.*宝小様から☆ヤス生誕記念&SELFCONTROL完結記念*.
10月3日はSpecialDay 【4】


 僕が初めて慎一くん、広夢くん、そしてアキラさんに出会った第127回(?)高二男子親睦会以来、僕はアキラさんとちょくちょく連絡を取り合うようになった。

 俗に言うメル友というやつだ。

 お互いに一日の出来事を報告したり、宿題の答えを教えて貰ったり、「バナナはおやつなのかお弁当のデザートなのか」なんてくだらないことを真剣に議論しあったり。

 時々、部活中の慎一くんや広夢くんの写メなんかも送ってくれて(隠し撮りっぽかったけど)、アキラさんとのやりとりはとても面白かった。

 そして昨日、アキラさんと久しぶりに電話で話をした。話題はヤスくんの誕生日について。

「豹雅くんたちは何かするの?」

「慎一くん広夢くんと3人で、ヤスくんのアルバイト先に遊びに行って、夜はみんなで食事でもしようかなーって思ってます」

「へー、いいね」

「よかったら、アキラさんもどうですか?」

 深い意味はなかった。僕がアキラさんが来てくれたら楽しいんじゃないかなーって思ったから、誘っただけ。それに話の流れ的に、ここでアキラさんを誘わないのもおかしいから。

「いや、俺はいいよ。みんなで楽しんできな」

「明日はお忙しいんですか?」

「そういうわけじゃないんだけど」

 歯切れが悪い。アキラさんにしては珍しいことだった。

「何か気になることでもあるんですか?」

「ん、まあね」

 躊躇うような寸の間の後、自嘲気味にアキラさんは言った。

「俺が行ったら迷惑だろうから」

「迷惑?」

 何でアキラさんがヤスくんの誕生日を祝いに来ると迷惑になるんだろう? 誰が迷惑するんだろう?

 僕にはアキラさんの言葉が理解できなかった。

「豹雅くんは、俺らが初めてあった親睦会のことを覚えてないかな?」

「覚えてますよ……あ、」

 アキラさんがヤスくんにストーカー一歩手前みたいにしつこく連絡をして、ヤスくんが困っちゃった件。

「もしかして、あのことをアキラさんはまだ気にしていらっしゃるんですか?」

「うん、実は」

「大丈夫ですよ。ヤスくんは、もう全然気にしてませんから」

「そうかな? ヤスくん、あの時かなり参ってたらしいじゃない? 本当に俺には悪気はなかったんだけど……もしかしたらヤスくんは俺のこと嫌いになったんじゃないかな?」

「そんなことないですよ!」

 僕は瞬時に力一杯否定した。

「ヤスくんがアキラさんを嫌うなんて絶対にないです。ヤスくんは本当に優しくていい奴なんです。彼がそんな簡単に人を嫌いになるなんてことはありません。いくらアキラさんの行為が迷惑極まりない、いきすぎちゃったものでも、あの時ちゃーんと和解したんですから、ヤスくんも気持ちを切り替えているはずです」

 僕の勢いに圧倒されたのか、アキラさんはしばし無言だった。そして、

「……てっきり俺に対してフォローいれてくれるのかと思ったら、ヤスくんに対してのフォローだったね」

「あ……すみません! でもっ、アキラさんもカッコよくて優しくて大人で面白いとこもあって、いい人ですよ!」

「そんな必死になんなくてもいいよ」

 アキラさんは電話の向こうで、おかしそうに笑っていた。

「でも、やっぱり俺が行ったら迷惑だろうから」

「そんなことないですって。ヤスくんもアキラさんが誕生日をお祝いに来てくれたら、喜びますよ。あの親睦会以来、ヤスくんとは連絡取り合ってないんでしょう?」

「そういう約束だからね」

「でしたら尚更ですよ。まさかアキラさんが誕生日を祝いに来てくれるだろうなんて、みんな考えもしないはずですから――そうだ、アキラさん、少し時間をずらしてサプライズゲストとして登場してください。みんなびっくりしますよ!」

「びっくりした後に、あからさまに迷惑そうな顔されたらどうしようね?」

「大丈夫ですって! 弱気な発言はアキラさんらしくないですよ!」

「豹雅くん、」

 アキラさんの声のトーンが落ちる。真面目な話をするときアキラさんの声。僕は思わずケータイ片手に正座をする。

「君の気持ちは本当にありがたいよ。出来れば俺ももう一度ヤスくんに会って、ちゃんと話がしたいし、誕生日をお祝いしたい。でもね、あの時のことで俺も少なからずショックを受けていてね。正直ヤスくんに会うのが怖いという気もしてて。ヤスくんは優しい子だから、あからさまな嫌な顔はしないだろうけどさ。彼を困らせたくないんだ」

 初めて聞くアキラさんの弱音。

 一見何でもないように振る舞っていたけど、ヤスくんに嫌な思いをさせてしまったことに対しての罪の意識と、自分の行動がヤスくんにとっては迷惑でしかなかったという事実に、本当はアキラさんも深く傷ついた心を抱えていたんだ。

「でも、僕はアキラさんとヤスくんには仲良くしてほしいんです」

僕の勝手な言い分だけども。

「アキラさんもヤスくんも、僕にとって大切な友人なんです。だからアキラさんには僕にしてるみたいに気兼ねなく、ヤスくんに電話したりメールしたり出来るような仲になってもらいたいです。それにあれはもう過去の話です。過ぎたことをいつまでも気にしていたら人生楽しくないですよ」

「それはそうだね」

 「人生ていうのは大袈裟な気もするけど」。アキラさんは電話の向こうで笑っていた。

「明日学校が終わったらメールしますから、是非いらしてください。待ってますから」

 アキラさんは「考えておくよ」とだけ言っていたけど、僕はその言葉を勝手に了解の意だと解釈した。

 ヤスくんの誕生日をみんなでお祝いして、今度こそしっかりとヤスくんとアキラさんに和解してもらうんだ。

 そのためにも僕が頑張らなくちゃ。


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