.*宝小様から☆ヤス生誕記念&SELFCONTROL完結記念*.
10月3日はSpecialDay 【3】


「そういや、今日ってアキラさん来るのかな?」

「「アキラさんっ!?」」

 ヤスくんと僕、同時にすっとんきょうな声をあげてしまった。お互いになんとなく顔を見合わせる。

「何でアキラさんが来ると思うの?」

 ヤスくんは困ったように微笑みながら、広夢くんに訊ねる。

「だってアキラさんかなりヤスくんのこと気に入ってたしさあ。ケー番もメアドもバイト先まで調べてたくらいだから、誕生日を知らないわけないじゃん? だったらやっぱりお祝いに来るんじゃないかなーって」

「もし、仮にアキラさんが今日が俺の誕生日だということを知っていたとしても、今日、この時間に俺たちがここに集まっていることまでは、さすがにわからないんじゃないかな?」

「甘いな、ヤスくん。前回の高二男子親睦会を忘れたの? 誰も知らせていなかったのに、アキラさんは涼しい顔して俺たちの話に混ざっていたじゃないか。もしかすると、今も近くで俺らの話を盗み聞きしながら、出てくるタイミングを計っているかも」

 慎一くんの言葉にヤスくんと広夢くんが、店内をキョロキョロ見回し始めた。

 ヤスくんは眉を寄せ、困惑したような顔をしている。

「――あのさ、みんな、アキラさんが来るのは嫌なの?」

 僕の質問に3人は顔を見合わせる。

 ヤスくんは、

「嫌というわけじゃないけど、ちょっと苦手だから」

 広夢くんは、

「うーん……俺は別に」

 慎一くんは、

「嫌だね。アキラさんがいると何かと面倒が増えるから」

 と三者三様の言葉を返した。

 総括すると、やっぱりアキラさんはいない方が平和的でいいってことか……まいったなあ。

「アキラさん、ヤスくんの誕生日だからはりきってでっかい花束なんて持ってきたりしてね」

 広夢くんがにやけながら言う。慎一くんもおかしそうに笑って、

「100本のバラの花束とか?」

「まさか。相手が可愛い女の子ならともかく、男の誕生日にバラの花束はないよ」

 「そう思わない?」と言うようにヤスくんは僕に微笑みかける。

「そうだね、いくらアキラさんでもバラの花束はないんじゃないかなあ?」

 バラ、は。

「失礼します」

 ウエートレス姿の女の子が僕らの席にやって来た。何故か、白い椅子を一脚持っている。

 新たな女の子の出現に嬉しそうに目を輝かせる広夢くんに向かって、

「お連れ様がいらっしゃいました」

 と告げる。

「お連れ様?」

 ヤスくんが慎一くんを見て訊ねる。

「祐弥くんも呼んだの?」

「いや、声かけてない。広夢、メグに何か言った?」

「なーんも」

「司……なわけないよな、さっき誕生日おめでとうってメール着てたし」

 「はて? 誰だろう?」と首を傾げる3人。いっちゃんは手付かずだった広夢くんのケーキを勝手につつきながら、ちらりと僕に視線を投げ掛けてきた。

 でも僕は、いっちゃんの視線に気づかない振りをして、気が抜けて味も薄くなったメロンソーダを口に含んだ。

 人生なるようになる。

「どうぞ、こちらのお席です」

 女の子が一人の男性を連れて戻ってきた。

 首を傾げていた3人は女の子の後ろに立つ男性に目をやり、そして瞬時に固まった。

「やあ、ヤスくん。久しぶりだね。豹雅くんに聞いてお祝いに来たよ。お誕生日おめでとう」

 10月の誕生花・コスモスの花束を抱えたアキラさんが麗しい微笑みを浮かべ、言った。

 アキラさん登場に驚いていた慎一くんの非難するような目がいち早く僕に向けられる。

 それでも素知らぬふりしてメロンソーダをすすっていたけど、

「豹雅くん、俺らに何か言うことあるんじゃないの?」

 と、つめたーい声で問われ、僕は観念するしかなかった。


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