D.gray-man


3



下着姿のまま。

ソファーの上で押さえ付けられるように、何度も何度も繰り返される口づけに、ミランダの頭はゆっくりと麻痺していく。
すべてを吸い取られるような不思議な感覚を覚えながら、ミランダの身体から力が抜けて。

(・・あ・・)

ビスチェの金具が外されていくのを感じた。
器用に指が一度も止まる事なくするりと外されると、ミランダの白い乳房がこぼれるように現れる。硬くて大きな掌に包むように触れられ、ミランダは吐息をもらした。

「ああ・・可愛いよ」

首筋に舌を這わせ、舌が撫でるように頬を辿るとそのまま耳たぶに吸い付く。チュウと吸われた後、耳穴に舌を入れられてじっとりと舐められた。

「・・ぅ・・」

思わず身を固くしてしまう。
指が、つつと乳房の尖端に触れて捻るように摘まれると、ビリリと電流が身体を走るのを感じ、熱い吐息がもれた。

「は・・ぁんっ」

ティエドールの舌がちろりと乳首を舐めて、ミランダの赤らんだ顔を確認すると。

「・・ミランダは敏感なんだねぇ」

ふ、と笑う声がした。

「そ・・んな・・」

舌先で転がすように舐められ、突かれる。ティエドールの手に寄せられるように乳房を揉まれ、ミランダは羞恥からきゅ、と目を閉じた。
吸い付くように口に含まれ、チュウ、チュパと音を発しながら乳首を転がす。
ティエドールの髭が乳房に感じると、今更ながら元帥とこういった行為に及んでいる事が不思議でドキドキしてしまう。

(・・・・・)

うっすらと瞳を開けると、ティエドールの髪が目に入り。独特の癖の強い茶色い髪。触れてみると、意外に柔らかくて少し驚いた。

「・・?」

不思議そうに顔を向けられているのに気がついて、

「あ・・い、いえ、ごめんなさい」

慌てて離すと、その手を取られ手袋ごしにキスをされた。

「・・嬉しいよ、触られるのは大好きだから」

手袋を取られて、指を舐められる。舌が指の股をなぞると、その奇妙な感覚にゾクゾクとした。
ごく、と唾を飲み込んで。熱っぽい瞳のままティエドールを見ると、彼もまた、熱を含んだ瞳でミランダを見つめていた。

(・・あ・・)

ドキドキする。
薄暗い部屋の陰影のせいか、眼鏡のないその顔に鋭い牡の表情が見えた。

(・・・・)

眩しいような感覚に、耐えられなくて目を反らす。ふと、ティエドールの身体が離れたのを感じ、ミランダは反らした視線を戻すと、ティエドールはソファーから立ち上がり、やや乱暴な動作で衣服を脱いでいた。
絵の具の染みた作業衣のような服を脱ぐと、使い込まれた筋肉の立派な体躯が見えて、

(・・!)

逃げるように再び目を反らしていた。

(ほんとうに・・いいのかしら)

口元で拳を握りしめ、いまさらな事が頭を過ぎる。ティエドールの裸を見てもう引き返せないのを覚ったからか、急に怖くなって。

(・・・・・)

ティエドールが再びミランダの上に覆いかぶさる、畏れるように目をつぶった。

「・・ミランダ」

頬を撫でられ、耳元で名を呼ばれる。

「・・・・」
「大丈夫だよ・・大丈夫」

そっと口づけされて。

「・・ミランダ?」

優しい声にゆっくりと瞼を開くと、ティエドールが潤んだ瞳でこちらを見下ろしているのが見えた。

「元帥・・?」
「心配しなくて大丈夫だよ」

そう呟く彼は泣きそうな顔をしていて。

「どうしたんですか・・?」
「君が・・あんまり綺麗だから」
「・・え?」
「感動しているんだ・・」

そのまま、ぎゅうと抱きしめられる。肌と肌が重なる感触がして。温かくも硬い肌に包まれるのは、なぜかとても気持ち良かった。

(・・・・)

何気なく背中に添えた手が、でこぼこと隆起した何かに触れて、それが傷跡だと分かり僅かに目を見開く。

(・・大きな傷)

ミランダを抱きしめるその腕、その肩にも傷跡があるのが見えた。古くて皮膚が軽く引き攣れただけの傷や、比較的新しくてまだ赤みを帯びているのもある。

「・・・・・」

なぜか急に胸が締め付けられるように切なくなってしまって、ミランダは目の前にあるティエドールの傷跡に、そっと唇を寄せた。

(・・あ)

はた、と。自分の行動に驚いて目を見開く。

「ミランダ」
「あ、あの・・ごめんなさい・・」

カアッと顔が熱くなって、ティエドールの肩に隠れるように身を縮めると、掬い上げるように抱きしめられ、ミランダはティエドールの身体に包まれていた。
あ、と声を出す暇もなく唇を塞がれると、貪るように口腔を蹂躙していく。

(!)

舌が何かの生き物のように、ミランダの舌に絡み付いて呼吸ができない。

「もう・・あんな可愛い事されたら制御できないでしょ」
「?」

荒い息のままティエドールを見上げる。

「・・またそんな可愛い顔して・・」
「え?・・あ、はんっ・・!」

ティエドールの指が、下着の上から秘部をするりと摩る。
もうじんわりと湿りを帯びているのが分かっていて、ミランダは恥ずかしさに身体を捻らせた。
けれど指は、花唇をショーツの上からなぞりつつ、1番敏感な突起を捕らえて爪で引っ掻くように刺激を与えてくる。

「ぁっ・・」

強く抱きしめられているから身動きがとれない。ティエドールの胸に縫い付けられて、熱いため息がもれた。
片脚をくいと上げられて、濡らされたショーツをするりと脱がされる。外気に触れたせいか、ひんやりとした冷たさを感じたが、すぐに硬い指に触れられて熱を取り戻していった。

「あ・・ゃぁっ・・」
「可愛い声だ・・」

耳元で囁かれて、眩暈がする。
クプ、と浅く指を差し入れられると、まるで合図のように蜜が溢れ出してきて。
クチュリ、と軽く掻き回しヌメリを指に絡ませると、指はミランダの敏感な突起へと動いた。
蜜が潤滑油のように突起を擦りつけると、感電したようにビクビクと身体が震えてしまい、

「あっ、ああんっ・・げんす・・!」

助けを求めるように、縋り付いた。

ティエドールはミランダの耳たぶを転がすように舐めると、快楽に上気した彼女の頬にキスをした。

「素敵だよ・・とても、素晴らしい」

ソファーから落ちないように抱きしめながら、その指は人差し指で突起を擦り、中指は花唇をそっと開く。

「・・はぁ・・んっ」
「ああ、こんなに濡れている・・」

感嘆するように。
花唇をめくり、溢れて止まらない蜜壷に指が触れると、はしたなくもミランダは、応えるように腰を浮かした。
ヒクつく入口を撫でるように弄ると、焦らすように浅く掻き回す。

「・・ぁあんっ」
「入口だけで・・こんなに熱い」

そう囁く声も、掠れていて。彼もまた自身の熱に浮かされているのだと感じた。

「・・中は・・」

言いながら第一関節しか入れていなかった中指を、第二関節まで進める。
キュウ、と締め付けを指に感じてティエドールは応えるように指をく、と曲げて膣璧を擦りあげた。

「あっ・・やぁ・・!」

甘く鳴きながら、声を抑えるように唇を噛み締める。ティエドールの指腹が微細な動きで、探り当てるようにして一部分を攻めると、ミランダは耐え難くて、涙目で懇願するようにティエドールを見つめた。

「だ・・だめっ・・やぁ・・」

痺れるような何かが沸き上がるような、かつてない感覚。ティエドールはうっとりと目を細めながら、

「ああ・・なんて顔をするんだい」

指をぐ、と根元まで差し入れると璧の上部を擦りながら滑らかに出し入れをした。

「あぁぁんっ・・!」

鳥肌が立つような快感が全身を支配してくる。どうしようもないくらい気持ち良くて、頭がぼうっとしてしまう。

「・・ミランダ」

口づけをされて、舌が指と同じリズムで口腔を蹂躙されていると、それに合わせるように、知らずにミランダの舌も拙い動きで応えていた。

「んっ・・ん・・」

指を動かされるたびにもれる淫靡な水音が室内に響いて、自分の中から何かが駆け抜けるような感覚に、ミランダはティエドールの背中にしがみついた。

「あぁぁっ・・!」

絶頂感に目の前が白くなって、脚先が痙攣する。ビクンビクンと膣璧が収縮を始め、その指を締め付けていった。
身体の力が抜けて絶頂に白んだ頭のまま、くたりと横たわったままでいると、ティエドールがゆっくり離れていくのをぼんやりと覚った。

(・・?・・)

ふいに、右足首を持ち上げられたような気がして、太股に温かな感触を覚える。
すぐにそれがティエドールの舌だと分かり、

「ぇ・・げん・・す・・?」

舌は太股をなぞり、頬ずりするようにキスをして。やがてゆっくりと辿るように秘部へと向かった。

「!・・あっ、き汚いです・・」

抵抗するように、まだ言うことのきかない身体を捻ると、それを許さないように両脚首を持ち上げ、脚を肩にかけるとがっちりと太股を押さえ付ける。

「・・花びらみたいだ」
「・・ぃ・・ぃゃあっ」

持ち上げられるように、腰が浮いて。
その場所を彼の鼻先に晒しているのが恥ずかしくて泣きそうになった。
生暖かい舌が花唇をめくるように動くと、先程達したばかりで敏感になったそこは、再びヒクつき始める。
ジュル、と何かを啜る音がして。それが溢れて止まらない自分の蜜だと覚ると、ミランダは恥ずかしさに顔を両手で覆った。

「・・溢れてとまらないな・・」

ティエドールの独り言のような声が聞こえる。舌は襞をなぞりながら、敏感になっている突起をチョロチョロと舐めた。

「!・・は・・あぁ・・んっ」

腰がビクビクと震えて、意識しないまま身体が反応してしまうのが恐ろしい。チュウ、と吸い付くように突起を刺激されると、ミランダはたまらず小さく叫んだ。

「あぁぁぁっ・・!!」

自分でもわかるくらい、秘部に熱を感じる。突起を刺激されると入口がヒクヒクと蠢いて、触れて欲しくてたまらない。
ティエドールはがっちりとミランダの太股を抱えると、溢れ出す蜜をすべて舐め尽くすように唇をぴたりと合わせた。

「や・・あぁっ!だ、だめぇっ・・!」

再び感じる絶頂の予感から逃げるように、手を伸ばし頭上のクッションを掴もうとするが、押し寄せる波のような快感に引きずられ、その手は空を掴むだけだった。

「あっああああんっ・・!!」

生き物が這うように舌が動き、微かな刺激にも耐えられない突起を強く吸い上げると、再び至上の快感がミランダを駆け抜けて、何かがパァンと弾けたような音が聞こえた。




「・・はぁ・・はぁ・・」


もう何度達したか、わからない。
ティエドールの執拗な指と舌の責めに、ミランダは意識を保っているのが不思議なくらいだった。

汗ばんだ肌を舐められ、辿るように乳首に吸い付くと、硬くなったそれに軽く歯をあてる。ミランダは微かに震えるが声も出せず、切なげにため息をもらした。

「・・ああ、ほんとうに・・」

ふと見上げると、ティエドールがうっとりと酔うような顔でミランダを見ているのに気がついて。

(・・?・・)

「君は・・ほんとうに・・美しい」

造形を確かめるように、顔を撫でられる。

「独り占めしたくなる・・」
「げ、んす・・?」

ティエドールが首筋に吸い付きながらミランダの片脚をく、と曲げる。太股に硬い何かが当たり、ミランダはその予感になぜか胸が甘く疼いた。
ごく、と喉が鳴って。

「・・ミランダ、愛しているよ」
「・・・・・・」

胸が高鳴り、期待してしまう自分がいる。
ティエドールの熱塊がミランダの花唇にそっと宛がわれると、衝撃に耐えるように目をつむった。
クチ、と音がして。先端が蜜壷に触れただけで、ぞわぞわとした快感に鳥肌が立つ。

「・・聞いてもいいかい?」

耳元で低く囁かれて、ミランダはぴく、と反応するように見上げた。

「僕を、愛している?」

その声は懇願するようなものではない。どこか命令のような、確信犯のような感じがあった。

「言ってくれないか?愛していると・・」

甘く、誘うように。
クチュと花唇に含ませた陰茎を、数センチ進めて小さく出し入れする。

「・・ぁぁ・・はぁっ」
「ミランダ・・」

耳たぶに吸い付いて、ピチャピチャとねぶった。

「ああん・・げん・・す・・いっ・・」

足りなくて。
足りなくて、もっともっとと腰が動いてしまう。
願うようにティエドールを見れば、彼は目を細めるようにミランダを見ている。

(・・元帥・・)

快楽に流されたのか、はたまた本心なのか。
胸が焦がれるように、ティエドールをうっとりと見つめている自分に気がついた。

ときめくような、胸の高鳴りを感じて。

「・・元、帥・・」

頬へそっと手をあてると、

「・・愛して・・ます」
「ミランダ・・」
「愛し、てます・・」

掠れた声でうわごとのように呟いた。
ティエドールが一瞬満足そうに、僅かに口の端を上げた気がしたが、すぐにいつもの優しい微笑に変わり、そのまま深く口づけをされた。

「ん・・・はぁ・・」
「本当に・・可愛い子だ・・」

優しく舌を絡ませながら、ティエドールはミランダの腰を持ち上げる。

「じゃあ・・これで一緒だ」

張り詰めて硬くなった自身を2、3回擦るように動かすと、そのまま一気に貫いた。

「!!・・」

衝撃に顔をしかめるも、十分に潤っていたそこは初めての性行為とは思えぬ程の快感をもたらす。

「あぁぁっ・・!はあぁんっ!」
「あれだけ・・解したのに・・まだ堅さがあるね・・痛いかい?」

気遣いながらも、少し苦しげに眉を寄せる。
首を振りながらティエドールを見上げると、慈しみの瞳に微かに支配者の色を滲ませながら、ミランダを心底愛おしそうに見下ろしていて。
それはミランダが知っている『元帥』ではなかったが目眩するほど、ときめいた。

「あぁっ!は・・ああんっ!やぁ・・」
「・・ミランダ・・ッ」

情熱的な激しい突き上げに否応なしに、身体が反応して。
グチュ、グチュという水音や肌が摩擦する音、ソファーの古いスプリングが軋む音。

そして二人の荒い吐息が混ざり合い、薄暗い室内にそれらが響き渡ると、媚薬のように頭の一部が麻痺してきて。ミランダは火のように熱い、奥から溢れる絶頂の予感に震えながら、ティエドールの胸に縋り付いたのだった。








何かが聞こえて。

シュ、シュ、と聞き覚えのある音。


(・・・音?)




うっすらと瞼を開けると、ティエドールはいなかった。

(・・?)

身体が重たくて、なかなか起き上がれない。今は何時なのだろう、知らないうちに意識を失っていたらしい。
ソファーから身を起こすと、上にかけられていたブランケットがするりと落ちた。

「起きたのかい?」

突然の声に、びくと震えて。

「げ・・元帥・・」

なんとなく、気恥ずかしくて目を逸らす。
ティエドールはもう服を着ていて。筆を持っているところを見ると絵でも描いていたのだろうか。

(さっきの音は・・絵筆かしら?)

「・・身体、大丈夫かい?」
「は・・はい」

何も着ていないのに気がついて、ブランケットを慌てて拾い纏うと、ティエドールが残念そうに口を尖らせて、

「もったいない・・隠してしまうのかい?」
「え、で・・でも」

赤くなってもじもじと、ソファーの上で身体を小さくする。
ティエドールは筆を置いて、ミランダの隣に腰掛けるとニッコリ笑いながら、

「僕の前ではいつも裸でいて欲しいな」
「えっ!?」
「嘘だよ」
「えっ?はっはい?」
「ほんと可愛いねぇ、ミランダは」

イイコイイコと頭を撫でられる。

「・・・・」
「ごめんよ、無理させちゃったかな?」

頭に置いた手を頬へと滑らせ、優しく撫でて。ミランダは困ったように眉をよせるが、考えるように俯いて。小さく「いいえ」と呟いた。

「そうかい?よかった」

ホッとしたように笑う。

「あんまり無理させたくなくて、僕なりにセーブしてたんだ」

頭を掻く。

「え」
(あ・・あれで!?)

「ミランダは初めてだし、一応気を使ったんだけど・・物足りなくはなかったかい?」

うーん、と考え込んで心配そうにこちらを見て。ミランダは顔を引き攣らせながらブンブンと首を振る。

「と、とと、とんでもないっ・・」
「こういう事は大切だから、隠し事はなしだよ?」
「は、はい・・全然、全く、十二分に!」

コクコクと急いで頷いた。ティエドールはミランダの手をぎゅ、と握ると

「・・僕は歳もあるから一晩に何回も出来ないけど・・技術でカバーするからね」

だから大丈夫だよ、と語るその瞳は真剣そのもので。

(・・・・・・)

もう少し手加減して欲しいくらいだと、ミランダは言えなかった。


そして、この時。


ミランダの肖像画がさらに妖艶さを増して描き直されていたのだが。
彼女がそれを見て、芸術家の恋人を持つ苦難に気づくのは、まだまだ暫く後の事である。







End

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(D.gray-man....)





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