D.gray-man
1
「ミランダか、ちょうどいい。」
婉然と微笑んだクラウドは、食堂にいるミランダを手招きした。
ミランダはちょうど夕食を終えたばかりで。食器を片付けているところだったが、突然の呼びかけに持っていたトレーを落としそうになって慌てた。
「ク、クラウド元帥・・・」
「この後、何か予定は?」
「え、と・・お風呂に入るくらいで・・特には」
ぱちぱち、と瞬きをしてクラウドを見る。
「では、風呂の後で一杯つきあわないか?」
「えっ・・!わ、私がですか?」
「嫌でなければ、だが」
「ま、まさかっ!」
首をブンブンと振った。
「では、談話室で待っているぞ」
クラウドは軽く頷いて、踵を返した。
修練の後、皆で風呂に入るのは日課のようになっている。
今日もマリは、ラビやアレン、神田らと湯に浸かりながら青少年たちの他愛もない話に、耳を傾けていた。
いつもは夕食に何を食べるかだの、新しい団服のデザインがどうの、たいていは実のある話ではないが、今日の話の内容はマリにとって気になるものだった。
「いやー、なんかスゲェもん見ちゃったさ〜っ」
ラビが興奮気味に言う。
「スゴイって、何がですか?」
「いや、オレ着替え取りに部屋へ行く途中にさ、談話室で話し声が聞こえたからのぞいたんさ、そしたら・・・」
ラビは意味深に笑って、マリをちらと見る。
「なんと、ミランダとクラウド元帥とブリジットさんが、酒飲んでたんさっ!」
マリは思わず目を瞠る。アレンは意外そうに大きな声を出した。
「えっ!な、なんか珍しい組み合わせですね」
「だろ?オレもびっくりさ、つか他の奴らもびっくりよ大人組三人が、ワイン片手に和気あいあいと語らってんだぜ」
「ああ・・なんかいいですね、それ・・」
「だろ?なんか、教団は野郎ばっかだから、和むさね」
顎まで湯に浸かりながら、ラビはにまーと笑った。
ミランダが談話室に入ると、クラウドの他にもう一人いた。
(あの方は、たしか室長補佐のブリジット・フェイさん・・)
美人で有能な補佐官だと、有名で。自分とは正反対のタイプだと、ひそかに憧れていた。
「こ、こんばんは・・」
おずおずとソファーに腰掛けた。
ブリジットはミランダをじっと見て、それから微笑むと
「こんばんは、ミランダ・ロットーさん」
クラウドがワインを開けながらミランダを見る。
「たまには女同士で飲もうと思ってな、教団はむさいのが多すぎる」
「は・・はあ」
ラウ・シーミンがミランダにグラスを渡し、クラウドがワインを注いでいく。
「では、乾杯しよう」
クラウドが杯を掲げたので、ミランダもあわせて掲げる。三人のグラスが重なって、心地良い音が部屋に響いた。
ワインの美味しさと、女同士の気安さもあって。意外といっては何だが、ミランダは楽しかった。
クラウドもブリジットも、美人ゆえに取っ付きづらい印象があったが会話すると、そうでもなく。ブリジットにいたってはアルコールがすすんだのか、コムイに対する軽い愚痴や称賛も口にしていた。
話は仕事や、日常、昔話、最近の流行など多岐にわたり、必然的なように、恋愛の話へと流れていった。
「恋なんて、しばらくしてないです・・今はそれどころじゃありませんし・・」
ため息をつくように、ブリジットは呟いて
「元帥はどうなんです?」
「私もダメだな、というより私は昔から男運が悪いんだ」
過去になにかあったのか、つまみのチーズを一口食べながら自嘲ぎみに笑う。
「どうしようもない男しか寄ってこないんだ」
「まぁ・・でも、元帥はその辺の男より漢らしいですものね、わかりますわ」
「・・否定はしないが・・」
クラウドはぐい、とグラスのワインを空にして
「ミランダはどうなんだ、マリとはうまくいってるのか?」
ラウ・シーミンに果物を食べさせていたミランダは、突然恋人の名前が出て驚いた。
「え、ええ・・・と。は、はい・・」
何となく、頬を赤らめて頷く。
「マリ・・って、あのエクソシストのノイズ・マリ?」
「は・・はい」
クラウドは、手酌でグラスにワインを注ぎながら
「で・・どうなんだ?・・」
「え?」
キョトン、とする。
「夜だ。しっかりやってるのか?」
「げ、元帥っ・・!」
ミランダは赤くなった。
「元帥ったらストレートすぎます。まぁ、でも大事ですわね」
ブリジットは頷きながら、残りのワインを傾ける。
「え・・ええっと・・そのっ・・」
ミランダは真っ赤になりながら、小さく頷いた。
「それはよかった。私もあいつとは古い付き合いだからな、二人が幸せになるならそれが1番嬉しい」
クラウドは酔いが回ってきたのか、目が据わってきている
「しかし、ミランダ・・リードするのは男とはいえあまり消極的すぎるのもいただけないぞ」
「??」
「たまには、自分からイニシアチブを取らねば、男というのは勝手なもので、昼は淑女でも夜は娼婦を望むものだ」
「げ・・元帥っ!」
何を言われているか悟って動揺する。ブリジットも、クラウドの言葉に賛同のようで
「そうですね、初々しいのが可愛いのも最初だけ、いずれそれも物足りなくなるって言いますし」
ミランダは急に不安になってきた。
「そ・・そうなんですか?」
二人が、大きく頷く。
ミランダの顔がみるみる青ざめていき、オロオロと二人を見た。
「ど・・どうしましょう・・わ、私・・もう飽きられてるかもしれませんっ」
クラウドは、意味深にフッと笑う。
「なあに、男と一緒だ。女も技を磨けばいいのだ」
「わ・・技?」
ミランダは眉を寄せて、固唾を飲む。ブリジットは興味津々なふうで
「どんな技なんです?知りたいわ」
「よし、教えてやろう。先ずは・・」
「お待ちになって、元帥。メモを・・」
サッとメモ帳を出した。
「ほう、さすが優秀な補佐官だ用意がいいな」
「ありがとうございます。さ、ではお願いします」
その後、クラウドの語りに、ミランダは気絶しそうになりながらも必死に耐えたのだった。
気配がして、目が覚めた。
その気配の正体に、マリの頬が緩む。
(ミランダ・・・)
彼女は、何やらうろうろと、困っているようで小さいため息が聞こえる。
ドアの向こうでは、胸の前で指を組み、ノックをしていいものか迷っているようだ。何となく、ミランダらしくてマリは小さく笑う。
(どうするかな)
ミランダが勇気を出してくれるのを待ちたい気もするが、それより自分の会いたい気持ちの方が抑えられない。
ベッドから起きて、ドアへ向かい指先でドアをコツンと鳴らした。マリの存在に気付いたらしい、ミランダの反応に安堵する。
(・・あまり驚かせずにすんだな)
カチャ、と静かにノブを回して彼女を招き入れた。
「ミランダ、どうしたんだ?」
「あ、あの・・ごめんなさい・・こんな遅くに」
ほんのりと、ワインの香りがする。心音がいつもより速いのはアルコールのせいか。
「寒かったろう?おいで」
マリはミランダの手を取ってそのまま、毛布でくるむように抱きしめる。柔らかな髪が、己の頬にかかって、彼女の香りが鼻孔をくすぐる。冷たくなった頬に唇を落とした。
「そういえば・・クラウド元帥たちと、飲んでいたんだって?」
「えっ!・・ええ・・」
「?・・どうかしたのか?」
ミランダは首を横に振って
「な、なんでもないの・・た、楽しかったわ」
「?・・そうなら、いいが」
ミランダは頬が熱くなるのを感じた。
あの二人に背中を押されるように、ここまで来てしまったが、いざとなるとどうしたらいいのかなかなか踏ん切りがつかない。
(ど・・どうしましょう)
心臓が破裂しそうだ。
優しく抱きしめられながら、マリの顔を窺う。
「・・・・」
脳裏に、クラウドとブリジットの言葉が浮かんだ。
(い・・行くわっ)
「マ、マリさんっ・・ごめんなさいっ!」
「ミラ・・・・!?」
ミランダは、マリの頬を両手で挟むと思いきり、口づけた。
(あれ?なんだか変だわ・・)
そっと、離す。
(!・・わ、私ったら!!)
目をつむっていたので、勢い余って、顎にしていた。
「や、やだ・・私ったらっ・・!やり直しますねっ」
もう一度、マリの頬を両手で挟み唇を近づけると、マリの唇かぴくぴくと動いてるのに気付く。
「・・?」
どうやら笑いを噛み殺しているらしい。
「マリさんっ!ひ、ひどいわっ」
「すまない、許してくれ」
真っ赤になって抗議すると、我慢できないと、吹き出した。
「もう、いいですっ」
恥ずかしくて。ぷいと、ふくれてそっぽを向くと、マリの大きな手がミランダの頬をつつむ。
「?」
そうして、そのままミランダの唇は奪われた。
(!・・)
触れるだけの、口づけは次第に熱を帯びてきて。ミランダの唇を慈しむように、とても優しい。
口づけだけで、自分がどれだけ愛されているか分かる。
うっとりと、目をつむってマリの唇を受け入れていると・・
「!!」
本来の目的を思い出して、慌ててマリの体を突き放した。
「だ、だめですっ!」
マリは突然の拒絶に驚いている。
「ど、どうしたんだ・・突然・・」
「き、今日は」
「?・・今日は、何かあるのか?」
「き・・・今日・・は」
「?」
ミランダはマリの手を取った。
「今日は・・・私が、マリさんに、してあげたいん・・です」
「ミ・・!」
マリが何か言う前に、またミランダに唇を塞がれていた。
さっきのぶつかるような口づけと違い、羽根が触れるように柔らかい。ぎこちなく、動く。マリには、それがまた愛おしい。
「ん・・ふっ・・・」
ミランダの声が、洩れて、マリは下半身に熱が集中するのを感じた。受け止めるだけに我慢できず、ミランダを抱きしめようと背中に手を回した。
しかし
「だ・・ダメっ・・」
ミランダがパッと離れた。
「私が・・するの・・」
ミランダが、マリを抱きしめた。
ぎこちない手つきで、ボタンを外していく。ミランダは緊張から、少しだけ震えていた。
ベッドの上で仰向けになりながら、マリは突然の彼女の行動に戸惑っていた。
(いや・・嬉しいといえば・・嬉しいんだが)
正直、複雑だ。
こちらからは、何もできないのだから。
それでも、せっかくのミランダのやる気に(やる気?)水をさすまいと、マリは人形のように動かずにいた。
(えっと・・これでリード?はとったのよね)
クラウドからの教えを思い出す。
(マリさんに動かれちゃうと・・リードできないもの)
クラウドからは『たまには、女がリードして、男を感じさせろ』という教えを受けていたミランダは、微妙に、何かが違う事に気付いていなかった。
さて、マリの上半身のボタンを外してみたが、ミランダはこの後どうすればいいのか、わからない。
(ど・・どうしましょう・・こ、困ったわ)
ふと、いつもマリにされている事を思いだした。
「・・・・・・」
(最初は・・・)
指先で、つつ、と首筋をなぞる。それから、その首筋に舌を這わした。
小さな、舌先で、チョロチョロと、舐めてちゅ、と鎖骨にキスをする。ちらり、マリを見ると、マリは困ったような切ないような複雑な顔をしていた。
「マリ、さん?」
「・・ミランダ、その、動いても・・」
「ダ、ダメですっ」
「・・・そうか」
力なく呟いて、マリはまたミランダに身を任せる。
(なんの罰ゲームだ)
ミランダはマリの体を覆うよう、に四つん這いになって、まるで小鳥が啄むようなキスを落とす。
彼女から与えられる、ぎこちない愛撫に、愛おしさが募った。本当はすぐにでも、掻き抱いて、ミランダの快楽に堕ちる甘い声を聞きたい。
そうは思うが、一生懸命な姿を思うとそうもいかなくて。
(うう・・・生殺しだ・・)
心の中で、歯を食いしばった。
ゴクリ、唾を飲む。いよいよだ。恐る恐る、その場所へ手を延ばす。
(こ・・これね・・)
ミランダは、先程から自己主張してやまない、マリの下半身へ手をかけた。指先で、形を確認する。マリの体が、ビクンと揺れた。
「ミ、ミランダ・・?」
上擦った声がした。
(が・・がんばりますっ)
マリのズボンに手をかけて、ぐいと引き下ろすと、そこには怒張して、存在感を増したモノが、そそり立っていた。
ミランダは、こんなふうに間近で見たのは初めてだったので、戸惑う。
(こんな・・大きいものだったの・・)
ドキドキしつつ、ツン、と触れてみる。ピクン、と動いた。
(まぁ・・)
もう一度、今度はツツ、と摩る。怒張が増したように見えた。
(まぁっ・・・・不思議・・)
そっと、先端に唇をつけてみる。
「!?・・ミ、ミランダ?」
マリの声が聞こえたが、ミランダは構わず、続けた。それは温かく、ドクン、ドクンと脈打って。
(そうだわ・・たしか・・)
『アイスキャンディーを食べるように』
クラウドの教えを思い出す。
「・・・・・」
舌を出して、亀頭をそろりと舐めた。
「!?・・」
マリは急に訪れた、柔らかな刺激に体が震える。ミランダは、猫のようにチロチロと舐めていて、彼女がその行為をしてるというだけで、目眩がしそうな程刺激的だった。
先程までの、もどかしい気持ちは、もたらされた快楽により掻き消えて。意識が己の下半身へと流れていく。
そして、それはミランダが彼のモノを迷いなく、口に含んだ時に決定的となった。
(うっ・・・!)
口にくわえられて、ゆっくり、動かされる。何とも言えない、心地良さに、鳥肌が立ってきた。
(マリさん・・気持ちいいの・・?)
口に含んで、規則的な上下運動をしながら、ミランダもまた熱に浮かされてきていた。
口腔の彼自身は、どんどん硬さを増していくのが分かる。丁寧に舌で愛撫しながら、ミランダは自身も気付かぬうちに興奮していた。
(マリさんの・・・)
そう思うと、愛しい。
自然と、行為に熱が入り、もっと気持ち良くなって欲しくなる。
チュパ、チュプ、と自らの唾液がそれを支えていた自分の指を濡らして、その唾液によって愛撫の速度は増した。
(わ・・・なんだか、また大きく・・)
口の中で、さらに硬く、膨らんだのを感じる。
(す・・すごい・・)
「くっ・・・!ミ、ミランダ・・ま、待てっ」
苦悶するような声が聞こえた。
「ダ、ダメだっ・・」
マリが急に、起き上がる。急に動かれて、口からマリのモノが抜けてしまった。
「ど、どうしたんですか・・?」
「いや、その・・とにかく、まずいんだ」
「・・?」
よく分からなくて、首を傾げる。
(危ないところだった)
あのままだと、間違いなくミランダの口に発してしまった。正直言えば、それはそれで・・と思わなくはないが、大切な恋人に不快な思いをさせたくはない。
(・・ギリギリだったな)
そっと、汗を拭う。
「あの・・・気持ち良く、なかったですか・・?」
ふいに、ミランダの心配そうな声がしてマリは首を振った。
「・・気持ち良すぎて・・困った・・」
照れたように笑い、それから、ふと真面目な顔でミランダの手を取って、唇を寄せる。
「でも・・・次は、こちらの番だ」
ミランダが、何か発する前に、唇を塞がれた。
「ん・・!マ、・・はうん・・」
なんという、情熱的な口づけ。
まるで噛み付くように、いや、食べられてしまいそうな貪るような、熱い口づけ。
ミランダは、頭の奥が麻痺するような感覚を覚えた。
(や・・す、すごいっ・・)
ベッドにそのまま倒されて、マリの指が、ワンピースのボタンを外し始める。
その肌にたまらなく触れたくて、やや強引に、服を脱がせると、たまらずマリは鎖骨に唇を吸い付けた。
左手は下着を脱がせて、右手はこぼれ出た乳房を愛撫する。
「あっ・・ん!マ、マリさん、ダ、ダメ・・」
甘い声で抗議しても、こちらを高ぶらせるだけなのに。舌先で、乳房の先端を突き、なぞるように動かしてから舐めるように吸い付いた。
「は・・んっ・・!」
快楽に流されはじめた声が、マリの耳に届く。指先を、脇から腰へなぞらせて彼女の曲線を確かめた。
柔らかな、温かな感触。
(ミランダ・・・)
彼女からの愛撫のせいか、マリはいつもより性急になる。指で、ミランダの秘所をそっと摩る。そこはもう潤って、熱を持っていて。
ちゅぷ、と。指を挿してみると、ミランダの体が小さく震えた。
「はぁんっ・・・!」
吐息がもれて。マリはその吐息まで、喰らうように、口づけをした。
歯列をなぞるように、割入れて、舌を絡ませながら口腔を貪る。渇きを癒すように、彼女を求めてしかたがない。
唇を離すと、唾液で糸が引かれて。マリは挿し込んでいる指の動きを速めながら、今度はミランダの秘所に顔を埋めた。
「あ、いやっ・・はあぁぁんっ・・!」
舌の動きに合わせるように、ミランダは嬌声を上げる。マリは、ゾクゾクしながらその声を聞いて、舌の動きを速めた。
突起にキュ、と吸い付くと、ミランダの体がのけ反るように震えて、感じているのが嬉しくてさらにそこを攻める。
「や、やぁんっ・・あ、あぁぁっ!!・・」
ちゅ、ぐちゅ、淫靡な音が響くなか、耐え切れずに声を上げて、ミランダは達してしまった。
薄ぼんやりとした意識の中で、マリの唇が乳首に触れ、それからミランダの唇に触れたのが分かった。
(もう・・何も、考えられ・・ない)
わかるのは、求めて、求められる喜び。ミランダは、マリの頬を両手で挟む。
「マリ・・さん、だいすき・・」
鼻を擦り合わせて、願うように囁いてからキスをした。
愛おしさに、頬が緩み、そのキスを受ける。
「わたしもだ、ミランダ・・ほんとうに・・愛してる」
そっと、抱きしめた。
もう、我慢できない・・。己の猛りは、これ以上無理だと、叫んでいるようだ。
「ミランダ・・・入れるぞ」
耳元で囁くと、ミランダは小さく頷く。マリは自身をミランダの秘所にあてがい、グッ挿し沈めた。
「・・いくぞ」
「あああっ・・・!」
シーツをギュッと握りながら、ミランダは衝撃に耐える。マリは、最初はゆっくりと、しかし、次第に速度を増して膣(なか)ヘ打ち付けていった。
相変わらず、キツイそこは潤いを増しながらもギュウと締め付けてくる。片足を肩にかけて、より深く繋がるように前屈みになって、グッ、グッと押し入れた。
陰茎から、全身、いや脳にまで広がる快楽に目眩がする。
「くっ・・・」
歯を食いしばり、それに耐えるが、すぐにでもイキそうだった。
ミランダは、ガクガクと突き上げられながら、助けを求めるようにマリの首に縋り付く。
「あ、あぁっ・・マ、マリ・・さん、マリ、さ・・」
耐え切れないように、名前を呼ぶしか、できなくて。
繋がった部分が熱い。
ドクン、ドクンと脈打ち、絡まり。互いが互いの熱に、溶かされて、そのまま互いの一部になっていくようだ。
奥が、ジンジンと痺れはじめて、ミランダの中で何かが上り詰めていく感覚がする。
「い、いやぁ・・ああぁぁんっ!・・」
それが全身に走り抜けた時、ミランダはマリを掻き抱く。
ドクン、という収縮とともに目の奥に火花が散ったような気がした。
(・・達したか・・)
そっと、口づけを落とすと、ぼんやりと受け入れる。
乱れた吐息が、煽情的だ。額髪が汗でこごって、マリは指でそれを解く。
(ミランダ・・・・)
マリもまた、限界であった。ミランダが達した刺激で、それが更に強まっている。
「・・いくぞ」
優しく、囁いて。
ミランダの両足を持って、動きを速めた。
「・・あ・・マリ、さん・・!」
達したばかりの敏感な胎内を刺激されて、ミランダは身をよじる。
マリは眉をしかめ、荒い息をしながら激しく攻め立てた。ミランダの肩をぐっと抱き、絶頂感に支配される前に己を引き抜き、自身の掌に白濁の液をぶちまけた。
マリの大きな胸に、顔を埋める。
二人で布団に入りながら、温かい体温を感じて、ミランダは、この時間が大好きだった。
互いになにも纏わず、素肌でくっつく。
(・・しあわせ・・)
自然に笑みがこぼれて、たまらない。それを悟ってか、マリの抱きしめる力が少し強まった。
「ミランダ・・その・・」
マリが、口ごもる。
「はい?」
「・・何かあったのか・・?」
「えっ?」
「その・・随分、積極的だったから」
言いづらそうに、呟いた。
「そ・・それは・・」
なんとなく顔を赤らめてしまう。
「あ、いや、何もないなら・・いいんだが」
「あの・・・」
おずおずと、聞いた。
「き、今日みたいなのは・・ダメ、ですか?」
「まさか・・その、嬉しかったよ」
ミランダの顔がパッと明るくなった。
「やっぱり、元帥のいったとおり・・・」
「元帥?」
マリが聞き返す。
「!?・・やだ、声に出して・・」
慌てて、口を押さえた。
「それは・・クラウド元帥の事か?」
「・・は、はい・・」
びくびくして、マリを窺う。
「大丈夫だ、怒ってるわけじゃないから」
マリは背中を、さすって穏やかに、言った。ミランダは、えっと、その、と口ごもりながら
「・・わ、技を磨けって・・」
「技!?」
驚いて、つい大きな声を出してしまった。
「そ、その・・昼は淑女で夜は娼婦・・に」
「!?」
(なんだ、それは・・)
「・・ほかには・・?」
恐る恐る、聞く。
「・・え?ええっと・・その・・」
ミランダは、困ったように
「う、初々しいのも・・・物足りなくなる・・とか・・?」
小さな声で呟いた。
マリは、なるほど、と心の中で頷く。
(そういうことか・・)
ミランダの一生懸命な姿を思い出し、気づかれないように小さく笑う。
「そんなに、頑張らなくても大丈夫だぞ」
「え・・」
「ミランダは、そのままで充分、魅力的なんだから」
「マ、マリさん・・」
「変わらないでいてくれよ・・」
マリは、真っ赤に茹で上がったミランダの頬を両手で挟んで、
「返事は?」
「は、はい」
ミランダの唇に、この日一番の、優しいキスが落ちてきた。
End
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