D.gray-man


4



ティエドールのアトリエにある作業用の机には、使いかけの絵の具やデッサンに使う炭、破れた紙などが乱雑に置かれてあった。
それらを片手でやや乱暴に掃い、スペースを作るとそこにミランダを座らせる。

「あ・・あの」

硬い机の上で、ミランダは向かい合うように立っているティエドールを見た。

「・・・・・」

ティエドールは何も言わず、ミランダが着ているカーディガンをするりと脱がせると、剥き出しになった二の腕を人差し指と中指の二本でツウ、と撫でる。

「白く、柔らかな肌」

独り言のように呟き。

「いいね・・やっぱり明るいと、ミランダの隅々まで見れる」
「げ、元帥っ・・」

顔が熱くなり、なんだか急にノースリーブの服を着ていたことが恥ずかしくなった。ティエドールのアトリエは大きな窓が二つもあって、そこから午後の西日が射し込んでいる。

(・・・ほ、本当に・・するの?)

こんな明るい場所で、こんな昼日中に。
ちら、とティエドールを窺うと、視線に気付いたようでニッコリと笑みを返されて、ミランダはやはりティエドールの冗談だったのかと、ホッとしたような心地になった。
しかし次の瞬間にはティエドールが、チュ、とキスをしてきたので、そんな気持ちも風のように消える。

「・・んっ・・」

背中に腕を回されて、ミランダの足にティエドールの身体が触れた。
唇で唇を撫でるように動かされ、下唇に吸い付かれると頭がぼうっとしてきて。緩んだ口に滑り込むようにティエドールの舌が侵入する。

(ああ・・)

舌を絡ませながら、チュウと唾液を吸われると、ミランダはまるで祈るように手を胸の前で組んで、身を固くしていた。
背中に回された手がカットソーに潜り込み、器用に片手だけでパチンパチンとビスチェのホックを外していく。

(・・・あっ)

するりと背中が無防備に開かれて、ティエドールの硬い手が触り心地を愉しむように肌を撫でた。
肩甲骨を指でなぞり、そのまま撫で上げるみたいにカットソーを通ってうなじまでいくと、捲くれたカットソーはミランダの胸の下まで上がってしまう。

熱っぽい口づけを止めぬままティエドールのもう片方の手は、緩んだビスチェをスルリと外し、カットソーを捲くり上げてミランダの乳房を外気にさらした。

「んっ・・!」

羞恥から、咄嗟にミランダは背中を丸めてしまうと、ティエドールは唇を離して困ったように微笑む。

「じゃあ、暗くする?」
「い、いいんですか・・?」

せめてカーテンを閉めてくれるだけでも、恥ずかしさは軽減するから。

「ああ、いいよ」

頷くと、ティエドールはカーテンへと向かったが、閉める事なくミランダの元へすぐに戻ってきて。

「さ、ミランダ・・」
「え?」

ポカンとしていると急に視界が真っ暗になり、ミランダは何か黒い布のような物で目隠しをされていた。

「ほら、もう見えないだろ?」
「え?ええっ・・あのっ」
「痛くないかい?手頃なのがコレしかなかったから」

言いながら、ミランダの頭の後ろで紐を結んでいる。
どうやら布はカーテンを縛っていた物のようで、埃っぽい匂いと一緒に陽の光の温かさが感じた。

「・・っ!?」

真っ暗な視界の中、ミランダは突然感じる乳房への刺激にビクンと身体を震わせる。
生暖かいものが、這うように乳房を動いて。チクチクと髭らしき感触に、動く物は舌であると覚った。
手で、乳房を持ち上げ硬くなり始めた乳首に吸い付かれると、そこから痺れのような甘い疼きが広がり、思わず吐息がもれる。
ぴちゃぴちゃと、舐め吸う音が耳に入り、恥ずかしさと奇妙な高まりが胸に起こって。

「・・ぁぁっ・・はぁ」

力が抜けて、ガクンと後ろに倒れそうになり。ティエドールがそれを支えながら、ミランダをそっと机に寝かせた。
カットソーは上に捲られて、ミランダの乳房はティエドールの眼下に晒されている。
目隠しをされているから彼がどんな表情かは分からないが、その視線をミランダは肌に感じていた。

「・・綺麗だよ、ミランダ」

くすぐるように耳元で囁かれて、鼓動が速くなっていく。
ティエドールがカチャ、とミランダのパンツのベルトに手をかけ外し、その細い腰を浮かせてスルリと脱がせたが、ブーツを履いたままなので足首に溜まる。
目隠しされ乳房をあらわに、白いショーツだけが頼りなげに一枚纏っている姿は、ひどくいやらしい。
ティエドールはほくそ笑みながら、微かに震えるミランダを愛おしそうに見つめた。

「・・怖いかい?」

優しい問いかけに、ミランダはふるふると首を横に振る。

怖くて震えているのではない。
見られていると思うだけで、胸に湧き上がる不思議な喜びに身体が反応してしまうのだ。

(私・・おかしいわ・・)

見られているだけなのに、なだらかに呼吸が荒くなる。視姦に耐えるうちに興奮してしまう自分に、ミランダは困惑していた。

「こうやって・・陽の光の中で見ると、ミランダの肌はなんて綺麗なんだろう」

ティエドールの両手が撫でるように、乳房や腰の括れをなぞっていく。

「・・っ・・はぁ・・」

触れながら、じっくりと見られているのを感じると、ミランダの細い喉に唾が通る。
ショーツに手をかけられ、ゆっくりとずらすように下ろされると、ミランダは恥ずかしさに下唇を噛み締めた。

「おや?」

ティエドールの声にビク、と反応して肌が薄桃色に染まる。

「・・こんなに、濡れている」
「・・!」

溢れ出る蜜を掬うように指で撫で上げられると、ミランダの身体に電流のような物が走った。
指は蜜を確かめるように軽く入口をなぞっただけで、すぐに離されてしまい。それが物足りなくて、ミランダは思わず切なげなため息をもらした。
ティエドールは宥めるような優しい声で、

「まだもう少し、我慢するんだよ」

そう言ってミランダを抱き上げると、くるりと身体を反転させられて机に手をつくように立たせられた。

目隠しをされているのでミランダには分からないが、
ティエドールは背後にいて自身のベルトを外し、ズボンを脱いでいるようだ。

ミランダは奇妙な期待と不安を感じながら、手をついたまま立っていると、ふいに背後から乳房を持ち上げるように揉みしだかれる。

「あっ・・!」

背中にぴったりとティエドールの胸があたり、抱きしめられるように強く揉まれ、乳首をキュウと捻られる。

「はぁ・・んっ」

うなじに這うような舌の感触がして、耐え切れずに机に前のめりに肘をつくと、尻に硬いものが当たった。
それがティエドールの熱い隠茎だと感じると、ミランダは焦がれるように切ない気持ちになり、胸がときめいた。
背後から耳たぶを転がすように舐められ、

「欲しいかい・・?」

少しだけ意地悪に囁かれる。
耳元で感じた声に、ミランダは背中が粟立つような痺れを感じていた。
尻を撫でるように、ティエドールのそれはミランダを刺激する。

「・・・っ・・」

硬くて熱い、触れられているだけで火傷しそうで、ミランダは口腔に溜まる唾液をゴクン、と飲み込んだ。

欲しい。
と、はしたなく声に出してしまいそうになる。

理性がはち切れて麻痺してしまいそうで、ミランダは苦しくて指を噛むと、ふいに、溢れた蜜で濡れてた太股にティエドールの熱い塊を感じた。

「・・・?」

ショーツを膝まで下ろされると、ティエドールは自らの隠茎を挿入することなく、ミランダの花唇に宛がう。

「素直に言わないなんて・・いけない子だ」

ティエドールが甘い囁きをしながらミランダの腰を持ち、ゆっくりと摩り上げた。

「っ!・・あぁっ」

太股に挟むように直接秘部を摩擦されて、その刺激に足が震える。さっきから溢れている蜜がティエドールのを濡らし、淫靡な音を発していた。

机に肘をつき腰を突き出すような格好で、ガクガクと揺さぶられると、あまりの刺激に目の奥がじんじんと痺れて、目隠しの布が涙で濡れる。
クチュ、と唐突に指を一本入れられて甘いストロークをされると、ミランダは耐え切れず声を上げた。

「あぁぁんっ・・!」

背中をのけ反るように身体を震わせると、背後から強く抱き締められ、顎を掴み突然口づけをされる。
ティエドールらしくない性急な、荒い口づけ。やや強引に舌が割り入れられる感覚に目眩がした。

「・・ミランダ、愛しているよ」
「げん・・す、い」

胸が熱く、狂おしくなって、想いが止まらない。ミランダは知らずに自分から舌を絡ませ始める。

もう何も考えられない。

いつもより大胆に、ティエドールの舌に絡み付いてしまう自分が信じられなくて。ミランダは麻痺する頭の片隅で、目隠しのせいかもしれないとぼんやり考えていた。

見えないから、もっと感じたくて。もっと、繋がりたいと願ってしまう。

「僕が、欲しいかい?」

くすぐるような甘い囁きに、喉の奥がキュウと締め付けられた。

(・・・・)

欲しくてたまらない。
身体だけじゃない、心も、何もかも。
ティエドールという、この彼の全てが欲しくてたまらない。

「・・欲し、い・・です」

ミランダは掠れがちに、言う。

「元帥が・・欲しいです・・」

涙声で、震えるように呟いた。

「・・ミランダ・・」

ティエドールは目隠しの布をスルリと外し、ミランダの濡れた瞳に確かに隷属の光を見ると、愛おしそうに目を細めながら。

「すべては・・キミのものだ」

そのまま背後から、襞をめくり一気に貫いた。

「はっ・・あぁぁっ!」

全身に電流が駆け上がるような衝撃を襲い、ミランダは前のめりに倒れる。ティエドールはミランダの腰をがっちりと押さえながら、叩きつけるように自身の腰を動かしていた。

「はぁんっ・・あぁっ!」

足がガクガクと震えて、支えていた手に力が入らない。突き上げるティエドールの勢いは休む事なく、ミランダを責め立てる。

「ああ・・すごい・・ミランダ、気持ちいいよ」

うっとりとした声が、背後から覆いかぶさるように耳元で聞こえて。ミランダは耐え切れず、滑るようにずるずると机に顔をつけたが、崩れるように床に落ちた。

「あ・・ぁんっ!」

絨毯に四つん這いになるがそれも崩れ、頬を床につけ腰を高く掲げる、はしたない格好でミランダは快楽にのまれていく。
繋がった部分が熱くて、溶けてしまいそう。暴れる彼の一部が愛しくてたまらない。肌と肌が擦れ合う音が、何かの音楽のように心地良くて。

ミランダはティエドールの動きに、甘い鳴き声を上げた。奥をくすぐるように細かく突き上げられ、全身に鳥肌が立つほどの快楽に支配される。

「げ、ん・・すい・・!」

助けを求めるように、彼を呼べば。背後から救い上げるように抱きしめられて。その腕に抱かれながら、ミランダは涙が出そうになる。

この快楽も、総て彼が教えてくれた。
切ない気持ちも、愛しくてたまらないこの想いも。

「・・好き、げ・・んす・・」

掠れた声で。

「元帥・・好き、です・・」

抱きしめられた腕に頬を寄せながら、繰り返し呟くと、耳元でティエドールが、は、と息をもらしたのが聞こえた。

「・・・本当に、可愛い子だ」

たまらない甘い囁きが聞こえて、後ろから抱きしめられながらさらに深く貫かれると。

「っ・・あぁぁっん!」

白い絶頂がミランダを包んで。ティエドールの腕がミランダを閉じ込めるように、強く抱きしめる。
それは一瞬、檻のように自分がティエドールに囚われている感覚で。

それは、言葉にならないくらい幸せだった。



薄れゆく意識の中、午後の日差しに溶け合うような二人の影に、ミランダはうっとりと、まるで絵のようにそれを見つめるのだった。







End





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