キーンコーンカーンコーン 下校のチャイムが放課後の学校になり響く。 教室の生徒たちは部活に行くものは部活の準備、寄り道をしてから帰るものは楽しそうに寄り道の準備を始めている。皆、目的は点でばらばらだが教室にはどこかようやく長かった1日が終わりを向かえるような気だるい空気が流れていた。 そんな空気の中一人足早に後にする。 後ろの方から、相楽ーじゃあなーなんてのんびりとした声が聞こえてきた。俺は適当に背中を向けながら手だけを振り、まだ人通りの少ない廊下を駆けた。 急がなくては、出遅れてしまう。4時半までにはなんとしてでもスーパーに着かなくてはいけない。なんってたって、今日は三角スーパーで卵の特売セールがあるのだから。安いものをどれだけ上手くそして効率良く買えるかが家計を支えていくのに最も重要なことだと俺は思っている。そのため、今日の特売セールをみすみす見逃すわけにはいかないのだ。 自然と早歩き程度だった足は駆け足に変わり、学校の門から出る頃には猛スピードで走っていた。 5時から始まる特売には大体30分前には行かなければ間に合わない。 何せこの地域の主婦の皆さまは巷では「今を生きる戦国武将」なんて言われている。その名前通り、特売のときのおばちゃんたちの勢いの凄まじいこと凄まじいこと。特売の時はおばちゃんたち以外はスーパーには誰にも寄り付かないほどだ。 そんな戦場のような特売に俺が参戦するようになったのはここ最近のこと。まだまだひよっこの俺が戦場で卵を勝ち取るための方法は1つ。早めにスーパーへ赴き、前線に位置つくことのみだ。 「ぜえ…はあ…ぜえ…」 まだまだ高校生だと行っても普段、家事以外の運動をしていないこの体。歩いて15分かかる道のりを全速力で走りきるのは辛い。そう言えば朝も家から学校まで全力疾走したっけな。 急がなければ、でももう体が持たない。休憩したい。 そう、思ったときだった。 「…う」 ぽすん、と何かにぶつかった感触。 あれ、この感じ、どこかで。 ぐらぐらとした視界のまま上を見上げた。 「…あ、」 また、会いましたね。 そんな言葉が口をついた。 |