とめこ様からFreeNovel☆
.*MerryChristmas*.

赤と緑のクリスマスカラーに染まる12月。世界のとある場所にあるサンタクロースの町では、子供達へのクリスマスプレゼントの準備に大忙しだ。




「ロッター、この子のプレゼントってどこの地域になってる?」


ひょいと自分の頭上にプレゼントを掲げる志摩。尋ねられたテンプルは、確認作業をする自分の手を止めて、志摩が持つプレゼントについている伝票番号を照会した。


「これなら3E地区だな。あっちのコンテナで橙南と健太が集めている」

「よし、サンキュー」

「あ、ストップ。氷雨から全員集合がかかっているから、二人に会ったら部室に連れて来てくれ」

「解った。3E、3Eっと…」


コンテナの場所を教えてもらった志摩は、地区名を繰り返してコンテナの場所へ走る。
このプレゼント倉庫は、広いの言葉だけでは言い尽くせない程広く、何十人、何百人というサンタクロースがプレゼントの発送準備に追われている。クリスマス直前のこの時期は、サンタクロース協会にとって最も忙しく活気に満ちあふれた時で、志摩は他の地区担当のサンタ達とすれ違いながら、3Eのコンテナに到着した。


「ちわーっス。3E地区のプレゼントがまだひとつ残っていたんで、持ってきましたー」

「ありがとー。ちょうど今、数が足りないって騒いでいたところだったんだ」


志摩からプレゼントを受け取った宇井は、早速プレゼントに貼られた伝票番号を端末で照会すると、山となっているプレゼントボックスのてっぺんに置いた。


「健太、遼が足りなかったプレゼント持ってきてくれたよー」


コンテナの奥に向かって言えば、桐生からの返事が返ってくる。どうやらプレゼントの数を確認していたらしい。
コンテナいっぱいのプレゼントを一から確認していたなんて、御苦労さまと地道な作業にこっそり合掌していると、桐生が眉間に皺を寄せて出てきた。


「やっぱり拾い忘れていたんだな。だからあれほど確認しろって言っただろ」

「ごめんごめん。今度から気をつけるから許して」


ね、と小首を傾げて愛嬌をふりまくも、付き合いの長い桐生が誤魔化される筈もなく、「当たり前だ」とばっさり切り捨てられた。
数も合ったことだし次へ向かおうか、とコンテナを閉めて歩こうとする二人を志摩が引き留める。


「ちょっと待って。氷雨から部室に集合だって。悪いけどこっちから先に来てくれ」

「解った。もうサンタの服に着替えるだけだったからちょうどいい」

「この格好でプレゼント配りはないなー」


作業服の端を摘んで、宇井は笑う。プレゼントを配るのはサンタクロース定番の赤い服だが、準備の間は作業服なのだ。ちなみに、作業着は黄色地に黒いストライプが左右に一本ずつ入った繋ぎだったりする。





「来たぞー」

「はろー」

「俺達で最後か?」


志摩達が部室に入ると、テンプルや後輩サンタの瀬野と志賀も既に集まっていて、中央に置かれた長テーブルに肘を置いたり、頬杖をついたりしていた。


「これで全員集合したな」


手の中でベルを転がしていた響は、ホワイトボードの前に座る冬海に声をかけた。響の言葉に、冬海は頷き、ミーティングが始まる。


「それではこれから配達の組み合わせを発表します。僕達の配達地区は例年通りですが、慣れている地区なだけにミスが発生しやすいと予想されます。皆さん気をつけてください」


冬海の言葉に皆が頷く。
クリスマスプレゼントの配達は、世界中に大勢いるサンタクロースがいくつもの班に別れて、それぞれの地区を担当する。冬海が部長を務める蒼夏班もそのひとつだ。
ホワイトボードに張り出されたのは、蒼夏班が担当する地区の詳細地図で、大きく4つに分けられている。赤、青、黄色、緑で色が付いていて、このエリアを班内で組んだ2人1組のペアが担当するのだ。


「遼とロッタはAエリア」


赤に色づけされたエリアを叩きながら、冬海は言った。


「今年も遼とだな」

「ああ、任せろ相棒」


班内で1番のコンビネーションを持つ志摩とテンプルは、パンと手を叩いて意気込みを示した。


「瀬野君と志賀君はBエリア」

「よろしくなー」

「ああ」


当初は犬猿の仲だった後輩コンビだが、なんだかんだで気が合うのか喧嘩の数も減って、最後に喧嘩をしたのはいつだっけ?と思いださなければいけないほど。
仲良き事は美しきかなと心の中で呟いて、冬海は次のペアを発表した。


「Cエリアは橙南と桐生君でお願いします」


宇井と桐生は何かと組む事が多く、「任せなさーい!」と調子よく胸を叩く宇井に、桐生が疑わしい目を向けるのもいつものことだ。


「それじゃ、Dエリアは残った冬海部長と響先輩ですね…」


そう言って志賀が響に向けた目は、憐れみを帯びていた。実は、蒼夏部長の冬海は極度の方向音痴なのだ。目の前のマンションに配達する予定が、どういうことか隣の地区にいたなんて事はざらで、ペアを組むサンタは、配達の忙しさと冬海のお守で、体力0になって帰ってくるのもよくある話だ。

今年は従兄弟の響がペアを組むみたいだが、やはり不便に思って―とはいえ、自分が代わるのはごめんだが―いると、冬海は「いえ」と首を横に振った。


「僕はここに残って管制役です」

「って事は、新人が来るんスね!」


朗報に瀬野が身を乗り出した。
部内もその知らせに活気づく。
本来なら、この部室には部長の冬海が残って、配達トラブルが起きないよう管制役を務めるのだが、人数の関係でそれができず、例年仕方なく業務と並行して行っていた。
しかし、新しいサンタが来るとなれば冬海は管制役に徹することができるし、なにより冬海が部室に留まっているということは。


「「「(氷雨/迷子の世話をしなくてすむ)」」」


皆の心の声がひとつになった。
思い出す冬海に振りまわされた日々。子供たちへのプレゼントを用意するところから始まった忙しさと疲労に、留めを指すような冬海との配達ペア。頑張って完了した自分達を褒めてやりたくなるほど、冬海の方向音痴は酷いのだ。
皆が感激に震えているのを露とも知らない冬海は、扉に向かって「入ってください」と呼びかけた。
ドアノブが回されてゆっくり扉が開く。


「東城未来っス」

「「「ウェルカームッ!!」」」

「うわっ!!」


待ち望んでいた新人に、志摩とテンプル、瀬野が飛びついた。
不意をつかれた東城は、バランスを崩して倒れそうになるも、幸か不幸か飛びついた三人に支えられて踏みとどまる事ができた。待ち望んでいたとはいえ、随分と手荒い歓迎に眉間を寄せる東城だが、先輩三人はお構いなしに喜ぶ。


「いやー、今年はウチ(蒼夏)に来る人が誰もいないと思っていたけど、こうして来てくれるなんて嬉しいな!」

「ギリギリセーフ!あー、よかった」

「俺、初めての後輩っス!!」

「つー事は、俺のペアって」


わーわー騒がれて東城がもみくちゃにされる中、響が自分と東城を交互に指差して冬海に尋ねた。
その問いに冬海は微笑んで頷く。


「はい。銀竹は東城君と組んでもらいます。先輩として色々教えてください」

「了解」


軽く敬礼のポーズをして、響は嬉しそうに東城を振り返った。






いよいよ配達の時。
上下赤のサンタクロースの正装に着替えて、各ペアは自分達のソリに集まっていた。子供達のプレゼントをたっぷり積んだソリを引くのは当然トナカイで、彼等もまた首に付けられたベルと赤いポンチョでおしゃれをしている。


「ったく、あの人達常識ってものがないんスか」


普通、初対面の相手に抱きつくか?と志摩達のおかげでぐちゃぐちゃになった髪を整える東城に、響はケラケラと笑った。


「それだけお前の事を待っていたんだ。勘弁してやってくれ」

「蒼夏ってそんなに人手不足なんスか?」

「それもだけど、なによりも方向音痴のお守をしなくて済むからかな?あ、耳冷えるからちゃんとガードしておけよ」


向きだしになっていた東城の耳を見て、サンタ帽子でしっかり覆った自分の耳を指して忠告してやった。ただでさえ冬の空気は冷たいのに、ソリで駆け抜ける夜空の空気はもっと冷たい。耳の感覚は失われて、もげるのかと思う程にだ。
東城が自分の真似をして耳を帽子の中に入れたのを確認すると、所定の位置に着こうと手綱を引く。


『皆さん、準備はいいですか?』


インカムから冬海の声が聞こえる。周りを見渡せば、自分達と同じようにサンタの格好をした仲間達がいつでも!と合図を返す。


『ねー、帰ったらクリスマスパーティーしようね!!』


インカムの外からも聞こえた宇井の声。彼女の乗るソリを振り向けば、目が合い、笑顔を向けられた。


『私、クリスマスケーキ作ってきたんだー』

『橙南ナイス!氷雨、フライングして食べるなよ』

『そんなことしませんよ。ただちょっと味見を…』

『『『するな!!』』』


同時に皆が叫んだ。冬海は甘いものに目がないので、一人でワンホール平らげるのもわけない。しつこいくらい釘をさし、ようやく皆が安心すると所定の位置についた。トナカイ達は早く空を駆けたいと、落ち着きなく動き、その度に首元の鈴が音を奏でる。
全員が準備完了、いつでもスタート可能だ。


「ちゃんと掴まってろよ」


響は隣に座った東城を振り向き、レバーを握っているか確認する。


『それでは蒼夏班、出発』


冬海の号令と共に、ソリが空を飛ぶ。





子供達に届けるのはプレゼントと夢
枕元に靴下を吊るそう
そうすれば、サンタは君の下へ必ずやって来る


「Merry Xmas!HOー!HOー!HOー!」




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《感謝御礼from*美砂》
とめこ様のお宅にて配布されていました、クリスマスフリー小説をいただいてきましたー♪^^
テニス部のみんながサンタさんになってるお話ですって何それ可愛い(>▽<`*)
冬海くんの可愛さと響くんの素敵さはもはや美砂の妄想を刺激しまくってやばいです!
美砂もいい子にしてるからプレゼントもってきて響くん!ケーキワンホールプレゼントするから一緒に食べよう冬海くん!(←帰れw
とめこ様Vv素敵なクリスマスプレゼントをありがとうございました(*^▽^*)

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