「ふぁあ〜。朱流ちゃんおはよー」
「お早う父さん。」
「んーいい匂い!おっ今日はスクランブルエッグかあ。なんだか最近卵料理ばっかだな。」
「卵買いすぎちゃったから。でも父さん卵好きだからいいでしょ?」
「っていうか、朱流ちゃんの作るもの全部好き。」


そう言いながら、嬉しそうに出来立てほやほやのスクランブルエッグを食べる父さんを横目に俺は学校へ行く支度をしていた。
昨日の王子さまのような不思議な彼。
まるで夢のような出来事をしたなあ、と彼との出会い方やスーパーでのことを思い返す。だが、一夜開けて冷蔵庫を開けたら卵が2パック大切そうにしまわれていて夢ではないと実感させられた。
昨日はあのあと約束通り夕飯をご馳走した。父さんはいきなりの金髪碧眼美青年の登場に驚いていたが何やら話は合うようで楽しそうに会話をしていた。やっぱり変人同士気が合うらしい。
結局、金髪の彼は俺の作った料理を美味しい、美味しい、と言い続けたり、父さんと楽しげに話をしていたりで名前さえ聞けなかった。あとで、父さんに聞いてみても名前は聞いていないらしい。
まあ、でも多分あんな綺麗な人、俺みたいな庶民がもう会うはずもないのだから名前なんて知らなくていいのか。最初に会ったときに感じたように自分とは住んでいる次元が違う人なのだから。


「ああ、そういえば、昨日の彼に会ったらよろしくと伝えておいてくれ。」


玄関で靴を履いていたら、後ろから父さんにそう声をかけられた。
よろしく伝えておく?


「多分、もう会わないと思うけど。」


そう返すと、父さんが笑いながら答えた。


「何を言っているんだ朱流ちゃんはー!友達だろう?同じ制服着ていたんだし。」


その言葉に俺はポカン、とした。
同じ制服を着ていた?
ああ、そういえば、そんな気がしてきた。何も違和感を感じなかったからさほど気を付けいなかった。
それじゃあ、もしかしなくてもあの人と同じ学校っていうこと?そして、あの人ともう一度会うことがあるかもしれないってこと?
俺はその時の事を考えると、何となく溜め息を吐いた。


「…会ってもあまり関わりたくないかも。」
「なんか言ったかー?」


リビングから父さんの叫び声が聞こえてきたから慌てて首を振る。


「なんでもなーい!じゃあ、いってきますっ!」
「いってらっしゃい」


空にはアイスクリーム型をした雲がふよふよと浮かんでいた。





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