とめこ様より☆コラボ小説
.*party day's*.



「それでは皆さん、準備はよろしいですか?」


グラスが行き届いているか確認する洋に、それぞれは自分のグラスを見せたり頷いたりして返す。殆どがウズウズしながら待つ中、一部からは焦らしていないでさっさとしろと文句も上がったのだが、まあ、そこは置いといて。
よし、と頷いた洋は高々とグラスを突き上げた。


「かんぱーい!メリークリスマース!」

「「「「メリークリスマース!!」」」」


グラスがぶつかり合う音と共に聞こえる笑い声。誰かが鳴らしたクラッカーテープも飛び交い、賑やかなクリスマスパーティーが幕を開けた。
ここに集まったのは学校が違えば、部活も私生活も全く違う彼らだけど、ひょんなことから知り合い、仲良くなってクリスマスパーティーをすることになったのは自然な流れだ。
元々ノリのいい連中の集まりだったのもあり、あれよあれよと話は進んで、いつの間にか巻き込まれていたのはパーティー会場となったこの家の主の翔。

一舞と香澄から、この家でクリスマスパーティーさせてほしいと言われて了承したはいいものの、集まったのはBabies'- breathの仲間に加えて全く知らない一同。蒼夏高校のテニス部だとか言っていたが、バンド部の一舞達とどこでどう知り合ったのやら。
ともかく。


「(あいつの交友範囲広すぎだろ)」


気苦労から思わず溜息が漏れる。ただでさえ、一舞に好意を抱く輩は多いのに、一舞本人の自覚の無さと人付き合いの広さで、増える一方だ。
もし、テニス部の中にもそんな奴がいれば…。
部屋を見渡して、飾り付けの完成度に感心する冬海と、自慢げに話すテンプルを無言で睨みつけた。


「これをロッタと翔さんが飾り付けたんですか」

「ああ。輪っかも全部作ったんだ」

「すっげー、気合い入りまくりじゃん。翔さん家にこんなでかいツリーがあったんすね」


見上げたツリーは洋の背丈とほぼ同じ。たくさんのボールやベルで飾り付けられたツリーは、見た目も葉の質感もまるで本物そっくりで、一般家庭にあるのと気合いの入り様が違う。よほどこの家には似合わないツリーに意外性を感じていると、翔は「バカを言うな」と言い放った。


「これはそいつらが持ってきたもので、俺ん家のじゃねーよ」

「え?氷雨達の持参?」


冗談だろという意味合いで当の冬海とテンプルを振り返れば、返ってきた「YES」の言葉に、空いた口がふさがらない。繰り返すが、ツリーの大きさは、洋の背丈とほぼ同じ。平均身長より大きな洋と同じ大きさなのだ。なのに、それを持ってきた?


「俺ん家のツリーなんだ」

「へー、じゃあロッタの家から誰かの車で運んできたんだ」

「まさか。文字通り、皆で持って運んできた」

「え?ガチで?」


テンプルの家からここまで担いできた体力にも驚くが、それ以上にツリーを持って町を走る度胸に呆れた。呆れているのを驚いているのだと勝手に勘違いしたテンプルは、得意げに話す。


「ダミーだけどよく似ているだろ?本当は本物のツリーを飾りつけたかったんだけど、日本じゃそうはいかないからな」


まだ諦め切れていないのか、うーんと唸っては何かいい案はないかと思案するテンプルに、冬海は「仕方ないですよ」と苦笑した。


「クリスマスは日本のイベントではありませんし、一般家庭にこんな大きなツリーは邪魔なだけですよ」

「それがつまらなんだよ。アメリカでは、クリスマスの翌朝、役目を終えたツリーが外に出されるのも楽しみだっていうのに」

「「クリスマスの翌日?」」


クリスマスの当日なら解るが、翌日にツリーの出番なんてあっただろうか?冬海と洋が首を傾げていると、翔がずばり正解を言い当てた。


「自分の家のツリーと近所のツリーと大きさを比べるんだろ」

「Right!」(その通り!)


指をパチンと鳴らして、テンプルは満面の笑みを浮かべる。
翌日の楽しみとは、言ってしまえば自己満足で、自宅のツリーがどれだけ立派か近所に自慢しあっているのだ。そういえばこの時期になるとアメリカのイルミネーションが度々ニュースの話題になるから、競い合うのはお国柄というやつなのだろうかと冬海と洋はぼんやりと考える。



「うっめー!!」


志摩の歓喜する声がリビングに響いた。
フライドチキンにポテト、春巻きと箸が止まらない。ひょいひょいと抓んでは消えていく料理の数々に、涼と照は圧倒された。特に同じ調理班だった照は、用意されていた料理の多さを知っているから尚更驚く。人数も多い上、男子高校生が多いからと女子が張り切って作ってくれた超大量料理が志摩一人で消えていく。


「なぁ、照…アイツに限界って言葉はないのか?」

「奇遇だな涼。俺も同じ事を考えていた」


幸せそうに頬張る志摩に涼と照の食欲も食べられたのか、二人は持っていた皿を静かにテーブルへ戻した。
殆ど手つかずのまま戻された皿を横目で見ていた桐生は、「そうなるよな」と、空になった自分の皿に視線を落とす。今では普通に食べられるけど、桐生も志摩と出会った頃はその食欲に圧倒されて中々食べる気になれずに、後になってからあの時食べればよかったと空腹に悩まされたのも懐かしい話。


「志摩、がっつき過ぎだ。もう少し味わって食べろ」

「ん?」


振り返った志摩は、リスが頬袋に餌を詰め込む様に、口いっぱいにものを食べていて、桐生は不快そうに眉を潜めた。モゴモゴと口を動かして、一気に飲みこむと志摩は桐生に反論した。


「当たり前だ!女子の手作り料理だぞ!一舞ちゃんに香澄ちゃん、由紀ちゃんが作ってくれた旨い料理が揃っているっていうのに、たくさん食べられるこのチャンスを逃せるか!!」


何を言うかと思ったら。全くかみ合わない主張に、桐生は頭を抱える。照は面白そうに前のめりになった。


「そうかそうか。でも一舞には翔さんがいるし、由紀には蓮、香澄には俺がいるんだから変な気起こすなよ?」


そこはしっかり忠告する照で、香澄が絡むと容赦ない。前のめりになったのだって、実は志摩から香澄が見えないよう壁になるためだったのだから。
まあ、香澄は男嫌いだし、志摩は単純に女子の手料理に感激しているだけなので、照の心配は全てただの杞憂に終わるのだが。


「大体、ウチの学校は女子が少なすぎるんだよ。学科にしろ、制服にしろ女子受け悪すぎ。紺のブレザーって、どれだけ地味なんだよ」


そう言いながら今度はケーキに手が伸びる。メインのクリスマスケーキは、冬海が大量のクリームを盛り付けたおかげでクリームの塊状態でも志摩にかかれば一口。ぺろりと平らげた頃を見計らって、涼も会話に加わる。


「でもそれって、逆に言えばカスタムし甲斐あるってことじゃね?」


地味な制服でも、自分達の着こなし次第でどうにでもなる。そう言った涼に、志摩はダメだと手を振った。


「あんな地味なんじゃ無理無理。お前等ん学校はいいよな。元からかっこいいし、カスタムすりゃもっとかっこよくなるし」


残念そうに言って、志摩はジンジャークッキーを口に放り込む。
涼達の制服は元々デザイン性の高いものだが、更に個性を出そうとカスタムする生徒も多く、彼の場合は殆ど私服化している。同じバンド部には、原型を留めていない程カスタムしている部員もいて、おしゃれが大好きな女子には魅惑的な制服であり学校だ。
クッキーを飲みこんだ志摩は続ける。


「おまけにウチは風紀委員長様が校則守れって煩いし。ねー、桐生。部活仲間なんだから、君から大目にみてくれるよう言ってもらえない?」


わざとらしいオネエ言葉で交渉すれば、桐生の機嫌は一層悪くなって、志摩のお願いは敢え無く一蹴された。


「バカ言うな。言っておくが、そもそも委員長から頭髪違反常習犯と遅刻常習犯のお前達をフォローするのに精一杯なんだぞ」


ぐいっと掴んだのは、志摩の後ろ髪。襟足を伸ばした志摩の髪は尻尾みたいだと一部女子に好評且つ、本人も気に入っているポイント。それを切れと?冗談じゃないと志摩は桐生の手から逃げた。


「これはまだ切らねーし、頭髪違反ならアイツ等だってそうだろ?」


志摩が言うのは、宇井と響。宇井はオレンジ色の髪色だし、響は背中まで伸びた髪を銀色に染めている。まず注意するならあっちの方が先だと口をへの字に曲げる志摩に、桐生は一言。


「信頼の差だ」


と答えた。
ちょっと待て。それの方が問題じゃね?


「銀竹と橙南のどこに信頼があるんだよ!?」


ありえない!と豪語する志摩が響を振り返れば。



「……」

「銀竹君、大丈夫?」

「クリームの砂糖は量もあるからかなり抑えたんだけど、スポンジとクッキーの匂いを忘れてたよ。ごめんね銀竹」


一舞に心配され、宇井に謝られる響は、甘い匂いにダウンしていた。甘いものが極端に苦手な彼にとって、生クリームがたっぷりすぎるケーキとバニラエッセンスの香り漂うクッキーは天敵らしい。
甘いものが苦手といえば翔もそうなのだが、響の場合はそれ以上かと蓮は呆れに似た溜息をつく。


「銀竹さん大丈夫でしょうか…」


心配そうに眉を寄せる由紀。自分達が作った料理でダウンされれば、誰だって心配になるが、彼女は人以上に心配する傾向にある。気合いで食べきると言っていた割には半分でギブアップするなんて、案外、響にも傍迷惑な一面があるんだなと蓮は、由紀の頭に手を乗せた。


「心配したところでどうにもならない。放っておけ」

「でも…」


まだ気にかけている由紀と響の目が合った。心配してくれる彼女の顔を見た響は、申し訳なさそうに笑うと宇井に話かけた。


「あー、橙南?頑張ってくれた女子に俺達からささやかなプレゼントがあるんだ」

「え、本当?どこにあるの?」

「蓮が持ってる。蓮」


渡してくれる?と言外に含めば、蓮は仕方ないという風にプレゼントを出した。買い出し組の涼、蓮、響が選んだプレゼントは果たして彼女達に喜んでもらえるのだろうか。


「蓮ちゃん、開けてもいい?」


一舞の口調は我慢しきれないといったもので、蓮が一言「当たり前だ」と言えば4人は早速袋を開けた。4つ共、同じ袋、同じ大きさだから中身も一緒だろう。ワクワクとドキドキで袋を傾けて、中のプレゼントを掌に滑らせた。


「わっ、かわいい!」


歓喜の声をあげる香澄。
プレゼントに選ばれたのはストラップで、先端についた花が一舞は赤、香澄は緑、由紀は白、宇井はオレンジとそれぞれをイメージした色になっている。お揃いのストラップを見せあい、嬉しそうにはしゃぐ。


「あたし達お揃いだね。香澄は何色?」

「アタシは緑。由紀は?」

「わたしは白です。これって皆さんが選んでくれたんですか?」


とても嬉しそうに由紀が言えば、響は笑って蓮を指した。


「最初に見つけたのは蓮。由紀ちゃんが持っているのをじーっと見ていたんだ」

「余計なことを言うな」


実力行使、と蓮が響の口にクリームをねじ込んでやれば、思惑通り響はがくりと倒れてそれ以上言う気力を失った。由紀は再びオロオロと心配し始めて、一舞と香澄そして宇井は蓮の誤魔化し方にクスクスと笑いあう。


賑やかなクリスマスパーティーはまだまだ続く。
学校が違えば、部活も、私生活も全く違う彼等だけれど、ひょんなきっかけで出会い、パーティーを開く程仲良くなった。
今日はその交流を更に深めて、より一層楽しく盛り上がろうじゃないか。


「よーっし、それじゃカラオケ大会でも始めますか?」

「はいはーい!俺、1番!」

「その次は俺達な!」

「アタシも歌いたーい」

「香澄は歌うなよー」

「煩い!」

「氷雨も、銀竹ダウンしているんだからソロで歌うの禁止ね」


「えー、それ酷くないですか?」







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《感謝御礼from*美砂》
とめこ様より♪またまたコラボ小説頂いてしまいました(*>∀<*)
少し前に描かせていただいたパーティーのコラボ絵の、その後を書いてくださったんですよーVvもーあんなに大人数を1ページに収めるのは大変だったと思います。本当にありがとうございました(*;∀;*)
そうかあのツリーの出所は彼の家だったのですね(*^p^*)っていうかテニス部の皆さんの体力というか精神力が凄いです(笑
しかも頬袋(*>∀<*)ツボすぎて可愛すぎて悶絶しました(笑
そしてプレゼントのくだりも可愛いエピソードで、何気に蓮由贔屓なのが嬉しい限りですVv

とめこ様(*^^*)
お忙しい中このように可愛い可愛いクリスマスパーティーの模様をありがとうございましたVv
大切に大切にしますね♪


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