▽世界

緑。
緑の服。
それは、緑色をしたドレスだった。緑色のドレスをきた女が駅のホームの屋根がある場所とない場所の間に立っていた。夏の強い陽射しに照らされた緑は余計に濃く色を放っていた。風が吹くと軽い緑は裾の部分をはたはたとはためかせている。緑が揺れる度に周りの空気が緑に染められている気がした。
私は黙って緑を見つめた。
空気の詰まった浮き輪のふたを開けたように緑は抜けていく。
繰り返し、繰り返し流れ続ける耳元の音楽がプツリと切れた。ゴウゴウと風の音が聞こえる。風に吹かれて緑が私の元まで飛んできた。どこか懐かしい臭いが鼻孔をつく。鼻の奥がつん、と傷んだ。
緑はまだまだ抜けていく。あれほど濃い緑は空気に触れると煙のように薄くなってしまうようだ。色の薄い空の中に緑色の煙りはゆっくり溶けていく。数秒後には消えてしまう。しかし、緑は止めどなく流れていった。
気付いたら、目の前で電車が大きく口を開いて私を見ていた。
緑の服を着ていた女はいつの間にかに居なくなっていた。変わりに、最後の緑が色素のない青に吸い込まれた。









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