.*宝小様から☆コラボレーション*.
あの日の忘れものC


「海生くんも、またハルちゃんと遊びに来てね」

「早く彼氏に昇格できるといいねー」

「いや、だから、ハルちゃんと俺はそういうんじゃないんですってば」

 部活に行く途中だった一舞さんと香澄さんとは、駅前で別れた。

 連絡先と、部活の活動拠点であるライブハウスのチラシを貰った花菱は、来た時の何倍も嬉しそうだった。

「よかったな、再会できて」

「うん。海生のおかげだよ。ありがとね」

「俺は何もしちゃいないよ」

 しいて言うなら、しどろもどろになりながら必死に事情を説明したくらい。

「本当は、少し不安だったんだよね」

 二人が歩いていった方を、じっと見つめ、花菱はぽつりと呟いた。

「不安? あの人たちが花菱のことを覚えてなかったらどうしようってことか?」

「ううん。気持ち悪いって言われちゃったらどうしようって」

 実際、香澄さんには「キモい」って言われたけどな。でもあの時はまだこっちの正体明かしてなかったし。

「だって、4年前にたった一度だけあった人間が、今になって『お世話になりました』なんて挨拶に来て、しかも4年前に貸したハンカチをずっと持ってて、『あなた方を探してたんです!』なんて言ったらさ、女の子の立場からすると、ちょっと怖くない?」

「うーん……」

 俺は男の子だけど、確かにちょっと気になるというか、ハンカチ一枚で大袈裟というか、不気味というか、何で今になってと思うというか。

「一番最初はハンカチを返すついでに、あの可愛い女の子たちにもう一度会って話がしたいな、なんていう下心もあったんだけどね、今はただ純粋にハンカチを返してお礼をしたかっただけなんだ。でも、その気持ちが彼女たちにとっては迷惑なんじゃないかなって気がしなくもなくて」

「そんなことないだろ」

 世の中いろんな人がいるから、一概に違うとは言えないけど、少なくとも彼女たちのことは違うと言える。

「あの人たちは、そんなこと言うような人じゃないよ」

 一度しか会ったことのない俺が言うのも説得力無いけど。

「二人ともハンカチが戻ってきて喜んでくれてたじゃん。たかがハンカチ一枚だけど、彼女たちにとっては大事なものだったんだから、おまえはいい事したよ」

「うん……でも、やっぱり、それは海生がいたからこそ出来たことだよ」

「そんなことないって」

「そんなことあるよ。海生が彼女たちと知り合いじゃなかったら、あのハンカチ返せなかったよ。一舞さんにすごまれた時も、僕、どうしていいかわからなかったし。そもそも、海生がいなかったら二人に会えなかったかもしれない」

 「だからね、」とにっこり笑う花菱。

「海生にはすごく感謝してるんだ。感謝してもしきれないくらいに。本当にありがとう」

 つられて笑みを返す。『感謝してもしきれない』だなんて、改まって礼を言われると、何だか恥ずかしくなる。

「ところでさ、ちょっと気になったんだけどね、」

 花菱の目が、好奇心旺盛な子どものようにきらきら光る。

「ハルちゃんて、誰?」

「え? ああ、俺のイトコの姉ちゃん。もう10年近くあってなかったんだけど、最近また会うようになってな」

「その人って海生の彼女なの?」

「いやだから、ハルちゃんは彼女じゃなくて、イトコの姉ちゃんだよ」

「もしかして、初恋の人とか?」

「……まあ、それは、そうなるかな」

 て、何でそんなにハルちゃんのこと聞きたがるんだよ。

「だって、僕だって初恋の思い出について語ったんだから、海生の話も聞きたい!」

「ええっ? 花菱は自分で好きで話したんだろう? 俺が頼んで話してもらったわけじゃないし」

 「それもそうだねえ」と花菱は、ちょっと残念そうな顔をした。

「……でもなー、聞きたいな―」

 袖をぐいぐいひっぱりながら、期待に満ちた目で見つめるのはやめてくれ。

「俺には花菱みたいな初恋の思い出なんてないよ」

「それって、今まさに初恋の真っ最中だからってこと?」

 とっさに返す言葉が見つからず、一瞬変な間が出来た。

「ねえ、海生、」

「あっ! 花菱、電車もう来るみたいだぞ」

 何かを言い掛けた花菱を無視して、改札へ向かう。

 いいじゃないか、今日は何をやってもうまく行くスペシャルな日だったんだから。

 花菱的には、別に俺の初恋話が聞けなくたって、何も問題はないんだから、あんまり恥ずかしいこと言わせないでくれ。

 赤くなった頬に手を当てながら、頭のなかでは、今度は俺から、ハルちゃんを誘って一舞さんたちに会いに行こうかな、なんて考えていた。


<fin>
 


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《感謝御礼from*美砂》
宝小様にリクエストで書いていただいた小説その@ですぁぁぁぁん!(>ω<*)
海生くん花菱くん久し振り!ヽ(*>∀<*)ノまさかそんな前から知り合いだったなんて♪しかも花菱くんの淡い初恋をウチのあの子が奪ってたなんて!もー!美砂の知らないうちになんとけしからんVv(←はいはいわかったからw)可愛くてニンマリしちゃうお話です♪宝小様ありがとうございました♪♪


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