07



「あっ田崎来た!こっちこっち!」
「ゆっ悠馬くんっ」
 集合場所に行くと、もうそこには悠馬くんとお友だちさんが待っていた。ぼくに向かって手を振る悠馬くんは夏の太陽にも負けないくらい輝いていて、ああもう今日も格好いいなあ、なんて早速現実からフェードアウトしそうになる。クラクラした頭で悠馬くんの隣にチラと目をやるとそこにもう一人見慣れない茶髪頭がいることに気づいた。
「…えー、と」
「よっ!田崎!」
「あっあっ、こんにち、はっ」
「エライ固いなー!同じクラスやないかー!まさか知らないとかないやろなー?」
 茶髪頭くんは一瞬の間も開けずにペラペラペラペラと言葉を続ける。しかも聞き慣れない関西弁を流暢に使うもんだから余計に聞き取れないときた。
 なんなんだこの人は!
 悠馬くんのお友だち、なんだろうけどえーと、えーと。茶髪頭にでっかい声で関西弁の悠馬くんのお友だち…。
「沢田翔平。同じクラスの奴だよ。」
「しょっ翔平くん!」
 多分、頭に大量のハテナを浮かべていたのだろう。そんなぼくを見かねてか悠馬くんが助け船を出してくれた。相変わらず格好いい。
「そっ沢田翔平。んんー教室じゃ結構目立ってるほうやと思ってたんやけどな。」
 しかし、ぼくの反応にやっぱりショックを受けたのか翔平くんは眉を八の字に下げながら小さく笑った。
「ごっごめっなさっ…そ、そういう訳じゃ、なく、て…」
「あははっええよ、ええよー!今日覚えてくれたら!なっ、美月ちゃん!」
 早速迷惑をかけてしまったと慌てるぼくに翔平くんはニッコリ笑いながら頭をぽんっとしてくれた。うわあ、すっごくいい人だなあ翔平くん。さすが悠馬くんのお友だちだ。
「ありがとう」
 こんないい人と友達になれたら嬉しいな。
「よっし!今さら自己紹介も終わったし、行きましょうか、海へ!」
「行くで海ー!」
 悠馬くんと翔平くんの大きな声と同時にプシューッとバスが到着した音が聞こえた。バスの電子掲示板にこれから僕たちが行く海岸の名前が流れている。ここから5つ程先だ。海まであと少し。
「田崎ー行こーぜー!」
「うんっ」
 最早不安は忘れ、残るのはドキドキする高揚感だけ。
 僕らはバスに乗り込んだ。
 少しだけ、磯の香りが夏の風に運ばれてきた気がした。



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