04



 それからはまるで夢のようだった。悠馬くんに連絡したいからと言われお互いの携帯番号とメールアドレスを交換した。ずっとずっと欲しかった悠馬くんの携帯番号とメールアドレスをこんなにあっさりと手に入れられるなんて。感激過ぎてしばらく僕は放心状態だった。そして、悠馬くんは『じゃ、メールするから!』と言い残し来た道を爽やかな笑顔と共に戻っていった。僕はというと、以前は特に使うことのなかった携帯電話を大切にぎゅっと握りしめながら高まる体温と煩いくらいに鼓動を繰り返す心臓を隠すように誰もいなくなった廊下にしゃがみこんだ。
「…どうしよ…」
 どうしよう
 どうしよう
 悠馬くんとこんなにも近くになれるなんて。嬉しくて死んじゃいそうだ。
 さっきまで耳障りだった蝉の鳴き声も今は遠くの方に聞こえていた。

 そして、今。
 僕はベッドの上に置かれた携帯の前で約1時間弱くらい正座をしています。
「……」
 何故かと言われたら理由は簡単。別れ際に悠馬くんに『メールするから!』言われたので言葉通りにメールを待っているのです。が、さっきから携帯はピクリともしない。メールなんて家族以外とする機会がないため不安は募るばかり。さすがに一時間も経つと嘘だったんじゃないか、からかわれてたんじゃないか、と嫌な方、嫌な方に考えてしまう。だけどこうしてずっとメールを待っているのは悠馬くんはそんなことするような人じゃない。っていう僕のちっぽけな期待の所為。馬鹿だなって思われるかもしれない。お前は悠馬の上っ面しか見てないって思われるかもしれない。何も知らない、って思われるかもしれない。
「…」
 喜んでいたのは自分だけ?
 舞い上がっていたのは一人だけ?
 また、独りぼっちになるの?
僕はずっとベッドの上に置いていた携帯を手に取った。
 独りぼっちは、もう、嫌だ
 折角悠馬くんと仲良くなれそうなんだ。それをみすみす逃すなんて絶対に嫌だ。家族の名前と少しの友達しか入っていないアドレス帳を開き悠馬くんの名前を探す。初めて見る悠馬くんのメールアドレス。緊張を抑え込みながらボタンを押した。パッと真っ白なメール画面に変わった。それと同時だった。携帯がブブブッと音をたてて鳴った。頑張って開いたメール画面が一瞬にして消え通話中の画面が液晶に映る。僕は液晶を見て息が詰まった。そして、恐る恐る通話ボタンを押した。
『あ、俺。前橋…悠馬だけど』
 ああ、神さま。
 心臓がどこか遠くに飛んでいってしまいそうです。



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