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 いよいよ夏本番となってきた7月下旬。夏休みを目前とした生徒たちは皆浮き足だったようにざわざわと騒いでいた。しかし残念ながら僕はその中の一人ではない。友達はいないことはないのだが如何せんこの性格だ。良く言えば大人しく、悪く言えば女々しい。ガツガツとした絡みは苦手なわけで。じゃあ、なんで男子校なんかに入ったかって聞かれると家から近いって言うのと頭が他の共学の高校に追い付かなかったからだ。でも別に今はそんなことなんの苦でもない。
「えへ、えへへ…」
 例え一人でも全然寂しくなんかない。だって、僕には君がいる、悠馬くんがいるから。僕は雑踏のなか窓際の席から友達と仲良く談笑している悠馬くんをボーッと見つめていた。
 はぁあぁ、でもホントに悠馬くんは格好いいなあ…いつでも眠そうな流し目が笑うときゅっとなるとことかもっとクールというか一匹狼なイメージだったけど実は友達と笑いあってる方が多くて明るくて優しいところとかギャップ萌え。飛び抜けてイケメンって訳じゃないけど僕はこの世で一番格好いいと思う。
「…?」
「…あっ」
 そんなことを考えながら見つめていると一瞬目があった。気がした。うん、多分気がしただけだろう。でも、それなのに。
「ホームルームはじめっぞー」
 自分でもはっきりとわかるくらい、僕の頬は赤く染まっていた。先生が教室に入ってきた音が遠くの方に聞こえる。周りの雑踏が小さな泡のように僕を包んでいった。
 熱く、熱く体温が上がっていく。
「…はあっ…」
 窓の外からはみーんみーんとセミが絶え間なく鳴いていた。
 まだこの時は知らなかったんだ。
 この夏、僕は眩しいくらい輝く夏に出会うことを。
何気ないことから始まる物語があることを。
 机に置かれた夏休みのしおりを見ながら僕はもう一度大きく息をはいた。
 明日から夏休み。



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