D.gray-man
2
こういう事かと、ミランダを抱きしめてマリは覚る。
ここまで来るまでに、どうにも彼女を噂する声がそこかしこから聞こえていたと思ったら。
(確かに、これは・・)
胸元が開いているのはもとより、背中までも露出気味で。特に普段それほど肌の露出が少ないミランダだからこそ、男の目を引くのだ。
マリは、急にミランダがいなくなり慌てた様子のラビに心で詫びをつつ、ミランダに合図のように片目をつむると。
そっと、抱き上げて、さらに通路の陰に隠れながら歩きだした。
『ラビ、ミランダ見なかった?』
『あれ?リナリーが連れてったんじゃねぇの?』
『え?私はパーティーにミランダ誘いに行ったら、部屋にいなかったから・・』
『えっ・・俺てっきり』
『何よ、何の事?』
そんな会話が耳に入りながら。
人より優れた聴覚を駆使して、マリは誰にも気付かれる事なく、ある部屋へとミランダを連れて行く。
そこは、こんな日には誰も使わない小会議室。入るなり、カチャリと鍵を閉めて。
マリはミランダを椅子ではなく会議用の机に座らせると、自身のコートを脱いでミランダに羽織らせた。
「少し寒いな・・今暖炉に火を入れよう」
「あ・・あの、マリさん?」
ミランダは何が何だかわからずに、戸惑うようにマリを見ている。マリはその視線に応えるように微笑すると、何か言おうと口を開いたが、それをやめて暖炉へと向かった。
暖炉に火が大きく燃え始めて、室内が暖かくなってきたのを感じると、マリはミランダの側へと近寄りそっと、頬に触れる。
「・・ただいま」
大きくて温かい手に、ミランダは安心したように笑うとその手に自分の指を添えた。
「お帰りなさい・・マリさん」
「驚いただろう?」
「は・・はい」
マリが帰っていた事もそうだが、突然連れ去られるようにここへ来たのも。ミランダは不思議そうにマリを見て、
「あの・・マリさん、パーティーに出なくてもいいんですか?」
「パーティーには、出るさ。」
「え・・?」
「年が明けたらな」
マリは屈んで、そっとミランダを抱きしめた。
時刻はもう11時。普段忙しい科学班の面々も、ようやく仕事納めという所だろう。続々と食堂へと集まっていく面々を考えて、マリは安堵のため息をもらした。
(・・間に合って、よかった)
先程の様子を思い出すと、マリは背中に冷たいものが走る。ラビがいなければ、ミランダは何の疑いも持たずにペックに連れて行かれた所だ。
「ミランダ、その・・今日のドレスはどうしたんだ?」
「あ・・これは、リナリーちゃんが・・用意してくれて」
もじもじと呟く。
「・・心配するじゃないか」
「え?」
マリはミランダの耳たぶに唇を寄せると、
「他所の男の目に触れられたくない・・」
「・・ぁっ・・」
チュ、と吸い付いた。
ミランダが座っている机は高さがあるので、いつも胸の位置にある彼女の顔が今日はマリの肩口にある。
マリの指先がミランダの首筋を撫でて、滑るように剥き出しの鎖骨を辿った。
「・・・こんなにも美しい線を、しているのだから」
「あ・・・マ、マリさん」
声が掠れて、うまく出ない。
マリの腕に抱かれながら、ミランダの心臓は早鐘のように鳴っていた。
部屋は暖炉の火と窓からの月明かりで、柔らかな光りに包まれている。なにか二人の間に漂う空気が艶めいたものを感じて、ミランダは恥ずかしそうに俯いた。
(え、ええと)
その時、扉の向こうから誰かの声が聞こえてミランダはビク、と震えた。
『おーい!ミランダーッ』
『ちょっとラビ、こんなとこにいる訳ないじゃない』
『いや、ミランダの事だから、迷ってこんなとこまで来てっかもしんねぇさ』
どうやらミランダを捜してくれているらしい。ちら、とマリを窺うが暗くて表情がよく読めなかった。
自分の為にこんな場所まで来てくれた事が申し訳なくて、返事をした方がいいのではないかと、迷っていると。
ふいに顎が持ち上げられて、そのままミランダの唇は塞がれた。
「・・!」
塞いだのがマリの唇だと覚り、ミランダの心臓が跳びはねる。
『ミーラーンーダーッ!』
『もうラビったら、この辺にはいないわよ。違う所を捜しましょ』
二人の声が耳に届きながらも、マリは口づけをやめない。
それどころか、貪るように熱を増しながらミランダの唇に吸い付いてくる。
(・・あ・・そ、そんな・・)
顔を動かしながら舌が割り入れられ、ミランダの舌を探り出すと、絡めとるように口腔を蹂躙されていく。
「ん・・っ・・はぁ」
脳の一部が麻痺するように、じんと痺れてきて。声がもれてしまった。
マリはコートをミランダの背にやや乱暴に敷くと、口づけで押し倒すように、ミランダをその上に寝かせる。
(えっ?)
まさか、と目を見開くと。マリはシィッと唇に指をあてて、片目をつむる。
『やっぱ、いねぇなぁ。違う所捜してみっか』
『部屋に戻ってるかもしれないわ、行ってみましょ』
『そうさね、行くか』
二人の声が遠ざかって行くのを耳にしながら、ミランダの首筋にマリの舌が這わされるのを感じた。
「・・ぁぁん、マ、マリさん・・ま、待って」
マリの肩に手を添えて少しだけ抵抗を見せると、マリはその手を取って、指先をペロリと舐めた。
そうして、再びミランダの唇を塞ぐように口づけをして、軽く咎めるように耳元で囁かれた。
「そんなドレスを着ていたら・・我慢できない」
(・・!)
剥き出しの鎖骨を舌先でなぞり、開いた背中からドレスを脱がせる。肩先に軽く歯をあてられ、甘い痛みが広がり、ミランダは吐息をもらした。
マリの指が器用にビスチェのホックを外して、ミランダの乳房が外気に触れると、乳首が固くなる。
尖端をそっと摘まれて、軽く拈られるので、ミランダはピク、と震えた。
「・・んっ・・」
そういえば、彼にこうされるのは久しぶりだ。ここの所お互い任務だったりして、時間の都合がつかず二週間は抱かれていない。
マリの唇が乳首を転がすように吸い付いた時、彼の刺激に馴染まされた体は簡単に応えはじめ、ミランダは羞恥の声を出した。
「あぁ・・はぁん」
マリの舌から発する刺激に、奥底から何かが疼いてきて。
耐え兼ねるように体を拈ると、マリは、ウエストの部分で引っ掛かっていたドレスを捲くり上げ、ショーツに手を掛けた。
スルッとそれを脱がせると、マリは団服姿のままミランダの太腿に吸い付く。チュウ、と強く吸われて。痕を遺したのに気付き、ミランダの胸に奇妙な喜びが広がった。
所有の証をつけられて、嬉しいなんて恥ずかしくて、口が裂けても言えないけれど。
マリは吸い付いた場所から舌先で辿るようにして、そろそろと秘所へ向かう。
(あ・・・っ)
目をつむる。
ジンジンと熱く痺れて、さっきから触れて欲しくてたまらない。熱い滴りが溢れてくるのを感じながら、彼を心待ちにしてしまう。
(・・・マリさん)
声をもらすまい、と唇に手をあてていても、はやく、はやく、と知らずに腰を浮かしていた。
マリの舌は太腿の付け根をなぞり、肝心な場所へは届かない。
(ああ・・そんな・・)
もどかしくて、たまらなくて。焦がれるようなため息をついた時、彼の指先が花唇をそうっとなぞった。
「!・・っ」
続けざまに浅く指を入れられると、滴りを掻き交ぜるように動かす。くちゅ、くぷ、と淫靡な水音が聞こえて。
「・・はぅん・・あぁぁ」
もっと、もっと深くへ。
もっと深い所へきて欲しい・・。浅い動きしかしてくれないのが、なんてもどかしいの。
堅い机の上で、スカートを捲くられながら秘所を弄られている自分は、なんていやらしい姿をしているのだろう。
後ろめたいような、けれど言いようのない喜びに、ミランダの嬌声は止まらない。
突然温かいものが、花核に触れて、
「・・ゃぁっ!」
ビクビクと震えて、それがマリの舌だと感じた。
スカートに潜り込むようにして、秘所へ舌を這わせるマリの呼吸が、興奮からか荒くなっているのに気付いて、ミランダの息も乱れる。
(ああっ)
下唇を噛み締めて、子宮が震えるような感覚に耐えた。
全身を駆け巡る絶頂感に、ミランダが支配されるその寸前、マリの体が離れた。
(・・?)
痺れるような感覚のまま、ミランダは不思議そうにマリを見る。
「・・ミランダ・・」
乳首をチュウ、と吸って。それから、優しい口づけを落とすと、カチャカチャとベルトを外す音がして団服のズボンを下ろす気配がした。
「入れるぞ」
耳元で、掠れ気味に囁かれた。
ドレスのスカートを捲くり上げた状態で、マリの張り詰めた陰茎が花唇を上下に擦る。
・・チャ、クチャ・・自らの滴りがマリのを濡らして、擦られるたびに水音が増していった。
探り当てるように動いて、蜜壷に陰茎をあてると、尖端をズプ、と沈めて。確かめるように二三回浅めに動かしていく。
「・・・はっ・・」
息をついて。それから一気に最奥へと貫かれた。
「はっ・・あぁぁんっ・・!!」
さっき打ち止められた絶頂感が、全身に駆け巡っていく。ビクビクと痙攣するように震えて、入れられただけで達してしまった。
「あぁぁっ・・・!!」
真っ白に染まるような感覚の中、再び起こされるように激しく突かれて、意識が呼び戻される。
マリの激しい動きに机がガタガタと揺れて。より深く繋がるように足を肩にかけ、両手を机についてミランダを揺さぶった。
「くっ・・ミ、ミランダ・・!」
「ああぁっ・・!」
一度絶頂を知った胎内は敏感で、更なる高みへと上り詰めていく。ミランダはマリの首に縋り付いて、助けを求めるように名を呼んだ。
ミランダの何度目かの絶頂を自身の陰茎で感じながら、マリは歯を食いしばり限界に堪えていた。
「ミランダ・・」
愛しくてたまらないと、口づけを落とし。快楽で、息も絶え絶えな彼女を抱きしめる。
「・・いくぞ」と呟いて、マリは腰の動きを速めた。
グチュ、チャ、という音と共に肌が擦る音がして、腰を動かすたびに漏れ聞くミランダの嬌声が、マリの理性を削っていく。
(もう・・だめだっ・・)
絶頂感に鳥肌が立ち、急いで引き抜くと、己の手に白濁の液を吐き出した。
はあ、はあ、と。
互いの乱れた息の中、マリは自身のコートで手を拭うと、ポケットに入っていたハンカチでミランダの額の汗を拭いた。
「・・大丈夫か?」
「・・・・」
「・・ミランダ?」
ミランダは、ぼんやりと潤んだ瞳でマリを見て。ふいに拗ねたように、目を反らした。
「・・・知りませんっ」
「!」
「・・・・」
「・・ミランダ・・?」
そっと、頬に触れる。
ミランダは頬を赤くして、子供のようにふくらませた。
「わ・・私、心配してたんですよっ」
「・・?」
「・・マリさん、無事に帰ってくるかって・・」
小さな声で呟く。マリは安心したように笑うと、ミランダを抱き上げた。
「ミランダ」
「な、なのに・・こ、こんな・・」
カァッと、顔を赤らめて俯く。マリはぎゅう、と強く抱きしめて
「・・すまない」
「・・・・」
「あんまり可愛らしいから・・我慢できなかった」
額にキスをした。
ミランダは倒れるように、マリの肩に額をつけると
「もう・・・ずるいです」
頬が緩んでしかたがなくて。マリは自分も机に座り、抱き上げたミランダを膝に乗せた。
「・・ミランダ」
「・・・・」
そっぽを向いたままの彼女の頬にキスをして。
「もうすぐ新年だ。・・そろそろ、許してくれないか?」
「え・・?」
キョトンと、マリを振り返ったその時。
《ドン・・!》
花火が打ち上がる音がして、明るい光りが部屋を照らした。
「わ・・!あ、あれって」
目を見開いて、窓の外を見つめる。
「ミランダ」
マリはミランダの頬を両手で挟んで自分ヘ向けると、
「誕生日、おめでとう・・」
ゆっくりと、優しい口づけをしてきた。
さっきのような情熱的な口づけではなくて、まるで守るような優しい感触に、ついうっとりと身を任せてしまう。
外からは、花火が打ち上げられる音が続いて、新年の訪れを告げていたが、その後もミランダは花火をゆっくり見物できることはなく。
再び訪れる、愛の時間にまたも身を任せてしまうのだった・・。
End
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