今日は遅刻もしなかったし、特売もないしなんだか平和な1日だなあ。
そう思いながら隣の席の前島と楽しく談笑をしているお昼休み。
クラスメイトの佐藤が青い顔をしながら、俺の事を呼びに来た。


「おっおい相楽っ!なんかっすっげえイケメンがお前のこと探してたぞ?!」
「すっげえイケメン?」


なんだそりゃ。
生憎俺含めすっげえイケメンな友人や知り合いはいないけれど。と、そこまで考えてあ、と呟いた。
すっげえイケメンな友人や知り合いなら一人だけ心当たりがあった。そして同時に自己中心的で世間知らずの関わりたくない人が脳裏に思い浮かんだ。


「…すぐ行くよ…」


さようなら、俺の平和で楽しかった時間よ。俺はちょっと平和じゃなくて楽しくもないところに旅立ってくるね。
俺は重たい腰をゆらりと椅子から持ち上げた。その様子を見て前島と佐藤が心配そうに大丈夫?と聞いてきてくれたが、俺は無言で片手を上げた。
昨日のスーパーでのやり取りを思い出す。あんなことを学校でされてはかなり面倒くさい。
俺は暗い気持ちで教室から出た。


「あの、何か用ですか…うぷ。」



またまたまた何かにぶつかった感触。
いや、これはぶつかったというより。


「うわあああい!会いたかったよー!!」
「…なんなんですか…」


抱きしめられてる?
流石に二回もぶつかっていれば、どれがぶつかった感触かぶつかっていない感触か識別がつくようになるものだ。
俺は耳をつんざくような大声に顔しかめる。そしてぷは、と抱きしめられたまま上を見上げた。


「…やっぱり」


見上げた先には案の定、俺の唯一のすっげえイケメンな知り合いの彼が屈託のないあの笑顔をニッコリと浮かべながら俺を見ていた。


「会いたかったよー会いたかったよー!」
「昨日会ったばかりじゃないですか。」
「そうだけど今日も会いたかった!」
「俺はどちらかと言うと会いたくなかったですね。」


俺がそう言うと彼は悲しそうな顔をしたが、直ぐに得意気な顔をした。


「今日はね、ちゃんと会いに来たのは理由があるんだよ!」


無かったら困りますけどね。
どう?僕凄い?と言わんばかりの彼に何の用ですか?と再び聞いてみる。
すると、彼は待ってましたと言わんばかりに口を開いた。


「君の名前を聞きに来た!」


わお。
なんてこった。





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