触れ合うが、溢れる蜜に滑り、うまく挿入とならない。
もともと大きめなマリのそれは、簡単に挿入できるモノではないのだ。

「あ・・・んっ」

何度か挑戦するが難しく、その度に隠茎がミランダの秘部を擦り、刺激から辛そうに眉を寄せる。
欲しいものがそこにあるのに、届かない。もどかしくて、堪らなくて。

「あぁん・・マ、マリさん・・」

甘く、ねだるような声を発してしまう。

「ミランダ・・」

くすぐるような囁きと共に、ミランダを抱きしめたまま前傾すると。マリの親指が花唇をそっと広げて、熱い塊を押し当てる。

「・・はぁっ」

待ち兼ねたものが来る、喜びに胸が高鳴った。十分に潤ったそこは、先端を含ませれば易々と飲み込んでいく。

「・・狭い、な」

独り言のように、呟いた声は熱を持って苦しげだった。

「はあぁっ・・!」

弓なりにのけ反り、突き上げたマリのそれを奥から感じて、快感に鳥肌が立つ。マリが壁に背を宛て、座ったままミランダを突き上げた。

「ああぁっ・・はぁん」

強い刺激に、助けを求めるかのようにマリの首に縋り付く。ギシギシと、ベットが悲鳴を上げるみたいに鳴いて、それはマリの突き上げの激しさを物語っていた。

肌が擦れ合い、敏感に反応して。
快楽に酔いながらもミランダは、足りなかった何かが埋まっていくような気がした。

実感していく。愛されていると。
体が記憶していくのだ。彼の温度や匂い、味を。

指を失った右手が、ミランダの感触を思い出すように触れてくる。滑らかで汗ばんだ肌を撫でながら、残る三本の指が首筋に触れた。

とたん何故か唐突に、少しだけ淋しい気持ちが胸に芽生える。

自分でもよく分からない、複雑な感情が胸を締めつけて。失くなった指への淋しさを改めて実感したのか、それとも明後日には離れる事への想いなのか。

ミランダは縋り付くように、強くマリを抱きついた。

「マ、リさん・・っ」

名前を呼べば、気持ちを悟るようにマリは強く抱き返してくれる。
厚い胸板と硬い腕に、守られるように抱きしめられながら、奥へ奥へと貫かれていく。
宥めるように頭を撫でられ、ミランダは子供のように縋りながらも、唇からは甘い喘ぎ声がもれた。

「は、あぁぁっ・・ん!」
「ミランダ・・ッ」

打ち付ける腰の動きを速めるため、ミランダを抱きしめたままベットへ倒すと、靴下だけの足を肩へとかけて、前傾したままガクガクと揺さ振り打つ。

「あああぁっ・・!」

嬌声を上げながら、おぼろげな視界でマリを見ると、彼はぐっと顎を引き、何かに耐えるように眉間に皺を寄せていて、とても苦しそうに見えた。

(ああ・・)

引き寄せるようにマリの頬を挟み、首を起こしてミランダからの口づけをした。
ぎこちなく慰めるような口づけは、マリを少し驚かせたようで、腰の動きを一時中断して僅かに目を見開く。

「・・キス、したくて・・」

夢うつつのような口調で呟いた。

マリは、ふ、と緩やかに口元を綻ばせると。溢れ出す想いをぶつけるように、深い口づけをする。
唇から伝わる、マリの想いにミランダの胸は熱くなった。

(マリさん・・)

淋しいのはきっと彼も同じなのだ、と。指の事も、しばらく会えない事も。

伝わってくる。彼が、どれだけ自分を愛してくれているのか。

ミランダはマリに応えるように、自分も舌を絡ませていく。その動きは拙いものではあったけれど、想いが通じたのか、マリの口づけはさらに甘さを増していった。

(・・不思議)

愛を注がれたのか、さっきまで感じていた淋しさは消えていく。ただ、とても幸せな気持ちが泣きそうな程溢れていて。

満ち足りていくのを、感じた。

「ん・・ふ、ん」

互いの気持ちが寄り添い合うような、口づけをそっと離して。
ミランダは、大きな体にすっぽりと包まれたまま、マリの律動を受け入れた。

擦られる度に水音が増していくのを、快楽にふやけた頭でぼんやりと聞きながら、足先がビリビリと痺れるような、奥底から沸き上がる熱を感じ始める。

「あっ・・マ、リさんっ・・あぁっ!」

何かが弾けるような、絶頂の予感に体が震えてしまう。打ち付ける腰の動きが、さらに速まりマリもまた達するのだと感じる。

「くっ・・出すぞ」

その瞬間、全身を駆け抜けるような衝撃のような快感がミランダを襲った。
咄嗟にマリの首にしがみつくと、体が折れそうなくらいギュウと強く抱きしめられた。

「っ・・あぁぁっ!!」

胎内が痙攣しながら、ドクンドクンと脈打つ音を聞き、白い絶頂がミランダを包む。

薄らぐ意識の中で、マリが自らの精をミランダの腹に出したのを感じると、その温かさに、まどろむような心地良さを覚えつつ、ミランダはゆっくりと瞼を閉じる。
じきに感じる、瞼へのマリのキスを期待しながら、ゆっくりと、ミランダは意識を手放した。

体に刻まれた、愛の証を感じて微笑みながら。

そして。

ミランダの瞼にキスをしたマリは。
すうすうと眠る彼女を、久しぶりに抱きしめて眠る喜びを、静かに噛み締めていたのだった。





End


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