高級感溢れるモデルハウスみたいな部屋に一人そわそわ落ち着けないでいる。このソファだって大きいだけじゃなくて凄いふかふかだしもうここで寝れるんじゃないの。俺のベッドと交換してほしいくらいだ。それになんかいい香りするし。アロマとかなんとかかな。
暫くそんな感じで辺りをキョロキョロ見回していると「はい。」と鳴海先輩が可愛らしいティーカップに紅茶を淹れてくれた。


「ありがとうございます…」
「お気に召すかどうか分からないけど。」


慣れない手つきで深い赤茶色をした紅茶を口に含んだ。ふわっと不思議な匂いが鼻をついたと思ったら、甘すぎない上品な味が口の中に広がった。


「美味しい。」
「それは良かった。僕のために特別にブレンドした紅茶なんだ。まあ、だから不味いことはまずないんだけどね。」


得意気に紅茶について語る先輩に「はあ。」と適当な相づちを打ちつつ話を聞き流す。だって、紅茶とかよく知らないし、あんまり飲まないし。だけど、今まで飲んできた紅茶の中では一番美味しい。やっぱりお金かけて作ったものは美味しいんだろう。
そろそろ、話も飽きてきたので訳の分からない紅茶話をつらつら語る先輩に「あの、」と声をかけた。


「そろそろ本題に入りません?」
「これからが佳境なんだけど…」
「また後で聞きますから。」
「ううむ」


先輩は不本意そうなまま立ち上がると「ついておいで。」とリビングを後にする。俺もそれに続くようにリビングから出た。ああ、さよならふかふかソファ。
リビングから出て左の部屋。そこが食事をする部屋らしい。大きな以下にも高機能そうなキッチンとそれを隔てるように低い壁がありその向こうに長めのテーブルがあった。


「うわあ!大きなキッチンですねえ!」
「ほとんど宝の持ち腐れ状態だけどね。まあ、僕にはこれくらいないと…」


先輩のどうでもいい自慢話はさておき、こんな大きなキッチンで料理ができるなんて料理をする側にとってこんな嬉しいことはない。
直ぐにキッチンに向かうと、おおさすが。最新機能満載のキッチンが広がっていた。


「すげえ!先輩と会って初めて純粋にすげえって思った!」
「ん?どういうこと?」
「ここで料理していいんですよね?!」


こんな綺麗で便利なとこで料理できるなんて素晴らしい!光熱費かからないって素晴らしい!
興奮しながら先輩にそう聞くと先輩は苦笑しながら頷いた。


「ちゃんと僕に教えてね?」
「まっかしてください!」


斯くして、先輩と俺の料理講座が始まった。





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