D.gray-man
指と熱
「えっ、本当にまだなの?」
夕食が終わり、ミランダとリナリーはデザートを食べながらたわいもない話をしていたが、どこからどうなっていったか話の流れはマリとミランダの関係へと発展していった。
「そ、そんなにおかしいかしら・・」
「だって、付き合って半年以上たつのにおやすみのキスだけって・・」
「・・・・・・」
リナリーは周囲を見回し、近くに誰もいない事を確認すると、コホンと小さく咳ばらいをした。
「あの・・・ミランダ、気を悪くしないでね・・・その、あの、マリは初めてじゃないと思うの」
「?なにが?」
「その・・女性経験・・」
「!?」
ミランダの顔が青ざめる。
「だから、もうてっきりミランダとそういう関係だと思ってたんだけど・・・」
リナリーはちょっと気まずそうにして、それからあわててゴメン忘れて、と言った。
その後、会話は前の任務や新しくなった団服へと変化し、ミランダが部屋へ戻ったのは夜も9時を回っていた。
ミランダは寝間着に着替え、タイムレコードの手入れをしていた。ふう、とため息をつく。
今日はマリに会っていない。とくに約束しているわけではなかったが任務がない時はどちらともなく会いに行っていた。
ふいにリナリーの言葉を思い出す。確かに、ミランダもマリがあまりに恋人としての距離が遠い気がしていた。
甘い言葉をささやく訳でもなく、キスもおやすみの前に触れるだけのものだ。
(本当に付き合っているのかしら)
もちろんマリは優しい。優しすぎるほど、ミランダを大事にしてくれる。
(でも・・・)
リナリーが言った言葉をまた思い出す。
『マリは初めてじゃないと思うの』
胸がキュッと締め付けられる。頭ではわかっている、過去に嫉妬しても仕方ないと。でも、自分が彼と経験していない事をした人がいる。彼の体温や、息遣いを体感した人がいるのだ。
時計は10時近くなっている。
もう今日はマリは来ないだろう、9時半以降にあの遠慮がちなノックは聞いた事がなかった。
マリが自室に戻ったのは10時半を回っていた。
今日はバタバタと忙しい一日だった。
午前中は科学班の手伝いや師匠のティエドール元帥の用事があり、それが済むと待ち構えてたように神田やアレン達の修練を付き合うことになった。
結局、風呂に入ってこの時間になってしまった。
(もうミランダは寝ているだろうな)
ミランダの部屋の前に少し立ち止まるが、ゆっくりと自室へ歩き始めた。
彼女の声を聞きたかったな、と思いながら自室のドアを開ける。開けた瞬間、不思議な違和感を感じた。
(部屋を間違えたか?いや、そんなはずは・・しかし、これはどう考えても・・・)
ミランダがいる。
「ミランダ?どうしたんだ?」
ミランダは少し震えているようだった。
「ごめんなさい、マリさん・・・私・・」
「何かあったのか?」
ミランダの肩にそっと触れると、マリはその滑らかな感触に心臓が飛び出るほど驚いた。
ミランダはベッドの中にいた。 裸で。
シーツで身体を包み、もじもじと太腿をすりあわせる。
「ま・・待ってたんです」
震えがちに呟くその声はまちがいなく愛しいひとのもので、マリは心が波立つのを感じた。
「き、今日は・・あ、朝まで一緒に・・マリさん」
(いったいどうしたんだ、ミランダがこんなことを言うなんて)
マリは努めて理性的に振る舞おうと考えた。
おそらく、ミランダに何かあったのだ、そして少し自暴自棄になっているのだろう。
少し、距離をもちつつベッドに腰掛ける。シーツごしにミランダの足が触れた。
「何かあったのか?」
優しく、静かな声音。
ミランダは首をブンブンと振る。
「私と、マリさんは・・その・・恋人なんですよね?」
「ああ、もちろん」
改まって聞かれると照れるが、マリにとってミランダは唯一無二の存在だ。
ミランダの心音が急に速くなったかと思うと、マリの胸元に転がるように抱き着いてきた。
「私・・・心配でっ、マリさんと、もっと・・・もっと一緒に・・・いたい」
フワリと、カモミールのような優しい香りがマリの鼻孔をくすぐる。
滑らかな肌は、緊張のためか少し冷たかった。シーツごしとはいえ、細い身体によく実った果実のような胸がマリの腕に触れる。
「ミランダ・・・」
めまいがする。マリも男だ。この局面にぐらつかないはずはない。しかし、最後の理性がそれを留める。
マリは男として、このままなし崩しに事に及ぶことが二人の為になるとは思えなかった。
気付かれぬよう生唾を飲みつつ、ミランダからゆっくり離れようとした。
その時。
唇にやわらかな感触を覚える。
初めてミランダからの口づけだった。
戸惑いがちに、そっと触れる。吐息がかすかに漏れ、ちゅ、と音がした。
マリの脳が痺れるような感覚を起こし、麻痺したようにミランダの口づけを受け入れた。
最後の理性の壁も砕け、本能のまま、ミランダを縫い付けるように抱きしめると、そのまま深く、深く、絡ませるようにミランダの唇を貪った。
「は・・あう、ん・・」
うっとりとした声が漏れる。その声だけでマリの下半身は熱く、窮屈になる。
のしかかるように、ミランダを覆い、白く柔らかい首筋に舌をはわし、そのまま鎖骨をなぞる。
「あ・・ん、マリ、さん・・」
マリはそのごつごつした手のひらでミランダの柔らかなふくらみをそっと包み込んだ。
細い身体のなかで、そのふくらみは充分な程の弾力があり、マリは以前ラビがミランダを
『あの身体は反則』と言っていた事が頭をよぎった。
指先で形をたしかめ、尖端に吸い付く。ほのかに甘い味がした。
ミランダは恥ずかしそうに身をよじりつつ、快楽に耐え切れないように、途切れ途切れに声を洩らした。
背中のラインを舌でなぞられ繊細な指のタッチが肩やうなじ、肩甲骨、あらゆる括れを触れる。
そのつどミランダは声が洩れそうになり歯を食いしばる。
(楽器みたい・・・)
マリの指先はまるで楽器を弾くようにミランダの身体をなぞる。時に強く、時に優しく。指先で、会話するように。
マリはミランダのすべてを確かめる。
触れられるたび、そこから熱が発した。マリの指先から愛をささやかれているようだ。
「マリさん、マリさん・・」
どうしようもなく、切なかった。ミランダはうわごとのように、マリの名前を呼んだ。
ミランダの秘所はもう充分な湿りをおびて、熱くほてっていて。マリが花芯にそっと触れると、ミランダの身体が小刻みに痙攣した。
ゆっくりと指を入れる。
キツイ。
(やはり、そうか)
確認しなくても分かっていたがミランダは処女だ。マリは心のうちでそっと微笑む。
(それならば、もっとほぐさねばならんな・・)
マリはミランダの足を広げ、そのまま秘所に舌をはわした。
「あっ!・・マ、マリさん・・いや、汚い・・」
ミランダが慌てるが、マリはがっちり両足を抑えているので身動きがとれない。
ジュル、ピチャ、クチュ、
いかがわしい音が、ミランダの秘所から聞こえる。マリがそれをやっているというだけで、ミランダは気絶しそうに恥ずかしい。
しかし、その羞恥とは別に身体は素直に反応していた。
「ああっ・・・やっんっ!そんなっ・・・」
声を出さないように、両手で口を抑えようとしたとき、その手をそっと封じられた。
「声を聞かせて・・そのままで・・」
「・・えっ・・」
上気した息遣いがたまらなかった。こんな音は聞いたことがない。
そのままマリはミランダの秘所に、指を挿し入れてゆっくりと律動させた。
「は・・あぁ・・なにか、変です・・そんな・・あ、あ、あぁああっ・・!」
マリの指が速くなり、グチャ、プチュ、と溢れる雫がマリの左手を濡らした。
ミランダの秘所がキュウッと強くマリの指を締め付けたと思うと、ビクンビクンと身体を痙攣させた。
(達したか・・)
うつろな表情のミランダに深く口づけして、マリはゆっくりと上体を起こした。
(今なら、間に合う・・)
どこかで理性の声がした。
(しかし)
マリは、知ってしまった。ミランダの柔らかな肉を。
引き返すことは、できなかった。
(ミランダが欲しい・・)
「すまない、ミランダ・・・」
マリは自身をミランダの秘所にあてがうと、グッと強引に挿し込んだ。
「!!?・・・くっ、」
ミランダが苦悶の表情を浮かべ、助けを求めるようにマリの背中へ手を延ばす。
「ふ・・・んっ!・・ミランダの中はキツイ・・な・・」
拒絶するように、締め付けるくせに、そのくせ引きずり込むようにマリを誘う。
(まるで麻薬だ・・)
脳内が痺れる。
ミランダの声が吐息が、マリの理性を奪っていく。初めてのミランダを気遣うつもりであったのに、それどころではない。
何度か押し広げるように、グッ、グッと差し込み、そのたびに襞が絡まるようにうごめく。
「ぐっ・・・ミランダ、大丈夫、か?」
ミランダはふるふると首を振る。
引き裂かれるような痛みとともに圧迫感が凄かった。苦しくて息もできないくらい。
マリがミランダの中で暴れる、壊されてしまいそうだ。
だが、マリの荒々しい息遣いと男の匂いに、ミランダは涙がでるほど幸せだった。
全身でマリを感じる。
体温も、汗も、声も、ミランダのものだ。
ガクガクと揺さぶられ、マリはより深く繋がろうとミランダの足を自身の肩にのせる。
室内に淫靡な音と吐息が洩れる。
「あっ・・ふぅん・・」
ミランダの声音が変わってきた事にマリは気付いていた。
ヒクヒクと収縮して、熱い。火傷するのではないかと思う。マリはもう余裕がなくなっていた。
ミランダを再び達せるためより速く、腰を打ち付ける。
「あっ・・・うそっ!あっ、もうっ・・だ、だめぇっ・・!」
ミランダは縋り付くようにマリの背中に爪を立てる。
「こっちも限界・・だっ・・くっ・・!」
とっさに自身を引き抜いてミランダの腹部へ発した。
(危ないところだった)
「す、すまない。ミランダ、汚してしまった・・」
慌てて、そばにあったタオルで拭う。
「ミランダ?」
返事がないので不信に思って見る。ミランダは泣いているようだった。
「マリ、さん・・・」
震えがちにマリの指先に自身の指をはわす。
マリはミランダを傷つけたかと焦る。
(やはり、まずかったか)
「ミランダ、こういう流れは確かにいいことでは・・しかし」
「・・しあわせ」
「しかし・・え?何だって?」
「すごく、しあわせ、です・・。」
ミランダの言葉に、マリは安堵しつつ、その胸にはあたたかいものが広がっていった。
「わたしもだ・・」
優しく、守るようにミランダを抱きしめる。
「実は・・私」
「?」
ミランダはもじもじとして、いいずらそうだ。
「その・・マリさんが、女性経験あるって聞いて・・・嫉妬、しちゃって・・それで」
「!?」
マリが慌てる。
「どこから、そんな話を・・」
おおかた科学班あたりからもれたのだろう。
かなり昔、酒の席で白状させられた事があったから。
「・・・おぼえていないくらい、昔のことだ」
気まずそうに呟く。ミランダは恥ずかしそうにマリの胸に顔を埋めながら告げる。
「もう、いいの・・今が、しあわせ・・。」
マリはそんなミランダがいじらしく、ミランダの言葉を受け止めたように、深く、唇を貪った。
夜は、まだ長い・・。
End
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