「お邪魔します」
「どうぞどうぞ!上がって上がって!」


5月も始まったばかり。世間でいうゴールデンウィークがスタートした。
そんな世の中が浮き足立っている中、俺はというと鳴海先輩の家にお邪魔している。
知り合ってからまだ大体10日くらいなのにどうして先輩の家に来ることになったかというと事の発端は先輩とお昼を食べていた時に遡る。俺がついつい簡素な先輩のお弁当の中身に口出しをしてしまったのだ。そしたら、何を思い付いたのかは知らないが鳴海先輩に「僕に朱流が料理を教えればいいじゃないか!」等と半ば強制に料理を教える羽目になってしまった、というわけだ。
鳴海先輩は一人暮らしらしく、「僕の家なら好き勝手に料理をしていいよ」と言うことで先輩の家で料理教室を開くことになった。
しかし、さすがというかなんというか。先輩が住んでいるマンションを見ただけで軽く気絶しかけた。なぜなら、ここら辺では一番高いマンションに住んでいるし、しかも最上階。上京してきた高校生が一人暮らしするマンションじゃない。
なんかもう恐れ多いんだけど。


「あの、ここ、ほんとに住んでるんですか?」
「そうだよ。ほら、鳴海って書いてあるでしょ?」
「…先輩って何者ですか」
「しがない高校生だよ。」


嘘つけ。
不信感しか抱かずに先輩の後に続いて中に入ると、そこでもまた呆然としてしまう。
中は一人暮らしには勿体無いほどの広さで一体何部屋あるんだというくらい部屋がズラリと並んでいた。と、いうより俺が今まで住んでた街にこんな高級感溢れる部屋があったんだ。
先輩はいくつか部屋が並んだ廊下を進み、一番奥にある扉に手をかけた。扉をあけると、だだっ広いリビングがあった。超薄型大画面テレビに大きなソファ、それからこれまた高級感溢れる大きなテーブル。その上に飾られた花たちは鮮やかに咲いている。
あれですか、ここはモデルハウスかなにかですか。
呆然と立ち尽くしている俺を先輩は例の大きなソファに座らせた。


「ようこそ、僕の家へ。」
「こっ、こんなところで一人暮らしですか?!」
「うん。父さんには少し大きすぎるよって言ったんだけどね。」


少しどころじゃないだろう。
心中でそんなツッコミを入れる。本当になんなんだ、この人は。もしかしたら、俺んちのリビングよりでかいかもしれないぞ、これ。
こんなところで、貧乏庶民の俺が料理なんてしていいのだろうか。
ふかふかの高そうなソファが余計に俺の背筋を真っ直ぐ伸ばした。





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