.*宝小様から☆コラボレーション*.
第127回(?)高二男子親睦会B


「一月くらい前からかな。知らない番号から電話がかかってくるようになったんだ」

 タイミングが合わなくて、こちらが出る前に切れてしまう電話。最初は気にしていなかったヤスくんだけど、三日も続くとさすがに気になって、かけ直すことにしたらしい。

「僕なら無視しちゃうなぁ」

「俺も初めはそう思ったけど、番号を間違えてかけてきているなら早く教えてあげなきゃ、相手も困るだろう?」

 ヤスくんは優しいなぁと、しみじみ感心しちゃった。

「でも、時にはその優しさが厄介事を招くんだよね」

「ちょっと、慎一、そういうこと言わないの。ヤスくんが可哀想でしょ」

 慎一くんは相手が誰だろうとお構いなしだ。こんな時は広夢くんが慎一くんをたしなめるらしい。

「で、掛け直したら相手はなんだって?」

「それが、電話がつながってもすぐには何も言わなかったんだよ」

 「もしもし」と声をかけても、相手は返事をしない。気味が悪くなって、電話を切ろうとしたその瞬間をはかったように、

「君から電話をもらえるなんて嬉しいよ。俺が誰だかわかる?」

 と相手は言ったらしい。

「俺ってことは男性だよね? 誰だったの、その人?」

「とっさに電話を切っちゃったんだけどね、その後も毎日決まった時間にかかってきて。そのうちメールも来るようになって……何でだろう、俺、あの人に番号もアドレスも教えた覚えないのに、何で知ってるんだろう……」

 ヤスくんは僕の質問には答えず、話を進める。慎一くんも、広夢くんは何も言わずに真剣な表情で話を聞いていた。

「いくら何でもずっと無視し続けるのは失礼かなって思ったんだ。電話に出れないのはともかく、メールくらいは返したほうがいいかなって思ったんだけど」

「いいよ、返さなくて。そんなことしたらあの人また調子に乗るから」

「いや、でもさ、振り向いてもらえなければ余計に燃え上がっちゃうタイプなんじゃないの?」

「どっちにしろ、めんどくさい人であることには変わらないよね」

「慎一、一応先輩なんだから。もっと言い方あるんじゃないの?」

 広夢くんも、慎一くんも、ヤスくんに電話をかけてきた人が誰か知っているみたいだ。しかも、ただ知ってるだけじゃなくて、よーく知ってるみたいな……。

「迷ってはいたんだけど、結局一度も返事をせずにいたら、この前の日曜日、とうとう」

「「「とうとう?」」」

 僕ら三人は固唾をのみ、ヤスくんの言葉を待つ。なぜだか、合格発表の時みたいに、僕の心臓は大きな音をたてていた。

 ヤスくんは疲れたように、肩を落とし、言った。

「バイト先に来たんだ。お客さんとして」

「ひぃっ! ストーカー!?」

「うわぁ、怖っ」

 変な声を上げて身を引く広夢くんと、心底嫌そうな顔をする慎一くん。

「突然後ろから声をかけられて、思わずコップ落として割っちゃったよ。ヤスくんのバイト先ってここだったんだー、とか言ってたけど、どうなんだろう?」

「確信犯に決まってるじゃないか」

「てか、何でバイト先まで知ってるの!? なんか本格的に怖くなってきた!」

「仕事中なのに、すっごい話しかけてきて、何でメール返してくれないの? あの時間は忙しいのかな? とか、座談会するときは呼んでねとか言われて。帰るときは、また連絡するねーだし。正直、参った」

「ご愁傷様」

 広夢くんは律儀に手まで合わせている。

「あの後も、毎日電話とメールは着てるんだ。しかも一日に何度も。けど、益々どう対処したらいいのかわからなくなっちゃって。それで二人に相談しようと思って」

 ヤスくんは僕に目を向けて、「豹雅はアキラさんを知らないけど、意見を聞けたらと思ってつれてきたんだ」と言った。

 どうやら、ヤスくんに、嫌がらせ? ストーカー?をしているのは、アキラさんという男性で、慎一くんと広夢くんのよく知っている人(先輩?)らしいけど、

「あの、話の腰を折って申し訳ないんだけど、そのアキラさんってどんな人なの?」

 慎一くんと広夢くんは眉間にしわを寄せて、ヤスくんは困ったように眉を下げて、顔を見合わせる。

「一言で表すなら変な人だよね?」

「変じゃなくて、変態の間違いでしょ?」

「ちょっと慎一! いくらなんでもそれはー」

「事実じゃないか。高校生につきまとって、ストーカーじみた真似してるんだから」

「そうだけど、まさにその通りなんだけど、万が一にもこのことがアキラさんの耳に入ったりしたら、どうするって」

「俺の耳にはいると何かまずいの?」

「そりゃまずいでしょう!アキラさん、Sっ気強いもん。何されるかわかったもんじゃない……って」

 ぎこちなく広夢くんが首を動かす。視線の先、ヤスくんの隣には見知らぬ男性が、涼しい顔して僕らの話の輪に入っていた。

「ひぇぇぇ! でたぁ!!」

「コラ、広夢。人のことを化け物みたいに言うんじゃありません。気持ちはわからなくもないけど、俺に対して失礼でしょう」

「気持ちはわからなくもないって、絶対、広夢が驚くのわかってて、わざと気配消して現れましたよね?」

「さすがは慎一、鋭いね。でも、お世話になってる部活のOBを変態だのストーカーだの呼ぶのはどうかと思うよ? いくら俺が温厚でも、言っていいことと悪いことがあるでしょう」

「失礼しました。でも全て事実ですから」

「慎一って、本当に面白いよなぁ」

 今の会話のどこに面白さがあったのか、アキラさん(と思われる男性)はクツクツと笑った。


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