.*二上様から相互記念*.
今日は何の日?・2

阿部と双子が仲良く喋っていると、誠が小さく「あ」と声を上げました。


「阿部くんならしってる?ばんたんってなに?」
「ばんたん?」
「そう!誠とあたしね、ばんたんがなにかおしえてほしいの。トモ兄は、じゅんびばんたんっていったけど、それじゃないばんたん!」


そう言われて、阿部は困りました。阿部も高木と同じように、万端だと思ったからです。知りたがっている双子が間違って覚えているのだから、無理もないのですが。
間違ったまま、阿部は他に『ばんたん』とつく言葉があったか考えます。そして何か思いついたようです。


「ボンタン飴のことか」


違います。
バンタンと似た言葉を探して行きついたのでしょうが、双子が知りたいのはバレンタインなんてどうして解るでしょう。ボンタンについて説明をする阿部に、双子は揃って「「違う!」」と叫びました。


「ボンタンじゃなくてバンタン!」
「解ったから橙南、耳元で叫ぶなって。バンタンなぁ…」


考える素振りを見せる阿部ですが、内心、面倒な事になったなぁと双子に声をかけたことを後悔していたのです。双子に視線を向けると、期待に目を光らせていて、ますます阿部は面倒なことになったなぁ、と悩むのです。
こんな時、適当にあしらえない性格は面倒事しかよびません。例え相手が幼稚園児でも、ちゃんと向き合うのが阿部なのです。


「悪い、俺じゃちょっと解らないや。宇井か他あたってくれ」
「「えー」」
「そんな顔するなって。ほら、これあげるから」


カバンをごそごそさせて阿部が掴んだのは、白地にピンクのストライプ柄の包みでした。かわいいリボンもついていて、男の阿部が持っているにしては違和感があります。
双子が訝しげに包みを見ていると、阿部は包みの理由を話してくれました。


「ウチの部のマネージャーがレギュラー全員に配ったんだ。お菓子だから食べるだろ?」
「「食べる!」」


勢いよく叫んだ双子に、阿部は苦笑しながら包みを渡しました。
『バンタン』が何か答えられなかった阿部の非は、これで帳消しにしてもらえそうです。包みを渡すと、阿部は帰って行き、双子は手を振って見送りました。

阿部と別れた後、双子は公園にやってきて、コンクリートでできた山の上で包みを開けました。中にあったのはトリュフです。
大きさが微妙に違ったり、形も丸が崩れたりしていましたが、そこが手作り感というもの。双子は早速ひとつずつつまむと口に放り込みました。ココアパウダーが頬についたのも気にせず、トリュフを味わいます。


「おいしいね。誠」
「うん」


もぐもぐと口を動かして、双子はトリュフを味わって、宇井が来るのを待ちました。この公園は道沿いにあるから、待っていれば宇井が通る筈なのです。


「あ、父さんだ」
「こっち、きづくかな?」


宇井の特徴である赤みがかった茶色の髪を見つけると、橙南は立ちあがって大きく手を振りました。誠もこっちだよ、と手を振ります。
その甲斐あって、宇井は双子に気付いて公園にやってきます。


「「おかえり!」」


山から駆け降りた双子は、そのままの勢いで宇井に抱きつきます。両手にくる双子の衝撃、これには流石の宇井も堪えたようで、顔をしかめました。
宇井は、注意してやろうと双子を見ると、口の周りに茶色い粉がついているのに気が付きました。ココアパウダーです。


「お前等、何か食ったのか?」


誠の頬についているココアパウダーを拭いながら尋ねると、誠は頷いてトリュフが入っていた包みを見せました。


「阿部くんからもらった」
「トリュフおいしかったよ」
「阿部から?…ああ、そうか今日はバレンタインだからな」


事なし気に言った宇井に、双子は目を丸くさせるのです。
そして同時に、バレンタインとはこのことだったのか!と知りました。
橙南についていたココアパウダーも拭い終えると、宇井は「帰るぞ」と言って、左手を誠と右手を橙南と繋ぎます。
一列に並んだ3人は、仲良く家へと帰るのです。
その途中、双子がいつも以上に嬉しそうな顔をしているのに、宇井は気づきましたが、きっと阿部から貰ったトリュフがおいしかったのだろうと思いました。

本当は違います。

双子はバレンタインって何?と聞かれても、ちゃんと答えられるから嬉しいのです。試しに聞いてみてください。自信満々に教えてくれますよ。



バレンタインはチョコを食べる日!ってね。


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《感謝御礼from*美砂》
双子ちゃんのバレンタインのお話。とっても可愛いです☆
可愛すぎてしばらくニヤニヤが止まりませんでした(笑)
とめこ様☆本当にありがとうございました(>∀<)



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